ナタリー PowerPush - LAST ALLIANCE
MATSUMURAが明かす進化の理由
バンドを続けるうちにルーツがどんどん表出
──先ほどMATSUMURAさんは「僕は純粋にJ-POPが好き」とおっしゃってましたが、J-POPに対してそこまでの思いがあったんですね。ちょっと意外でした。
あ、そうですか? まあでもアレですよ、僕が10代の頃に聴いてたものが好きなわけで。最近の流行り曲とかはね、一応聴くようにはしてますけど。はい(笑)。
──当時はどういったアーティストを聴いていたんですか?
ドリカムとかaikoとか大好きで。今聴いてもすごいなと思いますね。ミスチルもよく聴きました。
──そういったアーティストのメロディや歌詞に惹かれる?
そうですね。もちろんアレンジにも。「このストリングス、すごいな」とか。僕が思いつかないようなアレンジもあるし、正直うらやましかったですね、J-POPというものが。ちょっと語弊があるかもしれないけど……LAST ALLIANCEがいるシーンではとがったものがカッコいいとされ、J-POPのような音楽をちょっとダサいとする風潮がある中、僕はそういう考えは持ってなくて。
──特にパンクやメロコアっていうのは、ヒットチャートで売れているJ-POPに対するカウンターと見る人も多いですから。その視点とは別に、MATSUMURAさんは「この曲、この作品は音楽として純粋に優れている」と感じていたと?
それもあるし、あとはもともと……なんて言うんだろう。要は中学生、高校生の頃、僕とANZAIがバンドを始める前によくスノーボードに行っていて。で、ゲレンデでよくBAD RELIGIONやTHE OFFSPRINGみたいなメロコアがかかっていて、そこから僕と彼の間の共通項としてメロコアというものが生まれるんです。でもそれ以前の僕は米米CLUBや高野寛を聴いてたし、ANZAIはGUNS N' ROSESやSKID ROWが大好きで、ZIGGY、BOOWYのコピーをするロックンロール少年だったんで(※文中にてバンド名を「BOOWY」と表記していますが、2つ目のOは/付きが正式表記となります)。
──そうだったんですね。MATSUMURAさんはアーティストとして、いわゆるJ-POP側に進もうと考えたことはなかったんですか?
ないですね。バンドをやり始めた頃はもうメロコアみたいにとがったものが好きだったので。でもバンド活動を続けていくうちに、自分の音楽的ルーツがどんどん表出するようになってきたんです。
──それこそ10代の一番多感な時期に聴いたものって、ずっと残りますからね。
そうですよね。バンドマン同士でも酒を飲んでるときに昔聴いてた音楽が一緒だとわかると、急に目をキラキラさせて語り始めることが多いんですよ。例えば「LUNA SEA最高だよね」「復活したときのライブを観て泣いた」とか。そういうルーツってすごく大事だと思います。
昔だったら今回のアイデアに納得できてないと思う
──パンクバンドをやっていてそういう自分の音楽的ルーツを表に出すことが恥ずかしいというのは、若ければ若いほどあるのかもしれませんね。
僕が昔、高野寛を好きって言えなかったのと同じようにね。若いとすべてに対して変な気恥ずかしさがあるじゃないですか。例えば他人に対して素直に「ありがとう」って言えなかったり。でもそれが大人になるとサラッと言えちゃう。その感じに近いかもしれないですね。
──じゃあさっきの話じゃないですが、初期の頃からJ-POPに通ずる要素はあったけど、今回の「Seventh Sense」くらいまで振り切ってやれたのは大人になったからというのもあるんでしょうか?
あると思いますよ。だって、あの佐野がストリングスを全面に打ち出すということがね(笑)。基本ギャーギャーしたラウドなものが大好きなのに、また違った景色を見たいという気持ちを持てるようになったってことだと思うし。
──新しい音楽にどんどん挑戦したいという意欲の中に、自身の根底にあるルーツを表に出していくことも含まれているんでしょうか?
それもあると思います。昔だったら今回みたいに歌モノにシフトしたり振り切ったことをやろうというアイデアに納得できてないと思うし。それは結局、いろんなことをやってきた中でやり尽くした感があったから、新しい場所に行こうとした結果なんじゃないですかね。
──10周年の節目を迎えたあとにこういうスタイルを選んだことが、また新たな10年に向けての力強い一歩になったんじゃないでしょうか。
そうですね。このアルバムが発売されて、全国ツアーを全部終えたときにまた違う扉が見えてくると思うんです。まあ今までも後先のことは考えないでここまで来てるので、今後もいろんなものがおのずと出てくると思いますよ。
- ニューアルバム「Seventh Sense」/ 2013年3月20日発売 / VAP / VPCC-81764
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CD収録曲
- BLUE BIRD SHERRY
- タナトス
- ディデュディディ
- 灯
- a burning bullet
- 通り雨
- ハローエンドグッバイ
- DELETE
- 人間に告ぐ
- Sensation
- time-lag-cloud
- つぼみ
LAST ALLIANCE
Seventh Sense TOUR 2013
- 2013年5月4日(土・祝)
- 北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
- 2013年5月6日(月・祝)
- 宮城県 仙台MACANA
- 2013年5月12日(日)
- 愛知県 名古屋APOLLO THEATER
- 2013年6月15日(土)
- 大阪府 心斎橋JANUS
- 2013年6月23日(日)
- 福岡県 福岡DRUM SON
- 2013年6月30日(日)
- 石川県 金沢vanvan V4
- 2013年7月28日(日)
- 東京都 LIQUIDROOM ebisu
LAST ALLIANCE(らすとあらいあんす)
2002年に結成されたANZAI(Vo, G)、MATSUMURA(Vo, B)、佐野しんご(G)、HIROSHI(Dr)からなるロックバンド。ANZAIとMATSUMURAのツインボーカルを活かしたエモーショナルな楽曲と、文学的でメッセージ性の強い歌詞が高い支持を集めている。精力的なライブ活動を経て、2003年6月に1stシングル「LAST ALLIANCE」をタワーレコード限定でリリース。続いて7月には1stアルバム「TEARS LIBRARY」を発表し、好セールスを記録する。また、自主企画イベント「UPRISING」や野外イベント「UPFIELD」も定期的に開催しており、毎回強力な出演者で話題となっている。さらに、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「京都大作戦」「PUNKSPRING」といった大型フェスにも出演。2007年からは活動の場をメジャーフィールドに移し、数々のシングルやアルバムを発表している。バンド結成10周年を迎えた2012年には、過去に発売したシングルの収録曲を網羅した「Complete Single Collection『c.s.c20022011』」、バンド初のリクエストツアー「C.L.C TOUR 2012」ファイナル公演の模様を収めたDVD「Welcome to the Alliance」を発売。2013年3月にはニューアルバム「Seventh Sense」をリリースする。