ナタリー PowerPush - LASTORDERZ
老いも若きも関係ねぇ! 全力疾走「大人パンク!」
「安齋ちこく!」はリアルパンクだ
サンジ ちなみに「安齋ちこく!」が初のオリジナル曲なんですけど、安齋さんが実際に遅刻したときに「じゃあ曲でも作ってようか」って3人で演奏してできたんです。
トモロヲ 名曲ですね、これ。僕が入ったときにもうすでにできてたんですけど、この曲は心に響いた。「これなんでライブでやんないんですか!」って言ったの僕なんです。
アンザイ やるわけないじゃないですか。ギグに遅刻してないし。
トモロヲ いや遅刻してるじゃないですか! 必ずリハーサル遅刻じゃないですか。しかし、これやんない手はないですよっていう名曲です。この詞こそ、リアルパンクです。
アンザイ だってこんなん個人攻撃でしょ!? 作ったときだって、遅刻してスタジオに行ったらもうできてて。で、次の現場ではもう歌詞があるんですよ。
トモロヲ またそれを歌う度量のでかさが、やっぱパンクだと思うんですよね。
アンザイ 歌いたかないですよ(笑)。
トモロヲ いや、楽しそうですよ意外と(笑)。歌ってるときの安齋さん。
アンザイ なんだろうな、音楽のすごいところは曲が鳴ってリズムが出て、演奏を待ってる人たちがいたら、そりゃ歌わないわけにいかないってところなんですね。でも僕にしてみたら、遅刻しようと思ってしてるわけじゃないんだから(笑)。そんなつもりだったらこんな人間とは付き合いたくない。でも、僕を待ってる側の気持ちはここまで強いんだっていうのは、すごく心に響きます。
トモロヲ ラブソングでも、ラブラブの曲より失恋の曲のほうがクるじゃないですか。それと一緒ですよ。
サンジ 本人が歌ってるっていうのが画期的だと思うんですよね。
トモロヲ 僕が「あいつは遅刻しやがって」とか歌うと、ダメなんですよ。普通なんですよね。
アンザイ それは意見だもんね。これは主張だからね。ひどいよね、これは。
トモロヲ 自分のマイナスなことを暴露するっていうのは、やっぱパンクの手段ですから。それがカッコいいんですよ。パンクってある種自虐ですから。だからホントにパンクソングです。
アンザイ そうやって、力づけてくれるんですよ、トモロヲさんがパンク視点から。
トモロヲ いえいえ。力づけてるっていうか、時間守ってください安齋さん(笑)。
サンジ あと、どの曲もみんなでコーラスをとってるんですけど、それも意味があって。僕らはこのバンドをやるためにいつもと違う楽器を始めたんだけど、ベースもギターも素人なんでドラムだけは本来ドラムのMAKIちゃんに頼んで。なので最初の飲み会のときに、MAKIちゃんが「私は今まで歌を歌ったことがなかったから、このバンドは初めて歌に挑戦する場所にします」って言ったんです。つまり歌という“新しい楽器”をやるって意味ですよね。そこで、MAKIちゃんは本職だけど俺らヘタくそでごめんねっていう気持ちがなくなったんです。
──それも“全員平等”ですね。素晴らしいです。
アンザイ 良い話じゃないですか。
トモロヲ パンクにヒエラルキーはないっていうね。
スケジュールが合わないのも含めて“大人パンク”
──LASTORDERZのギグって、歌ってるトモロヲさんを始め、メンバー全員ものすごく楽しそうですよね。もちろんお客さんも楽しそうで。その、全員がやりたいことをやってる感じも「パンクバンドだなぁ」と思った理由のひとつなんです。だからもっとたくさん活動してほしいんですが、そのあたりいかがですか?
トモロヲ スケジュールさえ合えば。でも、スケジュールが合わないっていうのが“大人パンク”ですから。スケジュールが合ったらヤングパンクでしょ。大人はいろいろ事情がありますからね。でもそれでもやりたいっていう衝動が大切だと思うんで。“飲ミーティング”を含めて。
アンザイ だけどスケジュール合わせるのホント大変ですよ。レコ発ライブも5月ですからね。
トモロヲ 3月に発売するのに5月ですよ!?
──レコ発ライブが遅いのは、大物バンドの証ですね(笑)。
トモロヲ 年齢だけはね。僕と安齋さんの歳足して、もう100歳超えてるわけでしょ。すごいですよ!
アンザイ 110歳のバンドだよ!? 2人で。
──では最後に、今後LASTORDERZで何がしたいか教えていただけますか。
トモロヲ 僕は長生きです。
──アルバムに「死ぬまで生きるぜ!」って曲も収録されてますね。
トモロヲ 結構、この歳になると病気の話聞くんですよ。もうリアルすぎて、切なくて。あと、パンクで長生きしたバンドってまだないと思うんですよね。まだまだ、パンクは若死にってイメージがあるじゃないですか。でもジョン・ライドン然り、生きていくことは辛くてカッコ悪いことだけど、それでも長生きするのが、これからのパンクじゃないかなって思ってます。
──既存概念を覆すという意味では、非常にパンキッシュですね。
トモロヲ パンクってそれぞれでイイんだと思うんですよね。歴史の中でカテゴリづけられるのは、パンクじゃないんだと。
アンザイ っていうか俺、ジョン・ライドンの3つ歳上なんだけど。だからもし楽屋が一緒だったら俺、席譲ってもらえるかもしれない。
トモロヲ 挨拶に来いと。
サンジ 「ドウモジョンデース。ヨロシクオネガイシマース」。
──アンザイさん、サンジさんはいかがですか。
アンザイ 僕は音楽が好きで、でもできないって思ってたから若い頃やらなかったんです。だけど今こうやって自分が音楽をやりはじめると、なんでもっと早くやんなかったかなって思って。やっぱり新しいことをやるっていうのがすごく活力になる。俺にとっての「皇潤」?(※アンチエイジングに有用と考えられているヒアルロン酸を配合したサプリメント)
一同 あっはっはっは!(笑)
アンザイ パンクは俺にとっての「皇潤」。「にんにく卵黄」でも「バイアグラ」でもいいですね。「バイアグラ」な感じですよ。やっぱり、思わぬところがムクムクっと来ますよ。それが一番楽しいです。
サンジ 僕はずーっとバンドマンで死にたいなっていう感じですかね。……あれっ質問なんでしたっけ? LASTORDERZとして何をするのか! そうですね、2枚組アルバムを出したいです。
アンザイ 何のために!?(笑)
トモロヲ アルバムが売れないこの時代に2枚組!?
サンジ 曲はいくらでも作れるんですよ。練習と、アルバムを出してくれるレーベルさえあればできる。このCDが売れることによって、メンバーのスケジュールも合うようになると思うんですよね。だからそれですかね。いつまでも安齋はソラミミストって言われてていいのか!? と。LASTORDERZのギタリスト、ボーカリストと言われてほしい、と。
アンザイ いやいやそれは寝耳に水ですよ(笑)。
CD収録曲
- 大人パンク!
- I ♥ GIG!
- パンク☆ミー!
- 安齋ちこく!
- フューチャーだらけ!
- 気分はAm!…だった。
- エコバッグでお買い物!
- ラゾク!
- 病院行って!
- リスペクトで行こう!
- 死ぬまで生きるぜ!
- パンクがいっぱい!
LASTORDERZ(らすとおーだーず)
ラスト・トモロヲ(Vo, Dance / 田口トモロヲ)、ラスト・アンザイ(Vo, G / 安齋肇)、ラスト・サンジ(B, Vo / 淡谷三治)、ラスト・カホリーナ(G, Vo / 小野かほり)、ラスト・マキ999(Dr, Vo / MAKI 999)の5人からなるパンクバンド。
2007年、ラスト・サンジの呼びかけにより、それぞれ別のバンドで活躍する凄腕プレイヤー3人とイラストレーターの安齋肇が集まり、結成される。初めて4人で音を出してから3カ月後の2008年8月に「SUMMER SONIC 08」SONIC STAGEのオープニングアクトを担当。大規模なステージで奮闘するも、後日放送された「タモリ倶楽部」でみうらじゅんを始めとする出演者にダメ出しをされる。
バンドの行く先について悩んだ結果、2009年に田口トモロヲがバンドに電撃加入。メンバーそれぞれが多忙のため、不定期ながらも多くの“ギグ”を重ね着実にステップアップしていく。同年6月と10月には自主企画イベント「オフレコジャンボリー」を開催。第1回のゲストにはリリー・フランキーとSCANDALを、第2回のゲストにはライムサワーとDJギュウゾウ(電撃ネットワーク)を迎え、盛況を博す。
2010年6月には「WORLD HAPPINESS 2010」前夜祭に出演。7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '09」前夜祭にてRED MARQUEEに登場するなど、注目度も上昇。2010年11月より新しいイベント「大人?パンク?」を企画し、これまでvol.2まで実施。2011年3月に1stアルバム「大人パンク!」をUK PROJECTよりリリースする。