ナタリー PowerPush - LASTORDERZ
老いも若きも関係ねぇ! 全力疾走「大人パンク!」
トモロヲさんが入ってからめっちゃめちゃ楽しくなった
──それで、2008年に大きなステージを2回(「SUMMER SONIC 08」「WORLD HAPPINESS 2008」)経験したのち、2009年にまさかの田口トモロヲ電撃加入という情報が。ナタリーでも当時、ニュースでご紹介させていただきました。
サンジ あっ、そうなんですか!
アンザイ すごい、ありがとうございます。いやぁでも“電撃加入”って感じてるのは僕たちだけなのかと思ってた!
サンジ 正確に言うと、トモロヲさんがやるって言ったのは2008年なんですけど、その年末にやったギグにはスケジュールが合わなくて、実際参加したギグが次の年になったんです。“飲ミーティング”はギグの前にやってましたから、それをスタートとするなら2008年の12月かな。そう言えば、トモロヲさんが入ったときにちょうどリリー・フランキーさんと会うことがあって。リリーさんに「トモロヲさんが入った」って言ったら、それだと安齋さんが「自分がダメだからトモロヲさんを入れた」って思うんじゃないの、みたいに心配されたんです。今もトモロヲさんがちょっとそこを気にすることがあるんです。
トモロヲ 安齋さんは人生の先輩ですから。「先輩は気にしてませんか!?」とは、そりゃあ、当然の気配りです。
サンジ だからビデオクリップでも平等に映るようにストップウォッチでチェックしてます(笑)。
トモロヲ 全員平等のバンドなんで。そこが僕は気に入ってるんです。僕の負担も軽くなるんで。
アンザイ 正直言って、トモロヲさん入ってからめっちゃめちゃ楽しくなったんですよ。それこそサマソニの頃は必死ですよ。なんとかしなきゃいけないっていう必死さが出てて、哀愁すら漂ってた。角砂糖が欲しいサーカスの熊のようなもんですよ。このサーカスが楽しいって初めて思えたのは、トモロヲさんが来てからですよ(笑)。
サンジ で、トモロヲさんが入る前、それこそサマソニでは、アンザイさんが締めにステージでスライディングしてたじゃないですか。トモロヲさんは「以前はそういうことしてたのに僕が入ってからは、さぼってるんじゃないですか(笑)」って言うんです。
トモロヲ でも去年の11月のギグの映像観たら、3回も飛んでましたね。飛んで着地したとき必ずヨロけてて(笑)。
アンザイ すんごい情けない。グラグラってしてんですよね。でも、後ろから見てるとトモロヲさんも面白いんですよ。もう最高。
トモロヲ いやいや見てないで(笑)。見ないでもっと一体感を持ってやってほしいです。何観察してんですか(笑)。
アンザイ こう出たかー!と。例えば、トモロヲさんが唾吐くじゃないですか。それがステージに落ちるんですよ。それをかほりさんがすごく気にするんです。そこ踏みたくないもんだから。で、俺はそれを教えてんの、後ろで。「かほりちゃん、ここに飛んだよ」って。
──僭越ながら、それはギタリストの仕事じゃないような気がします(笑)。
アンザイ いやいや、僕ほとんど世話役ですから。みんなのケーブルさばきもしたいぐらいなんで。
サンジ 安齋さんはギターの音も小さいんですよ。トモロヲさんがビックリしてた。
トモロヲ 僕が今までバンドを経験してきた中で、ギタリストってだいたい自分の音上げて最終的には「うるさいよ!」って言われるのが常だったんです。でもこのバンドで驚いたのは安齋さんがギターの音をどんどん小さくしてること。それがすごい衝撃的だった。何を考えてんだ、何をたくらんでるんだ、この大人はって。ギタリストで自分の音を小さくするってのはあり得ないことだから、ビックリしました。
「イベント出れないんだったらバンドに入ってください」
──アルバム「大人パンク!」は、トモロヲさんが歌ってらっしゃる新作音源としては映画「少年メリケンサック」のサウンドトラック以来になりますよね。
トモロヲ そうですね。
サンジ 実は、トモロヲさんが「メリケンサック」で歌うって聞きつけて「映画のイベントはないんですか、そのイベントの前座で演奏させてくださいよ」ってお願いしてたんです。そしたらトモロヲさんが「いや、イベントはないんじゃないかな」って言うから「じゃあLASTORDERZに入ってください」って。
トモロヲ 「イベント出れないんだったらバンドに入ってください」ってどんな取引(笑)。こっちは全部マイナスだから(笑)。でもじゃあ、とりあえず面白いから入っとくか、みたいなね。
──アルバム収録曲は、バリエーションがありつつも基本的にストレートな'70sパンクの系譜にあるサウンドだと思いました。これは、サンジさんの初期衝動に従って、作りたかったものを作ったということでしょうか?
サンジ 本当のこと言うと、それしかできないってことなんです。だって初めての楽器で弾ける範囲でしか曲も作ってないですし。でもそれが良かったと思うんです。すごく簡単なことになった。あんまテンションがないっていうんですか。
──テンションノートを使ってない、単純なコードで作ってると。
サンジ そう。それが「気分はAm!…だった。」っていう曲につながる。理論は後付けだ、まずはこうだと。ジャズ理論とかありますけど、当時ジャズをやってた人は理論に従って演奏してたんじゃないと思うんですよ。そう弾くと気持ちいいから弾いてた。
──なるほど。で、アルバムを通して非常に真っ当なパンクに仕上がってますよね。
サンジ その真っ当なパンクっつうのはどのへんで感じられたんですかね?
──難しいコードを使っていないこと、歌詞がリピートしてて覚えやすいこと、自分たちのできることや歌いたいことを曲にしてる感じです。それから、全員でボーカルを担当してますよね。これも、結成時にサンジさんがやりたいって思ってたことだと伺い、その初期衝動がそのまんまちゃんと詰まってる点も、非常にパンクらしいなと。
サンジ ボーカルについては、アンザイさんがずっと歌うほど体力が持たなかっただけなんですけどね(笑)。僕、別のバンドでボーカルやってたりするから、安齋さんはどっかで僕を頼ってたところがあったみたいで。だから僕としては安齋さんをボーカルとして誘ったんですけど、気が付くと僕と同じか僕が歌ってるほうが多いぐらい(笑)。
アンザイ 違う違う違う違う、いいですか!? 僕はライブでは歌を歌うときもありますけども、ギターも弾いてるんですよ。素人がそんな2つもやってるんですよ、ミュージシャンの人と肩を並べて。そんな2ついっぺんにできるわけないじゃないですか。考えたって、無理でしょ! それも、例えばシンバルやタンバリンとかだったらまだしも、ギターだから右手と左手がやることめちゃめちゃ違うんですよ! それで歌も人の書いた歌詞ですよ!? 人の詞を覚えなきゃいけないんですよ! まぁほとんどカンペ見てますけどね。そんな状況、素人にしてみたら大冒険ですよ。
──素人を強調されますね。
アンザイ だってパンクで一番大事な、初期衝動の一番近いところにいるのは、僕じゃないですか。
CD収録曲
- 大人パンク!
- I ♥ GIG!
- パンク☆ミー!
- 安齋ちこく!
- フューチャーだらけ!
- 気分はAm!…だった。
- エコバッグでお買い物!
- ラゾク!
- 病院行って!
- リスペクトで行こう!
- 死ぬまで生きるぜ!
- パンクがいっぱい!
LASTORDERZ(らすとおーだーず)
ラスト・トモロヲ(Vo, Dance / 田口トモロヲ)、ラスト・アンザイ(Vo, G / 安齋肇)、ラスト・サンジ(B, Vo / 淡谷三治)、ラスト・カホリーナ(G, Vo / 小野かほり)、ラスト・マキ999(Dr, Vo / MAKI 999)の5人からなるパンクバンド。
2007年、ラスト・サンジの呼びかけにより、それぞれ別のバンドで活躍する凄腕プレイヤー3人とイラストレーターの安齋肇が集まり、結成される。初めて4人で音を出してから3カ月後の2008年8月に「SUMMER SONIC 08」SONIC STAGEのオープニングアクトを担当。大規模なステージで奮闘するも、後日放送された「タモリ倶楽部」でみうらじゅんを始めとする出演者にダメ出しをされる。
バンドの行く先について悩んだ結果、2009年に田口トモロヲがバンドに電撃加入。メンバーそれぞれが多忙のため、不定期ながらも多くの“ギグ”を重ね着実にステップアップしていく。同年6月と10月には自主企画イベント「オフレコジャンボリー」を開催。第1回のゲストにはリリー・フランキーとSCANDALを、第2回のゲストにはライムサワーとDJギュウゾウ(電撃ネットワーク)を迎え、盛況を博す。
2010年6月には「WORLD HAPPINESS 2010」前夜祭に出演。7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '09」前夜祭にてRED MARQUEEに登場するなど、注目度も上昇。2010年11月より新しいイベント「大人?パンク?」を企画し、これまでvol.2まで実施。2011年3月に1stアルバム「大人パンク!」をUK PROJECTよりリリースする。