ナタリー PowerPush - Last Note.

謎多きボカロPユニットの活動の裏側

「SLIPKNOTのジョーイが叩ける範囲」を心がけてます

──派手なリフやイントロによって、瞬間的にユーザーを引き込むスタイルもLast Note.の特徴だと思うんですが。

Last Note. とにかくたくさんの楽曲が投稿されているわけで、最初の引きが大事だと思ってるんですよ。せっかく再生してもらっても、10秒とかで切られたら意味ないじゃないですか。「そこでどう引き込むか?」っていうのが大事なんじゃないかなって。

T 「こういうイントロにしようと思うんだけど」って持っていって、「インパクトがない」って言われちゃうこともありますからね。「え、マジか。いいと思ったんだけど」って。

Last Note. (笑)。

T そこから新しいアイデアを考えることも多いですね。「セツナトリップ」の場合は、最初は静かなストリングス系の音で入って、そこからドン!と上がっていくような感じだったり。

Last Note. 「動画的にイケるかどうか」なんですよね。今の話で言うと、頭のストリングスのところに付ける絵が浮かんだときに「イケる」って思うので。ボカロの調声に関しては、最初のひと言が大事なんです。歌い出しで「すごい」と思ってもらえれば、そのまま聴いてくれるんじゃないかなって。だからそこには一番時間をかけます。どっちにしても、つかみが大事なんですよね。いろんな曲を作ってきたから、だんだんハードルが上がってきてるんですけど……。

──Last Note.の楽曲には数多くのミュージシャンが参加していますが、彼らに対する要求も上がってきてるんじゃないですか?

T やり方は変わってないですけどね。「弾いてみた」に投稿している人に連絡を取って、「こういう感じで弾いてほしい」という長文のメールを送らせてもらって。ほんとにすっごい長文だし、細かすぎてわからないところもあると思うんですけどね(笑)。

Last Note. たぶん、全部読んでない人もいるよね。

T 読んでないだろうね(笑)。なかなか伝わらないときは、Skype会議するんですよ。そこで実際に自分で弾いて、「こんな感じでお願いします」「あ、わかりました」っていう。面と向かって会えない人も多いですからね、距離的にも。

Last Note. 実際に会ったことがある人もけっこういるんだけど、コミケで挨拶するくらいですから。

──手間はかかっても、「弾いてみた」の人と一緒にやりたい?

Last Note. そうですね。ボカロで曲を作ってるんだから、参加してもらうミュージシャンも「弾いてみた」の人のほうがいいじゃないですか。

T うん。「弾いてみた」のほうが、ニコニコ動画にはマッチするだろうし。いろんなミュージシャンに参加してもらうことで、自分たちが思っていた以上によくなることもあるんですよ。それはすごくおいしいなって。

Last Note. 曲の方向性によって、ギタリストを変えることもできるしね。

──生の音が取り入れられてることで、「これを弾いてみたい」っていう人も増えるだろうし。ドラムに関しても、めちゃくちゃうまい人だったら叩けますよね……?

T 一応、「SLIPKNOTのジョーイ(・ジョーディソン)が叩ける範囲で」っていうのは考えてるんですよ(笑)。あと、手数王の菅沼孝三さんとか。

Last Note. ハハハハハ(笑)。

T 確かに難しいとは思いますけどね。ただ、たまに「叩いてみた」で完璧にやってる人がいて、そういう動画を見るとビックリしますね。「すげえ、ホントに叩けるんだ!?」って。

Last Note. 僕らの曲を学園祭でバンドでやりたいって言ってもらえることもあるんですけど、そんなに気軽には弾けない気も(笑)。「一番簡単な曲はどれですか? その曲から練習します」って聞かれるんですけどね。

T 「オサナナブルー」かな? まあ、どれも難しいけど。

人前に出ると緊張するから、後ろにいるほうがいいです

──ちなみにお2人は、リアルにバンドをやろうと思ったことはないんですか?

Last Note. ないですね!(即答)

T 2人とも出たがりじゃないんで(笑)。

Last Note. バンドをやると、練習とかで時間を取られるじゃないですか。僕らは制作にも時間がかかるほうだし、どんどん新しい音源を発表したほうがいいかなって。

T うん。もちろんインターネットがなければ、こんな活動はできないですけどね。

──ボカロで曲を作って、「弾いてみた」のプレイヤーに参加してもらって。動画サイトの利点を存分に活かしてますよね、ホントに。

T ありがとうございます。まあ、ニコニコ動画って、「動画」ですからね。それを含めて、やれることはいろいろあるんじゃないかなって。

Last Note. うん、そこでやれることってなんだろう?っていうのはいつもイメージしてるので。

──なるほど。Last Note.が2人組ユニットであることを公表してからしばらく経ちますが、何かリアクションはありました?

Last Note. 何もないですね(笑)。

T 「ふーん、そうだったんだ」くらいで。

Last Note. そこはあんまり気にしないみたいですね。あとはTwitterくらい?

T 公表したタイミングでTwitterを始めたんですけど、えらい勢いでフォロー数が増えたんですよ。1万人くらいの人が僕の発言を見てると思うと……。

Last Note. 怖くてつぶやけない(笑)。

T たまにつぶやくと、「おひさしぶりです」って言われるんですよね(笑)。でも、生活も全然変わらないし、今まで通りですね。

Last Note. 活動も変わらないと思うんですよ、これからも。今は小説とかマンガの原作もやらせてもらってますけど、Last Note.としてボカロ曲を作ることが軸であることは変わらないし。

──1回、2人のライブを観たい気もしますけど。

Last Note. いやー、ないでしょうね(笑)。

T 舞台に立ったら、緊張しすぎて何もできないですよ。後ろのほうにいるほうがいいです、僕らは(笑)。

Last Note. feat. GUMI、初音ミク「セツナコード」 [CD] 2013年8月21日発売 / 2000円 / EXIT TUNES QWCE-00288
Last Note. feat. GUMI、初音ミク「セツナコード」
収録曲
  1. セツナトリップ / Last Note.feat. GUMI
  2. スパイラルブレイカー / Last Note.feat. GUMI、初音ミク
  3. アカツキアライヴァル / Last Note.feat. 初音ミク、巡音ルカ
  4. 放課後ストライド / Last Note.
  5. 無気力クーデター / Last Note.
  6. 有頂天ビバーチェ / Last Note.
  7. 逃走本能 / Last Note.feat. GUMI
  8. 少女暴動 / Last Note.feat. GUMI
  9. 月光戦争 / Last Note.feat. 鏡音リン
  10. ノイジーラバーソウル / Last Note.feat. GUMI
  11. デッドラインサーカス / Last Note.feat. GUMI、鏡音レン、神威がくぽ
  12. ファンタジースター / Last Note.feat. GUMI
  13. 恋愛勇者 / Last Note.feat. GUMI
  14. キャラメルヘヴン / Last Note.feat. GUMI
  15. アリスメティック / Last Note.feat. GUMI、初音ミク
  16. ハッピーチューン / Last Note.feat. 初音ミク
  17. オサナナブルー / Last Note.feat. GUMI
  18. ルートスフィア / Last Note.feat. GUMI
  19. ハローラフター / Last Note.feat. 初音ミク、鏡音リン、巡音ルカ、GUMI、Lily、IA

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Last Note.(らすとのーと)

ハードなギターサウンドによるストレートなロックチューンを得意とするボカロPユニット。2010年に動画サイトへの初投稿作「ワンステップ・レイヤード」が早くもVOCALOID殿堂入りを果たし、「セツナトリップ」などの楽曲が絶大な支持を受けた。その後2012年末に発表した「放課後ストライド」を皮切りに、同じ世界を描いたシリーズ「ミカグラ学園組曲」を始動。それまでLast Note.の素性はベールに包まれていたが、2013年にLast Note.、Last Note.Tの男性2人組ユニットであることが明かされた。同年8月にはEXIT TUNESからフルアルバム「セツナコード」をリリースする。