ナタリー PowerPush - lecca

“どこを目指してるの?”の答えは「TOP JUNCTION」

lecca史上最強にポジティブでアグレッシブ。そんなコピーが躍るleccaのニューアルバム「TOP JUNCTION」が完成した。本作にはカリビアンハウスと呼びたい既発曲「SOLA」や、「Sky is the Limit feat. RHYMESTER」「Back to U feat. TEE」といった話題のゲスト参加曲など13曲を収録。新味といえる壮快なロックナンバーや、ヒップホップ×エレクトロ×ダンスホールな一発、ラヴァーズレゲエからスケールの大きなバラードまで、多彩なサウンドが並んでいる。

楽しさを追求したという前作「ZOOLANDER」とは打って変わり、今回は向上心をストイックに刺激する自己啓発系のメッセージが多め。leccaは「自分のケツを叩くような、そんなソリッドなアルバム」と語るが、そうした方向性の変化はどのようにして生まれたのか。出産、家庭、加齢も含め、今の彼女の音楽への向き合い方をさまざまな角度で紐解いたインタビューを送る。

取材・文 / 猪又孝 インタビュー撮影 / 井出眞諭

自分自身に「どこを目指してるの?」って改めて問いかけるようなアルバム

lecca

──ぴったり1年ぶりのアルバムですが、本作はいつ頃から作り始めていたんですか?

曲自体は、去年「ZOOLANDER」を出した頃から作ってました。実際なんとなく固まってきたのは今年の夏くらいですね。曲は常に作っているんですよ、月4曲という感じで。

──その月4曲というのはノルマみたいな感じなんですか?

はい。あまりに大変な月、例えばツアー中とかは月2曲くらいになっちゃうんですけど、空いてる時間があると曲を作っちゃうんです。趣味みたいなもんなんで(笑)。

──曲がなかなかできないっていう人にはうらやましい話ですね(笑)。その制作スタイルは長く続けてきてるんですか?

ずーっとそうです。もうデビュー前から。できるならば曲を作るほうだけやっていたいんですよ。作るほうだけやってるほうが実は楽しいっていう。

──今回はどんなアルバムを目指していたんですか?

前回も前々回もそうなんですけど、アルバムに入れる曲が10曲くらい固まってきたときにアルバムタイトルを考えるんですね。そのアルバム制作の終盤のときにできた曲が最後に入ってる「JUNCTION」で。結果的にこの曲から引っ張って、「TOP JUNCTION」って付けたんです。

──「TOP JUNCTION」って造語ですよね。

そう、正しい英語ではないので印象として捉えてもらいたいんですけど、単なる「JUNCTION」では、なんか物足りない気がしていて。「ZOOLANDER」は“楽しい”っていうことをテーマに作った1枚なんですけど、今作は1枚通して自分自身に「どこまで行きたいの?」「どこを目指してるの?」って改めて問いかけるようなアルバムになってるかなと思ったので、タイトルにもその意味合いを持たせたかったんです。

──今、お話したようなことが「JUNCTION」という曲でも表現されてる?

「JUNCTION」だとそこまで言えてないかも。「JUNCTION」はモラトリアムの人に向けて書いたようなもので。ちょっとこの曲は特殊で、女子高生からいただいたファンレターをきっかけに書いたんです。

──どんなことが書かれていたんですか?

その子は昔から私の曲を聴いてくれてると思うんだけど、「ZOOLANDER」が明る過ぎたっていう感想を送ってきてくれまして。確かに、どうしたら自分は目の前にある壁を破れるんだって葛藤してるような曲が少ないアルバムだったと思うんです。で、その子は 「実は私、今、つらいんです」って。この先進む道はまだ決まってなくて、どこに行きたいのかも正直わかってなくて、そんな私が聴いて希望を持てるような曲とか元気になれる曲をぜひまた書いてくださいって。そう言われたことによって、「あ、そういう時期に音楽が一番必要だった」っていうことを思い出したんですよ。

──なるほど。

私が歌詞も含めて音楽を一番必要としてた時期もそうだったなって。で、10代後半~20代前半のときのなんとも言いようのない不安とか、将来の見えなさっていうのをもう一回思い出して曲にしてみたのが「JUNCTION」なんです。

バカになっていい部分、賢くならずにいていい部分ってあると思う

──それにしても、今回のアルバムは聴き手に喝を入れるようなポジティブなメッセージが多いですよね。

lecca

そうですね。ポジティブな1枚。

──だけど、歌詞の書き出しは、つまづいたり凹んだり悩んだりしてるものが多いなと思ったんです。

いっつもそうなんですよ、私。本当にそうで。

──普段、わりと落ち込みやすいタイプなんですか?(笑)

いえ、あまり(笑)。

──では、歌詞の物語性を高めたり、起承転結を作るために書き出しをそうすることが多い。

そうですね。ただ、もともとはマイナス思考で。10代の頃とかはネガティブで繊細で落ち込みやすくて傷付きやすくて、みたいな。けっこうグルグル考えがちで、なんでもないことなのに不安要素ばっかり膨らませて悩んじゃったりするクセがあったんです。

──そんなleccaさんですが、今回は「BLANK」という曲で「考えるな」ってメッセージを表してますよね(笑)。

そうなんです(笑)。

──「Even don't think」と歌ってるから、正確には「わざわざ考えるな」っていうことですが、そういうメッセージってleccaさんには珍しいと思ったんです。

この曲は確かに珍しい歌詞ですね。ちょっと疲れちゃったんでしょうね(笑)。

──あはは。最近疲れちゃいましたか?(笑)

私はまったく疲れてないんですけど、ウチのディレクターが疲れてるんですよ(笑)。音楽業界の暗いニュースは皆さん耳にすると思うんですけど、私はあんまり気にしてなくて。そもそも私は「サバイブ」とか「メイクマネー」とかっていうことをテーマにした音楽の作り方をしていないので、そんな自分に向けても言ってるんですけどね。

──もうちょっと衝動を大事にしよう、衝動に正直に、とメッセージしたかった?

行動実践主義じゃないですけど、例えば今、一番いい道筋ってナビが教えてくれますよね。なんか答えが欲しいなと思ったら検索ワードを2、3個ネットに打ち込めば出てくるじゃないですか。そういうふうにして最短距離とか目的までの費用対効果とかを調べられるけど、そういうところからいっちゃうと、もともとの衝動とか情熱とかがどんどん薄まっていくような気がして。頭がよくなりすぎる、賢くなりすぎる、機械的、効率的になりすぎることが生み出す弊害ってあると思うんです。それって音楽とは真逆のことかも、とか思うと、私は音楽が好きだからあんまりそういうのをやりたくないなあって。例えば「ドラゴンボールZ」の曲(「CHA-LA HEAD-CHA-LA」)で「頭カラッポの方が夢詰め込める」っていう歌詞がありますよね。アレと一緒で、バカになっていい部分というか、そこまで賢くならずにいていい部分ってあると思うので、そういうことを歌ってるんです。

──さらに今回は「MOVE」という曲もあって、「考えるな、動け!」と言ってるようで。この2曲はセットみたいなものですか?

そうですね(笑)。「BLANK」「MOVE」「Sky is the Limit feat. RHYMESTER」は同じ時期に書いてるので、だいたい同じようなことを言ってますね。

ニューアルバム「TOP JUNCTION」/ 2013年12月11日発売 / cutting edge
CD+DVD / 3360円 / CTCR-14813/B
CD / 2940円 / CTCR-14814
CD収録曲
  1. RUNWAY
  2. Sky is the Limit feat. RHYMESTER
  3. BLANK
  4. ヤマトナデシコ
  5. あいあん・はあと
  6. to be continued
  7. 恋初め
  8. MOVE
  9. SOLA
  10. Back to U feat.TEE
  11. 100年の明日
  12. 霧が晴れるまで
  13. JUNCTION
CD+DVD盤DVD収録内容
  • 「Sky is the Limit feat. RHYMESTER」PV
  • 「SOLA」PV
  • 楽曲解説
  • OFF SHOT
lecca LIVE TOUR 2014 "TOP JUNCTION"
  • 2014年3月2日(日)宮城県 Rensa
  • 2014年3月14日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2014年3月16日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2014年3月20日(木)大阪府 Zepp Namba
  • 2014年3月22日(土)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2014年3月26日(水)東京都 Zepp Tokyo
lecca(れっか)

2000年にシンガーとして活動開始。2006年4月にミニアルバム「Dreamer」でメジャーデビュー。以降、ライブとリリースを重ね、2009年に発売された初のシングル「For You」は、USENの年間リクエストランキング1位を獲得。同曲が収録されたアルバム「BIG POPPER」はオリコン週間ランキングに4週TOP10入りを果たした。さらに2010年、CDリリースに先行して配信された「TSUBOMI feat. 九州男」が100万ダウンロードを突破。5枚目のフルアルバム「パワーバタフライ」は自身最高位となるオリコンランキング2位を記録した。また、2011年6月に第1子を出産。2012年5月には自身初の日本武道館公演も成功させる。2013年12月、通算8枚目となるアルバム「TOP JUNCTION」をリリースした。2014年にはこのアルバムを引っさげた全国ツアーの開催が決定している。