ナタリー PowerPush - LiSA”

感動も、悔しさも、発見もすべてを飲み込む武道館ライブ

私、もうなんにも怖いもんないわ

 LiSA

──ただ歌っている本人が不調のまま、不安を抱えていたままならたぶん「いいライブだ」って思えていないと思うんです。お客さんも一緒に戦いはしなかった気がしますし。実際、今回特典映像になっているLiSAさんの好演が光る(笑)アニメがスクリーンに流れて、「say my nameの片想い」につながったライブ中盤戦以降って、声もテンションを確実に持ち直しましたよね。そのリカバリーぶりも「いいライブ」になった大きな要因だと思っていて。

それもやっぱり“みんな”のおかげなんです。アニメが流れている間、一旦(舞台)袖に引っ込んだんですけど、実は袖に向かうのもすごく怖くて。サポートメンバーもそうだし、音響や照明のスタッフさんもそうだし、メイクさんも、衣装さんもそうなんですけど、みんな、あの日のステージを作り上げるために本当に何度も何度も細かなすり合わせを繰り返して、本当に完璧なものを作り上げてくれていたので。だから「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」って言いながら袖に引っ込んだんですけど、あるスタッフさんは「顔拭くよね?」ってタオルをいっぱい持っていて、ボイトレの先生は「どれかノドにいいやつがあるかも」って5種類くらい飲み物を持って待っていてくれて(笑)。あと最初に謝ろうと思って近づいていったマネージャーが「ごめんなさいじゃないよ。とりあえず今日がんばろう! 最後までやりきろう!」って言ってくれて「あれっ!? みんな怒ってない」ってビックリしたり(笑)。

──あはははは(笑)。

誰も私を突き放すようなことはしなかった。あの時間、ステージの目の前にいる“みんな”だけじゃなくて、うしろの“みんな”も一緒に戦おうとしてくれてたんだって感じたんですよね。それでいい意味で開き直れたというか。「あっ、私もうなんにも怖いもんないわ、今日」「今できることを精一杯できることをやろう」って思えて。実際にそれができたのが中盤から後半だったんだと思います。

──「開き直ったら怖いもんはないと思えた」「だから歌えた」だと若干オカルトめいて聞こえちゃう気もするんですけど……。

でもやっぱり気持ちだと思うんですよね。具体的な何かがあって不安を消し去れたり、体調が急によくなったりしたわけではないですし。前半って正直な話、1曲歌うたびに申し訳ない気持ちになっていたし「はあ……次どうしよう」みたいな感じ。ずっと不安しかなかったんだけど、中盤以降は「不安なままでもいいし、完璧じゃなくてもいいから、とにかく1曲1曲精一杯歌って楽しもう」って思えた。言ってみればそれだけですから。

歌で届ける「ありがとう」の気持ち

──図らずもなのかもしれないけど、前日までに完璧にプランニングしておいて、当日はみんなと一緒にその時間を楽しんでしまう、今のLiSAさんにとっての理想のデートを実践できた、と。

 LiSA

そうですね。前日までにちゃんと準備をしておけば、何も怖くはないんだな、って気付けたライブだったんだと思ってます。セットリストを組むときから、私はみんなにどういう気持ちをどういうふうに伝えたいのか? どうすればみんなが楽しんでくれるのか?ってしっかり考えて準備を進めておけば大丈夫なんだって。私の周りには私が信頼していて、しかも私のことを信頼してくれているみんながいるんだから。

──どういう気持ちをどのように伝えようと思ってました?

みんなと一緒にたどり着いた武道館なので「ありがとう」っていう気持ちを届けられたらっていうことですね。あと「でも言葉で伝えるのは違うな」「やっぱり歌で届けよう」っていうことを考えてました。

──実際、MC少なかったですよね。

はい。MCを抑えたし、ガルデモの「一番の宝物」を歌ったあと、同じガルデモの「Little Braver」のPVを流しながら歌うっていう演出もそうで。私がLiSAではなくてユイだった頃からずっと一緒に歩いてきてくれたみんなへの感謝のつもりだったし、そのあとに「I'm a Rock star」をつなげたのも、やっぱり「ありがとう」を届けるためのもので。「ガルデモがあったからこそ私は今、武道館のステージに立てる“Rock star"になれたんだ」っていう意味があったんです。そうやって「みんなのおかげで(ライブのサブタイトル)『今日もいい日だっ』って言えるんだよ」「本当にありがとう」っていう気持ちを音で伝えられるセットリストとステージ演出を作り上げたら、最後の最後「best day, best way」が終わる瞬間までみんな、デートを楽しんでくれた。あの曲でみんなが「イエーイ!」って言ってくれていた、あの景色がいまだに忘れられないんですよ。「この人たちは私のことをすごく愛してくれるんだな」「今は本来の自分じゃないかもしれないけど、それでも精一杯やればちゃんと気持ちは受け取ってくれるんだな」ってちゃんと感じられましたから。

──LiSAさんはなんでその“みんな”、つまり武道館に集まった8500人からのファンや、バンドメンバー、スタッフ陣を巻き込めるんだと思います?

なんでなんだろう。自分からみんなに好きだって言っちゃうからですかね(笑)。

──それこそMay'nさんにそうしたように(笑)。

そうそうそうそう(笑)。ガルデモのユイとして活動を始めた頃の私は、アニメに関する知識はほとんどなくて。「絶対にファンの人たちに勝てないよな」って思ってたんです。だから正直みんなの前に出て行くのは怖かったんですけど、「Angel Beats!」のことが好きな気持ちや、作品そのものへの感謝や、アニメのスタッフさんたちの一生懸命な姿に対する感謝の気持ちは間違いなく持っていて。だからアニメの世界を知ってからの日にちは浅いかもしれないけど、ファンのみんなと同じ感覚は持っている。共感できるはずって信じてたんです。

──LiSAさんが「Angel Beats!」に対するラブやリスペクトを表明したから、アニメファンもLiSAさんを迎え入れた?

そうなんだと思います。で、それはこのあいだの氣志團先輩とのライブ(参照:氣志團vsLiSA!極東RRH第弐章開幕戦は“パンイチ”で大団円)のときも実は同じなんです。

ライブBlu-ray Disc / DVD「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~ in 日本武道館」/ 2014年6月18日発売 / アニプレックス
「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~ in 日本武道館」
Blu-ray Disc / 6264円 / ANSX-10001
DVD / 5184円 / ANSB-10001
収録内容
  1. コズミックジェットコースター
  2. traumerei
  3. Canvas boy × Palette girl
  4. EGOiSTiC SHOOTER
  5. DOCTOR
  6. oath sign
  7. いつかの手紙
  8. 一番の宝物
  9. Little Braver
  10. I'm a Rock star
  11. say my nameの片想い
  12. 妄想コントローラー
  13. ROCK-mode
  14. crossing field
  15. 逆光オーケストラ
  16. WiLD CANDY
  17. ジェットロケット
  18. シロイトイキ
  19. Believe in myself
  20. best day, best way
  21. モモコと魔法のラーメン
LiSA(リサ)

6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニング曲「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。そして6月、武道館公演の模様を収めたライブBlu-ray / DVD「LiVE is Smile Always~今日もいい日だっ~in日本武道館」を発表した。