イ・ヨンジはなぜ人々を惹き付けるのか|12月に来日!韓国の若きカリスマ女性ラッパーの魅力

イ・ヨンジの来日公演「2024 LEE YOUNGJI WORLD TOUR ALL OR NOTHING JAPAN TOUR」が12月16日に大阪・Zepp Osaka Bayside、19日に東京・豊洲PITにて行われる。

イ・ヨンジは2002年生まれの韓国出身ヒップホップアーティスト。2019年に配信された、韓国の高校生によるラップバトル番組「高等ラッパー3」初の女性優勝者として脚光を浴びた。昨今はSEVENTEENメンバーやEXOのD.O.とのコラボ曲をリリースし、第一線で活躍するトップアイドルたちとお酒を飲み交わしながらトークする人気YouTubeバラエティ「つまらないものですが」でMCを務めるなど、K-POPファンの間でも広く名の知れた存在だ。音楽ナタリーでは、約1年ぶり2度目となる来日公演に向けて、イ・ヨンジの特集を展開。歌って踊れるラッパーであり、バラエティコンテンツでは巧みなトークで場を盛り上げつつMCもこなす、多才でポテンシャルに満ちあふれる彼女の音楽的な魅力、そして人間的な魅力に迫る。

なお今回の来日公演の東京会場では、KDDIがオルタナティブな韓国音楽シーンをサポートするポータルサイト「K-MUSIC」と連携し、Pontaパス(旧auスマートパスプレミアム)会員は1ドリンクサービスの特典を受けることができる。

文 / 岸野恵加

“土の中の真珠”と言わしめた若き才能

イ・ヨンジについて、あなたはどんなイメージを持っているだろうか。驚異的な実力を持つラッパー、ユニークな輝きを放つバラエティタレント、長身を誇るファッショニスタ、MZ世代のアイコン……1つに絞って分類するのが難しいくらい、それらすべてにおいて類まれな魅力を持っているのが、イ・ヨンジという女性だ。

彼女は2019年、韓国の高校生によるラップバトル番組「高等ラッパー3」で、彗星のように姿を現した。満16歳、ボブヘアに茶色のブレザーを羽織ったヨンジは、マイクを握るとその実力で審査員をうならせ、ベテランラッパーのThe Quiettに「素晴らしい才能。“土の中の真珠”という表現が浮かびました」と言わしめる。そしてラップを始めてわずか半年ほどというキャリアながら、見事優勝。同番組で女性が優勝を果たしたのはヨンジが初めてであり、番組史上最年少の優勝者でもあった。

まさか優勝するとは思わず、番組終了後は「実力不足だ」という批判にさらされて苦しんだというヨンジ。しかし彼女は塞ぎ込むことなくラップのスキルを磨き続け、2020年にはヒョヨン(少女時代)やイェウン(CLC)らも参加したショーバトル番組「GOOD GIRL:誰が放送局を襲撃したか」に出演。クルー探索戦(番組の初回ステージ)で1位になるなどの活躍を見せた。

ヨンジは人気者となってからも飽くなき挑戦を続け、2022年には人気ヒップホップサバイバル番組「SHOW ME THE MONEY 11」に参加。女性として番組初の優勝を飾る。第8話で披露した「NOT SORRY (feat. pH-1)」は韓国の主要音楽配信サービス「Melon」年間チャートで59位にランクインし、今や彼女の代表曲の1つでありライブでの定番曲となっている。ヨンジが緑のニットを着て堂々としたステージングを見せ、観客とコール&レスポンスを交わすYouTubeのパフォーマンス動画は、1000万再生超の反響を集めている。

EXO、SEVENTEEN、IVEメンバーと…コラボで放つ存在感

独特の余韻を残すハスキーな声と滑舌のよさ、圧倒的な声量はヨンジのラッパーとしての唯一無二の個性であり強みだ。しかし彼女が発表してきた楽曲は、意外にもチルなムードのものが多い。ヨンジが大ファンであるジェイ・パークをフィーチャリングゲストに迎えた「Day & Night」も、心地よいミディアムスローナンバーであった。

2024年にリリースした待望の初EP「16 Fantasy」にも、ヒップホップ以上にR&Bのムードを濃く感じる。収録されている6曲では、それぞれラップのみならず、ヨンジの伸びやかなボーカルもたっぷりと堪能することができる(軽快なビートのポップソング「TELL ME!」は特に新鮮)。突如注目の存在となるも「デビュー後しばらくは、どのように楽曲制作を行えばいいのかわからなかった」と語っていた彼女が5年の時を経て完成させた作品だけに、ヨンジの中には今こうした音楽が渦巻いているのかと、再生するたびに興味深く感じられる。

「16 Fantasy」のリード曲「Small Girl」では、フィーチャリングゲストにEXOのD.O.(ディオ / ド・ギョンス)を迎えている。この曲は音楽番組で6冠を獲得するヒットを記録。自らの恋愛体験をもとに制作された「Small Girl」では、175cmの長身を持つヨンジが、過去の恋愛で「私が小柄な女の子だったら無条件に愛されるのかなって幻想を抱いているの」と、不安な思いを抱いた経験について歌っている。普段は堂々とした印象の強いヨンジだが、乙女心に満ちた歌詞ににじむ素の感情に胸を打たれる。

さまざまなアーティストとコラボし、新鮮な魅力を放ち続けているヨンジ。2021年には(G)I-DLEソヨンのソロ曲「Is this bad b****** number?」に、BIBIとともに参加。2023年1月には、SEVENTEENのSEUNGKWAN、DK、HOSHIによるユニット・BSS(ブソクスン)の楽曲「Fighting」でフィーチャーされて大きな話題を呼ぶ。エネルギッシュなBSSのパフォーマンスに加わったヨンジのクールなラップが、絶妙なスパイスとなっていた。

IVEのユジンとは、バラエティ番組「ピョンピョン地球娯楽室」で共演して以来の親友だ。2023年末に行われた韓国の大型音楽祭「2023 MBC歌謡大祭典」では純白の衣装でそろえてステージに上がり、2人でビヨンセの「End Of Time」、レディー・ガガの「Born This Way」を華やかにパフォーマンスした。

たった1人で、マイク1本で

ヨンジのライブの魅力は、観客を飲み込むエネルギー。野外ライブでは特にそのパワーが最大限に発揮されるように思う。3年連続で出演している「HIPHOPPLAYA FESTIVAL」でのパフォーマンスは、たった1人で、マイク1本のみを手に、多くの観衆を沸かせる姿が最高にクールだ。

また2023年に韓国で話題を呼んだダンスサバイバル番組「STREET WOMAN FIGHTER2」のミッション曲「Smoke (Prod.Dynamicduo, Padi)」は、TikTokでダンスチャレンジが大流行。音楽授賞式「MMA2023」でヨンジは、1人でステージを縦横無尽に練り歩き、IVEやNCT DREAMら出演者を巻き込みながら「Fighting」と「Smoke (Prod.Dynamicduo, Padi)」を披露して会場を大いに盛り上げた。この日の映像を観てわかる通り、専門ではないはずのダンスの実力が高いのも、ヨンジの底知れぬ可能性を感じるポイントである。

ほかにもYouTubeには枚挙にいとまがないほど数多くのパフォーマンス映像が公開されているので、誰もが目を離せなくなるような、ヨンジのステージでの圧倒的なオーラをぜひ感じ取ってほしい。

真摯なリスペクトとエンタテイナーとしての矜持

イ・ヨンジの存在を、バラエティコンテンツを通して知った人も多いだろう。数々の番組で存在感を示している彼女だが、特に高い人気を誇るのは、YouTubeチャンネル「차린건 쥐뿔도 없지만(つまらないものですが)」だ。これはヨンジがゲストとお酒を飲みながらトークを繰り広げるバラエティ番組。チャンネル登録者数は400万人超えの大人気コンテンツである。筆者もこの番組をきっかけにヨンジの魅力にどっぷり惚れ込み、すっかりファンになってしまった。ヨンジの人柄を知りたい人は、まずはこのチャンネルにアクセスすることをオススメしたい。

K-POPアーティストを中心に、俳優や海外アーティストまで、高い知名度を誇る面々が出演してきた「つまらないものですが」。BTSのJIN、SEVENTEENのHOSHI、JOSHUA&DK、TWICEのナヨン、チェヨン、ジヒョ、BLACKPINKのジス、リサ、TOMORROW X TOGETHERのSOOBIN、YEONJUN、TAEHYUN、aespaのカリナ、LE SSERAFIMのKIM CHAEWON……一部の名前を挙げただけでも、ゲストの豪華さが伝わるだろう。2024年8月公開のEP.25からは一軒家の縁側に場を移したが、それまではなんとヨンジの自宅で収録が行われていた。

2002年生まれのヨンジにとっての大先輩がゲストとして訪れることも多いが、ヨンジは物怖じすることなく体当たりでトークに挑み、変顔やユニークな動きを交えて爆笑の渦を巻き起こしていく。しかしヨンジのゲストへの態度には、深いリスペクトとエンタテイナーとしての矜持が終始漂う。かつてbubble(ファンコミュニケーションアプリ)に登録するほどのファンだったというNCT 127のジェヒョンが出演した際も、のんびりとした彼に「もっと大きな声を出して!」と叫んで笑いを起こすなど、ファンとしてではなくエンタテイナーに徹して接していた。また、お酒の力も借りてゲストが抱えてきた葛藤や苦しみなど深い話をしっかりと聞き出すのもこの番組の魅力。SEVENTEENのHOSHIは事務所への思いがあふれ出し、思わず涙を流していた。ヨンジは相手の心を開かせる天才なのである。

そのトークスキルは、MCとしても発揮されている。今年9月、ヨンジは韓国で放送されているKBSの歴史ある音楽ショー「THE SEASONS」のMCに最年少で抜擢された。この番組のMCは、これまでジェイ・パーク、イ・ヒョリ、ZICOなどのアーティストが担当してきたことでも知られる。こちらではハイテンションな「つまらないものですが」とはまったく異なり、ヨンジが観客を前に落ち着いたトーンでゲストの魅力を引き出している。毎回登場するゲストとヨンジのコラボステージも見応えたっぷりだ。

ヨンジは社会問題への関心が高く、2021年には自身が制作したスマホケースの販売収益の全額、2億4000万ウォンを大韓赤十字社へ寄付。2022年には水害への支援、2023年には欠食児童の食事支援と、定期的に寄付を続けている。「SHOW ME THE MONEY 11」の賞金1億ウォンも、チームメイトへのプレゼント代を除いた額を全額寄付にあてると公表していた。将来的には慈善団体を設立したいとも語っており、彼女の慈愛に満ちた姿勢もリスペクトが尽きない部分だ。

来日公演で見せた日本文化への愛情

日本への愛情が深いヨンジ(トーク中のふとした瞬間のリアクションで日本語が飛び出すのも、日本人としては密かにうれしい)。2024年1月に開催した来日公演「LEE YOUNGJI 1st ASIA TOUR "THE MAIN CHARACTER"-TOKYO」では、彼女が大好きだという星野源の「恋」を披露し、Instagramにも“恋ダンス”を踊る様子を残している。また坂口健太郎が「つまらないものですが」に登場した際は、坂口が2015年に出演した映画「ヒロイン失格」以来の大ファンだと熱く語っていた。今回の来日公演でもきっと、日本文化への愛情を込めたサプライズを用意してくれることだろう。

活動内容ごとに名義を変えるラッパーも珍しくないが、イ・ヨンジはラッパーネームを冠さず、どのフィールドにおいても本名のイ・ヨンジという名称を貫いている。それは“どんな場に出て行ってもイ・ヨンジはイ・ヨンジそのものである”というような、彼女の意志の表れであるようにも感じられる。貫禄たっぷりの彼女だが、まだ22歳。これからもさらなる飛躍を見せてくれることが楽しみでならない。

そんな彼女の単独公演を、ライブハウスのスケールで見られるのは、もしかしたら今のうちかもしれない。大阪、東京で行われる初の日本ツアーというこの機会を、ぜひ逃さずチェックしてほしい。

イ・ヨンジ

公演情報

「2024 LEE YOUNGJI WORLD TOUR ALL OR NOTHING JAPAN TOUR」

  • 2024年12月16日(月)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2024年12月19日(木)東京都 豊洲PIT

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プロフィール

イ・ヨンジ(Lee Young Ji)

2002年に韓国で生まれたヒップホップアーティスト。2019年に「高等ラッパー」、2022年に「SHOW ME THE MONEY」という韓国の人気ヒップホップ番組で女性初の優勝を果たし脚光を浴びる。2024年にリリースしたEXOのD.O.をフィーチャリングゲストに招いた楽曲「Small Girl」は名だたるアーティストを押さえ韓国の音楽番組で6冠を記録した。YouTubeの人気トークバラエティ「つまらないものですが」やKBSの音楽番組「THE SEASONS」のMCを務めるなど、活躍の場を広げている。2024年1月に初の来日公演「LEE YOUNGJI 1st ASIA TOUR "THE MAIN CHARACTER"-TOKYO」を実施し、12月には2度目の来日公演「2024 LEE YOUNGJI WORLD TOUR ALL OR NOTHING」を開催する。