YouTubeで150万人を超える登録者数を持つタケヤキ翔(Vo)、TikTokを中心としたSNSの「叩いてみた」動画などで話題を集めるマイキ(Dr)からなる“デスクトップロックユニット”のラトゥラトゥが、デジタルシングル「東京アップデート」を完成させた。互いに別のバンドでの活動経験を持ち、現在はYouTubeでの動画投稿でも活躍するラトゥラトゥは、これまでにヒット曲やアニメソングのメドレーなど、多数のカバー動画をアップ。オリジナル曲のミュージックビデオなどを含めて、約1年半足らずにも関わらずYouTube再生回数が3000万を超えるほどの人気を誇っている。
音楽ナタリーでは「東京アップデート」のリリースを記念して、ラトゥラトゥにインタビュー。2人の音楽的なルーツや影響を与えたアーティストの話に始まり、出会いのエピソード、歌やトラックへのこだわり、オリジナル曲とカバー曲に対するスタンスなどを聞いた。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
YouTube発の本格アーティスト
──YouTubeをメインに活躍しているお二人ですが、音楽ナタリー初登場ということで改めて自己紹介をお願いします。
タケヤキ翔(Vo) ラトゥラトゥのボーカル、タケヤキ翔です。まだラトゥラトゥは結成して1年ちょっとなんですけども、僕的には自身の8年間のYouTubeでの活動と同じくらいの熱量で力を入れていて。作曲マイキ、作詞タケヤキで11曲のオリジナル楽曲をリリースさせていただきました。
マイキ(Dr) YouTubeの活動とバンドを両立しているという、珍しいドラム&ボーカルの2人組ロックバンドです。
──翔さんはYouTubeチャンネル登録者数150万人を超え、動画クリエイターとしての認知度が高いですが、音楽に興味を持ったのはいつ頃ですか?
翔 中学生の頃ですね。最初に好きになったのはポルノグラフィティさんで、そこからいろんな音楽を聴くようになりました。大学のときに音楽系のサークルにも入ったんですけど、自分の中であまりしっくりこなくて。大学の卒業タイミングでYouTubeへの動画投稿を始めたときに、「ここで音楽をやりたい!」と思い立って今の活動に至ります。
──一方マイキさんは福岡出身で、ラトゥラトゥではドラマーという肩書きがありつつ、コンポーザー、アレンジャーとしての側面も強いと思います。
マイキ 母親がピアノの先生で、父親もいろんな楽器を演奏するマルチプレイヤーだった影響もあって、自然に音楽をやるようになりました。ごはんを食べるような感覚で、気が付いたら生活の一部でした。幼少期はオーケストラ、吹奏楽系に触れる機会が多くて、久石譲さんや坂本龍一さんの楽曲が好きでしたが、中学の頃にBUMP OF CHICKENさんやUVERworldさんを知り、ロックに目覚めました。だから今、自分で作っている音楽はロックをメインにしつつ、小さい頃から影響を受けてきたいろんな音楽が融合している感じです。
──マイキさんは最近の動画でジャスティン・キングのテクニカルな曲をギターでさらりと弾いてましたよね。ドラマーでありながら、ギターのテクニックもすごいなと。
マイキ ギターはもともとやってたんですけど、本気で弾き始めたのはラトゥラトゥの活動を始めてからなんですよ。レコーディングでは僕がギターもベースも弾くんです。音源を作るにあたって、それぞれの楽器でラトゥラトゥらしさを出したいと思う中で、YouTubeで知ったジャスティン・キングさんとかMIYAVIさんのスラップ奏法がすごく特徴的だなと思って、ラトゥラトゥに取り入れました。
──翔さんから見たマイキさんの第一印象は?
翔 初対面の印象では音楽のスキルもあって、年齢の割にすごく大人びて見えました。プライベートで遊んだりとかしゃべったりしたときに「あ、けっこう子供っぽいところもあるんだな」って(笑)。
マイキ スマブラとかしてると子供の部分が出るかも(笑)。
翔 でも音楽になると一気にスイッチが切り替わるんで、頼もしいですね。
マイキ そう思っとったんや(笑)。初めて聞いた!
──「音楽が2人を結び付けた」という出会いのエピソードを過去に動画でも話していたと思うんですが、具体的にどうやって知り合ったんでしょうか?
翔 大学を出た頃から「YouTube発の本格アーティスト」というスタイルの第一人者になりたいと思っていたんです。マイキは僕の知り合いの知り合いで、2年くらい前にTwitterに「叩いてみた」系の動画を出していたんですけど、それを見たときにビビッと来て、連絡してみたんです。
マイキ お互い別のバンドをやっていたんですけど、それぞれ前のバンド活動が終わったタイミングが2018年末くらいと同じで。境遇が似ているということもあってか、意気投合したんですよね。
翔 そのタイミングで僕はちょうど事務所も変わったので。新しい一歩を踏み出すぞという気持ちでいました。
──翔さんはマイキさんに出会ってから活動の中心をYouTubeから音楽に寄せていこうと思ったんですか?
翔 そんなこともないんですよね。僕自身、YouTube活動歴が今年で8年目になりますけど、「YouTubeのタケヤキ翔」として多くの人に知られているので、そのイメージを崩したらいけないとは思っていて。今も昔もYouTubeでの活動量は落とさずにプラスαで音楽活動をしているから、以前よりシンプルに忙しくなりました(笑)。
──マイキさんはラトゥラトゥ結成のタイミングでYouTubeを本格的にやり始めたんですよね?
マイキ そうですね。「叩いてみた」系の動画はTikTok、Twitterによく投稿してたんですけど、YouTubeという一番強い動画媒体でも絶対に認知度を広めたいと思ったし、相方がYouTubeで活躍している「タケヤキ翔」になるならなおさらやらないとなって感じたので。
──ちなみに翔さんから誘われたとき、どう思いました?
マイキ 「うわ! タケヤキ翔からDMきた! マジか!」みたいな。
翔 あはは(笑)。
マイキ 知り合いの知り合いとは言え、すごい人から連絡が来たなと(笑)。動画じゃ伝わりにくいけど……実際に話してみるとすごく頭のいい人だと感じました。境遇が似てるとさっき言いましたけど、2人共バンドを引っ張っていくタイプの人間だったこともあって同じ悩みを抱えていて。今までそういう人に出会ったことがなかったんです。いろいろ話しているうちに「この人とならずっと続けられるかもしれない」と思ったし、実際ラトゥラトゥでの活動は、今すごく前向きという実感があります。
──なるほど。翔さんにとって、マルチな才能を持つマイキさんとの出会いは大きいですよね。
翔 これまでにもいろいろありましたけど、彼との出会いは本当に人生のターニングポイントだと思います。
マイキ ありがとうございます(笑)。
それぞれがトップを目指す「ラトゥラトゥ」
──不思議な語感のバンド名ですが、由来は?
マイキ ラトゥラトゥ、変な名前ですよね(笑)。バンド名はできるだけ人に覚えてもらいやすいほうがいいなと思って。心理学的に同じ音が続くと強制的に覚えるっていうのがあるらしくて。小野妹子とかジャルジャルとか(笑)。
翔 「HUNTER×HUNTER」とかね(笑)。
マイキ そうそう。そういう感じで繰り返す感じの名前がいいなあと思っていたときに翔ちゃんがふと「ラトゥラトゥ」と言ったんですよ。僕は「それめっちゃいいやん!」と思ったんですけど、言った本人があまり乗り気じゃなくて(笑)。その時点で僕はラトゥラトゥという名前が頭から離れなくなっちゃったので、これなら人に覚えてもらえるし、音楽には絶対の自信があるので、聴いてもらえたらこっちの勝ちだなと思って「ラトゥラトゥ」案をプッシュしました。あと、「ラトゥ」がトンガの言葉で「首長」という意味で、僕らはYouTubeと音楽どちらも本気でやっていく、そしてタケヤキ翔、マイキそれぞれが一番を目指す、それぞれがトップを目指すっていう意味で“首長と首長”という意味もあります。
──翔さんはバンド名がなじんできたのはいつ頃ですか?
翔 今でもなじんでないかも(笑)。
マイキ あはは(笑)。俺のゴリ押しだったからね。思い付いたのは翔ちゃんだけど。
翔 もちろん気に入ってますよ! ふと降りてきたものがあったのは確かですし、マイキが意味とか理由も含めて後押ししてくれましたから。
「和」「邦ロック」「ボカロ」トライアングル
──ラトゥラトゥは“デスクトップロックユニット”と称して、ロックを基軸にしつつ、和テイストのサウンドを取り入れていますね。
マイキ オリジナル曲はどういう方向性にしていくかを2人で話し合って決めました。僕はロックも雅楽も作れるし、シンフォニックなものもEDMも作れます。選択肢が多い分、逆に僕らしい音楽の方向性も定まらないなって。「俺が作る音楽に歌を乗せてくれよ」というスタイルの作曲家さんもいるかもしれませんが、僕はそういうタイプではなくて。2人で話し合った結果、僕がドラマーで激しめのプレイスタイルだったから作るなら「ロック」がいいだろうと。あとはインパクトの面で「和」の要素は人の頭に残りやすいだろうと思って、取り入れることにしました。
翔 YouTubeを中心に活動していることもあって、海外の方に聞いてもらいたいなという意図もあります。「神様の言うとおりに」という曲は「和」を全面に押し出したこともあって、MVを出したときに海外の方からのコメントが少し多かった印象ですね。神社が映っていたり、和装をしてたりで音だけでなく映像も「和」を感じるものにしました。
マイキ あとは、インターネット発の2人組なのでVOCALOIDの要素も多く取り入れてます。基本的にはこの「和」「邦ロック」「VOCALOID」という3つの要素を混ぜ合わせた音楽を作っていて。曲によっては3つのバランスを大きく変えてどれかの要素が強くなるみたいな。「神様の言うとおりに」だったら“和”が強い。このトライアングルの組み合わせで、邦ロック寄り、ボカロ寄りになることもあれば、3つが合わさって新しい感じの曲になることもあるという作り方をしています。
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あえてダサくした?自信作「東京アップデート」
2020年9月3日更新