ナタリー PowerPush - lecca
出産を経てさらに前進 確かな一歩「Step One」
leccaが通算6枚目のオリジナルフルアルバム「Step One」を発表した。今作には、聴く者の心を鼓舞する「Jammin' & the Empire」「INFORMER」といったビートチューンから、「ぼくたちの世界」「再生」のような感動的なナンバーまで15曲を収録。「gift」「ファミリア!」「Right Direction」という既発のナンバーや、彼女自身が大ファンだというRIP SLYMEのILMARI & SU、EMI MARIAとのコラボ曲も堪能できる。
また、この作品の制作を進めていた2011年6月、leccaは第1子を出産。初めての妊娠、出産、子育てを経験しながら完成した「Step One」には、他のどのアルバムとも似ていない思い入れがあるという。常に揺るぎない信念を持ち、母になっても活動ペースを緩めない彼女に、さまざまな話を訊いた。
取材・文 / 鳴田麻未
2011年は自分の生き方を考え直した年
──「Step One」は、インタールードなしの15曲入りでトータル約72分という、かなりボリュームのある作品に仕上がりましたね。
元々は12曲入りの予定だったんですよ。ただ、このアルバムは2011年に年間通して制作してたんですけど、年の前半にできた曲ばっかりの作品にはしたくなくて。9月以降の、自分が前向きに動き出せるような気持ちになってからの楽曲も入れたいなと思い、あれも入れたい、これも入れたいって付け足していったら最終的に15曲になってしまったんです。
──9月以降、前向きに動き出せるような気持ちになったというのは?
2011年は震災もありましたし、自分自身の出産という出来事もあり、一度全てが止まったように感じるときもあったんですね。自分にとっても周りの人にとっても、これまでの価値観がゼロに戻されたり、ずっと信じてたものが崩れ落ちてしまったりして、もう1回自分の生き方を考え直す、そんな年だったのかなって思うんです。でも、足が止まってた時期を経てまた動き出したタイミングが個人的にあって、そこが9月くらいだったのかな。やっぱり心境が変わると出てくる曲も違うので、10月、11月、12月に書いた曲もたくさん入れたいなと思ったんですよ。
──なるほど。確かに2011年に曲作りをしていたら、東日本大震災のことは考えざるを得ないですよね。
例えば「ぼくたちの世界」っていう曲は、アルバムに入れるかどうかすごく悩みました。震災を彷彿とさせてしまうような曲はなるべく最小限に抑えたいと思っていたので。
──それはなぜですか?
気持ちが、そこから動けなくなりそうな気がしたので。もちろん去年はそういう年なんですけど、それだけに縛られない表現をしたくて。人を落ち込ませたり、暗い景色を思い出させたりするんじゃなくて、どうしたら前に進めるかっていうことを考えて、歌い、それを聴いてる人にも受け取ってほしいと思いました。
──でも、「ぼくたちの世界」は結果的にアルバムに入れることにしたんですよね?
これも12曲入りが15曲入りになった理由のひとつで、制作を進めているとき「暗い曲をどれだけ入れるか」を決めるやり取りがあったんです。そのとき既に「missing Ordinary」と「get ur morning」は“暗い枠”で入れることが決まっていて、ディレクターはここに「ぼくたちの世界」をすごく入れたいと言いました。でも私は、もう2曲も暗い曲があってちょっと重い作品になってしまうんじゃないかと懸念しまして。この曲は聴いた人が元気になるというより、しんみりといろんなことを考えてしまう曲なんじゃないかなと思っていたので、ちょっとだけ躊躇したんですね。
──ええ。
だから、最終的にアルバムそのもののキャパを増やすという前向きな選択をしました。12曲中3曲が重いのと、15曲中3曲が重いのだったら、15曲のほうが暗さが薄まるだろう!と(笑)。さらに、曲が増えた分「Jammin' the Empire」や「HI-TEN feat. ILMARI & SU」みたいな、ガシガシとした強いビートのダンスホール曲も入れてバランスを取れるようになったので「ぼくたちの世界」を入れることもOKだなと思えたんです。
収録曲
- Jammin' the Empire
- HI-TEN feat. ILMARI & SU
- ファミリア!
- Right Direction
- 疾走マザー
- ONE WORD
- やるならば
- missing Ordinary
- INFORMER
- ドルチェ
- Dreaming of you feat. EMI MARIA
- get ur morning
- gift
- ぼくたちの世界
- 再生
CD+DVD盤付属DVD収録内容
- 「Jammin' the Empire」ビデオクリップ
- 「ファミリア!」ビデオクリップ
- 「Right Direction」ビデオクリップ
- 「INFORMER」ビデオクリップ
- オフショット
lecca(れっか)
2000年にシンガーとして活動開始。2006年4月にミニアルバム「Dreamer」でメジャーデビュー。以降、ライブとリリースを重ね、2009年に発売された初のシングル「For You」は、USENの年間リクエストランキング1位を獲得。同曲が収録されたアルバム「BIG POPPER」はオリコンウィークリーチャートに4週連続トップ10入りを果たした。さらに、2009年11月にシングル「My measure」がドラマ「ギネ 産婦人科の女たち」主題歌に起用され、さらに広い層にその名と歌声が知られる。2010年、CDリリースに先行して配信された「TSUBOMI feat. 九州男」が100万ダウンロードを突破し、CD発売前にUSEN総合チャート1位を獲得したことが話題に。5枚目のフルアルバム「パワーバタフライ」は自身最高位となるオリコンウィークリーチャート2位を記録し、その後行われた2度目の全国ツアーでは1万5000人を動員した。また、2011年6月に第1子を出産。同年12月にはニューシングル「Right Direction」、翌年1月には6枚目のフルアルバム「Step One」をリリース。3月末から実施する全国ツアー「lecca LIVE TOUR 2012 "Jammin' the Empire"」では自身初の日本武道館公演を行う。