「宇宙船地球号」は1980年12月にLAZY(当時はレイジー表記)が発表した5作目のオリジナルアルバムであり、日本のロック史においても重要な意味を持つ名盤の1つである。この作品の登場から半年後にバンドは解散し、それに伴って高崎晃(G)と樋口宗孝(Dr)が始動させたLOUDNESSが1981年11月にデビューしているという経緯から、「LOUDNESSの前身」といった認識をされることも少なくない。21世紀に双方のバンドが共存することになるとは、当事者たちも想像していなかったに違いない。しかもLAZYとしてのデビュー記念日にあたる2021年7月25日、彼らは無観客の配信ライブという新たな試みに挑むことになった。しかもそこで披露されるのが、この「宇宙船地球号」の完全再現を軸とするプログラムだというのだから興奮せずにはいられない。その新たな挑戦を前に、高崎晃(G)、影山ヒロノブ(Vo)、井上俊次(Key)の3人に話を聞いた。
取材・文 / 増田勇一 撮影 / 岩佐篤樹
- 7 SAMURAI PROJECT LAZY「宇宙船地球号」完全再現配信ライブ
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配信日時:2021年7月25日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
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配信プラットフォーム
ほか
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1970年後半に一世を風靡したLAZYが1980年に発表した伝説のアルバム「宇宙船地球号」完全再現ライブを、44年前にデビューシングルが発売された記念日にあたる7月25日(日)に配信ライブとして開催! オリジナルメンバーの影山ヒロノブ、高崎晃、井上俊次が本編でアルバムを収録順に完全再現、アンコールで代表曲も交えたパフォーマンスをお届けします!
※視聴チケットにはメンバーのスペシャルデジタルフォト付き
ロックミュージックにずいぶん助けられた
──今回の配信は、「7 SAMURAI PROJECT」という新プロジェクトのプロデュースによるものとされています。資料によると「コロナ禍でがんばるすべての人々を音楽で応援するプロジェクト」とのことですが、まずそのプロジェクトと皆さんとの関わりについて簡単に教えていただけますか?
高崎晃(G) 実はこのプロジェクトにプロデューサーのような立ち位置で関わっているのが、僕の幼馴染みなんです。つまり影山くんにとっても同じことなんだけど(笑)。コロナ禍になる少し前から彼とときどき会って話をするようになって、そのあと、世の中がどんどんこういう状況になっていく中で、みんなにパワーを与えるようなことを何か自分たちにできないものか、という話になって。よくよく思い出してみると、自分自身も子供の頃、元気のないときや気弱になっているときに、ロックミュージックにずいぶん助けられてきたので、今回は自分たちがそのために立ち上がろうじゃないかという発想になったわけです。今回の配信もその一環として企画されたもので、もちろん本来ならばお客さんを入れてライブができればいいんですけど、なかなかそうもいかない状況が続いているんで。
──結果的にLAZYとしては新しい試みになるわけですよね?
井上俊次(Key) 初めてですね、こういう形での配信というのは。
高崎 無観客での配信というのは自分としても初なので、「どうなるのかな?」というのはあるんですけどね。ライブ中にこちらから何かを投げかけても返りがないというのは、正直、慣れていないです。
影山ヒロノブ(Vo) ただ、それに慣れちゃうというのもちょっと悲しいですけどね(笑)。とは言え、何より1年半ぶりにLAZYのステージができるというのが自分としてはうれしいし、このプロジェクトの第1弾企画としてLAZYでこれをやろうと決めてくれたタッカン(高崎)にはすごく感謝してます。全国にいるLAZYファンの人たちがめっちゃ喜んでくれるはずだし、それが僕としては何よりうれしいですね。
井上 僕の場合、LAZYをやるときだけ“現役”ということになるんですけど(笑)、とにかくこの1年、いろいろとあったじゃないですか。ここから先はいい年になってくれたらいいなあ、と思ってます。いろんなことに挑戦できるような状況になっていってほしいな、と。
「宇宙船地球号」再現ライブにはお楽しみ要素も
──今回の配信が行われる7月25日は、LAZYにとってはデビュー記念日にあたります。今から44年前、1977年のその日に「Hey! I Love You!」という1stシングルがリリースされているわけですが。
高崎 44年前? うわーっ!
一同 はははははは(笑)。
──その大切な記念日に行われる配信の内容が「宇宙船地球号」の完全再現を軸とするものになったのは、どのような理由からなんでしょうか?
高崎 LAZYにおける歌謡曲時代のヒット曲というのはほかに何曲もあるんだけど、今、LAZYのアルバムで一番手に入りやすいのは「宇宙船地球号」ということになるだろうし、おそらく累積セールスも一番多いはずなんですね。そういう意味でも当然と言えば当然の選択。しかも自分たちとしても「どうしてもこういうのを作りたい」という思いで、一丸となって作ったアルバムだったからね。
井上 ただ、「宇宙船地球号」の再現だけではないんですよ。2部構成になっていて、その第2部のほうではアンコール的に最近のLAZY曲とか、タッカンが作ってきた新曲もやることになっていて。そういった“お楽しみ要素”も用意されているんです。
高崎 その新曲は「All will be Fine with You」というんですけど、実は今まさにニューアルバムを作っているLOUDNESSのほうでもすでに録音済みなんです。歌詞の内容的にもたくさんのアーティストに歌ってほしいなと思っている曲で、このイベントの趣旨にも重なるところがあって。だから実際、「影山くんが歌ったらどうなるかな? 同じシーンにいる(浜田)麻里ちゃんが歌ったらどんな感じかな?」みたいにいろいろイメージを膨らませたりしてたんですけど、今回のリハーサルで影山くんが歌ってるのを聴いたら、やっぱりよくてね。
井上 結果、LOUDNESSバージョンよりも先にLAZYバージョンが先に公表されることになったわけです(笑)。
高崎 そうそう。生演奏はLAZYのほうが先ということになった。
1980年夏の「ハードロック宣言」
──演奏楽曲の時代的な隔たりが40年以上あるライブになるわけですね?
影山 そう考えるとすごいですね(笑)。でもまあ、第2部のほうはある意味、サービスアンコール的な意味合いのものでもあるので。第1部では「宇宙船地球号」だけをやるわけですけど、そうやってきっぱりと分けたほうが自分としても集中しやすいところがありますしね。もちろん、いろんなジャンルのものが混ざっているのがLAZYのよさだというのもわかるんだけど。実際、このアルバムを出す前に、当時の僕たちは「ハードロック宣言」というのを経ているんですね。「これからはこういうのをやっていくぞ!」と大々的に言い放ったうえで、このアルバムを作ったわけなんです。
──ええ。1980年夏のツアーの際に「ハードロック宣言」がなされていて、そのツアー終了後に制作されたこのアルバムが同年末に出ています。そういった宣言を経たうえでのアルバム制作というのは、なかなかプレッシャーの伴うものでもあったんじゃないかと思うんです。当時のことは今もよく覚えていますか?
井上 鮮明に覚えてますね。今でもこのアルバムの曲を演奏していると、当時のレコーディング風景が頭に浮かんでくるんです。その記憶の中でタッカンは当時使ってたギターを弾いてるし、ここにはいない2人のメンバー(ベーシストの田中宏幸とドラマーの樋口宗孝。それぞれ2006年、2008年に他界)の顔が浮かんできたりもするし。レコーディングのあり方自体が印象的だったというのもあると思うんですけどね。箱根のロックウェルというスタジオでの合宿レコーディングで、当時のシングルも含めて一気にそこで録ったんです。でも、このアルバムにはそういったシングル曲が入ってない。だからこそバンドのオリジナル作品だという自負も強いんです。
影山 当時のシングル曲というと、「星のハーティー・ロード」と「ガラスのハート」だね。
井上 そして「感じてナイト」。時期的なことだけで言えば、そのあたりの曲が入っていてもおかしくないんです。
──実は2008年にこのアルバムが紙ジャケでリイシューされたとき、まさにその3曲がボーナストラックとして収録されているんです(と言って、現物を差し出す)。
影山 ああ、ほんまや。これ、いいっすね!(笑)
高崎 この3曲を含めた13曲を、一気に録ったんだったよな?
影山 うん。当時はバンドのメンバー5人以外に、作曲家の水谷公生さんが楽曲提供以外にサウンド的なまとめをしてくれていて、歌詞とかコンセプトをまとめる伊集院静(伊達歩)さんがいて。そのチームですべてを作る、みたいな感じでしたね。エンジニアもこのときぐらいからロック寄りの人になった。それまでは同じレコード会社の中でも歌謡班にいたLAZYが、「ハードロック宣言」を経たことで別の班に移って、もっとアーティストとして作ったのがこのアルバム、ということになると思う。
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駆け抜けた10〜20代の記憶