ナタリー PowerPush - LAST ALLIANCE
MATSUMURAが明かす進化の理由
「ハローエンドグッバイ」は完全に佐野ワールド全開
──「ハローエンドグッバイ」はバンドにとって、本当に新境地となる1曲だと思います。ここまでストリングスを大々的にフィーチャーしたポップな楽曲がくるとは想像してませんでした。
そうですよね。でも彼がどういう考えでこの曲を作ったのかは、僕にはわからないんだけど(笑)。僕らは彼から投げられたものに対して、彼の持っているイメージに近づけていく感じなので。その曲を作った奴がその曲のプロデューサーになるので、「ハローエンドグッバイ」については完全に佐野ワールド全開なんですよね。
──佐野さんが洋楽志向というところにもつながるのかもしれませんが、僕はこの曲を最初に聴いたときにTHE SMASHING PUMPKINSの「Tonight, Tonight」とイメージが重なりました。
確かに彼、聴いてましたね(笑)。彼なりに考えて、自分の引き出しから引っ張り出した一番ポップなものがこれだったんだと思います。佐野はバンドの中で一番ハードな音楽な好きなので、ポップと言われて最初は「わっかんねえ……」ってつぶやいてましたから。彼なりに模索した結果がこの曲なんでしょうね。
──たぶんこの曲1曲を取り出して聴かされたら、従来のファンは驚くんじゃないでしょうか。
この曲でいきなりPVを作ったら、ファンのみんなはちょっと驚くかもしれないですね(笑)。でも今回に関してはそれぐらい振り切っちゃおうかみたいなところもあったんですけど、最終的に別の曲(「灯」)でPVを作ることになって。
──でもこのアルバムの流れで「ハローエンドグッバイ」を聴くと、ぜんぜん不自然ではないし、全体に溶け込んでますよね。
うれしいです。もうストリングスにはメチャクチャこだわりましたから。自分で譜面も書いたし。
──えっ、そうなんですか?
はい。バイオリンの方に「こう弾いてください」って指示を出したり。あの曲についてはそこに重きを置いていた気がします。
曲をよくすることを第一に考えてくれるようになった
──ストリングスはラストナンバー「つぼみ」にも導入されています。同じストリングスを使ったポップな曲調といっても、こちらはミディアムバラード。「ハローエンドグッバイ」とはぜんぜん方向性が異なりますね。
この曲は僕が作詞作曲をしているんで、そこはやっぱり曲を作った人間……プロデューサーの違いかな(笑)。作者の好みがかなり出てると思うんですよ。この曲の制作についてはHIROSHI(Dr)がすごく歩み寄ってくれて。僕がアレンジを詰めているとき、ドラムが激しく展開するアレンジを彼に投げたんです。そうしたら「この曲はシンプルなのがいいよ」っていう、10年前のあいつからは出てこないような言葉が返ってきて(笑)。彼が大人になったっていうのもあるし、自分のプレイ云々よりも曲をよくすることを第一に考えてくれるようになったのも大きいですね。バンドとしてはすごく当たり前のことなのかもしれないけど、10年前の僕らはそういうことができてなかったですから。よく解散しなかったなと思いますよ(笑)。
──あははは(笑)。
僕は純粋にJ-POPが好きなんで、その域までもっと振り切りたいと思ってたんです。実はこういうタイプの曲は昔にもあったんですよ。ANZAIとバンドを組んだときから、僕らの中にはメインストリームにのし上がろうという思いがあって。初期のメロコアをやってた頃から、J-POPからの影響を反映させたメロディの楽曲はあったんです。ただ今回は初期と比べてスキルもアップしてるし、昔試したことをバージョンアップさせたものを試してみたくて。
「Seventh Sense」は地味ではなくディープな作品
──なるほど。言い方が正しいかわかりませんが、このアルバムはもともと皆さんの中にあった持ち味が今まで以上に色濃く表れていて、その結果「音で遊んだ」作品になったんじゃないかと思いました。
そう取れるかもしれないですね。2ビートの曲、メロコア調の曲もないし。正直なところ、レコーディング終盤に気づいたら「あ、入ってねえや」みたいな感じでした。前だったら最低2、3曲は入れてたんですけど、今回はそのタガも外れちゃってますね。そういういう意味では遊んじゃってるのかもしれない。
──僕もメロコア調の速い曲が1曲もないという事実に、アルバムを聴き終えてから気づいて驚いたんですよ。
まあどこかから不満が出るとは思うんですけど(笑)。偏ってますよね。でもそれはそれでいいんじゃないかなと。
──でも前作、前々作であったり、それこそ昨年のシングルコレクションアルバムでメロコアの要素はかなり押し出しましたし。
そうですね。僕は今回の「Seventh Sense」、決して派手なアルバムじゃないと思っていて。かといって地味かというとそうでもなくて、とてもディープな作品だと思うんです。なので何度も聴いて、僕らがやりたかったことを感じてほしいです。
──確かに深いアルバムですよね。派手なアルバムではないっておっしゃいましたけど、でも1曲1曲はとてもカラフルなんですよ。そのカラフルさっていうのは原色というよりも、もっと淡くてグラデーションのかかった感じというか。1曲目の「BLUE BIRD SHERRY」からラストの「つぼみ」まで、その緩急のグラデーションが気持ちいいんです。
うれしいですね、そういう感想は。今まではもっと原色っぽい音だったと思います。それが曲ごとにハンドリングする人間が違うから、それらがぶつかり合ってよりバキバキした感じだった。でも今回はメンバーの歩み寄りが影響してるのか、よりナチュラルなものになってると思います。
- ニューアルバム「Seventh Sense」/ 2013年3月20日発売 / VAP / VPCC-81764
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CD収録曲
- BLUE BIRD SHERRY
- タナトス
- ディデュディディ
- 灯
- a burning bullet
- 通り雨
- ハローエンドグッバイ
- DELETE
- 人間に告ぐ
- Sensation
- time-lag-cloud
- つぼみ
LAST ALLIANCE
Seventh Sense TOUR 2013
- 2013年5月4日(土・祝)
- 北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
- 2013年5月6日(月・祝)
- 宮城県 仙台MACANA
- 2013年5月12日(日)
- 愛知県 名古屋APOLLO THEATER
- 2013年6月15日(土)
- 大阪府 心斎橋JANUS
- 2013年6月23日(日)
- 福岡県 福岡DRUM SON
- 2013年6月30日(日)
- 石川県 金沢vanvan V4
- 2013年7月28日(日)
- 東京都 LIQUIDROOM ebisu
LAST ALLIANCE(らすとあらいあんす)
2002年に結成されたANZAI(Vo, G)、MATSUMURA(Vo, B)、佐野しんご(G)、HIROSHI(Dr)からなるロックバンド。ANZAIとMATSUMURAのツインボーカルを活かしたエモーショナルな楽曲と、文学的でメッセージ性の強い歌詞が高い支持を集めている。精力的なライブ活動を経て、2003年6月に1stシングル「LAST ALLIANCE」をタワーレコード限定でリリース。続いて7月には1stアルバム「TEARS LIBRARY」を発表し、好セールスを記録する。また、自主企画イベント「UPRISING」や野外イベント「UPFIELD」も定期的に開催しており、毎回強力な出演者で話題となっている。さらに、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「京都大作戦」「PUNKSPRING」といった大型フェスにも出演。2007年からは活動の場をメジャーフィールドに移し、数々のシングルやアルバムを発表している。バンド結成10周年を迎えた2012年には、過去に発売したシングルの収録曲を網羅した「Complete Single Collection『c.s.c20022011』」、バンド初のリクエストツアー「C.L.C TOUR 2012」ファイナル公演の模様を収めたDVD「Welcome to the Alliance」を発売。2013年3月にはニューアルバム「Seventh Sense」をリリースする。