ナタリー PowerPush - LAST ALLIANCE
MATSUMURAインタビュー&セルフライナーノーツ
今年結成10周年を迎えたLAST ALLIANCEが、初のシングルコレクションアルバム「Complete Single Collection『c.s.c20022011』」を1月25日にリリースする。本作には現在は入手困難となっているインディーズシングルからメジャー移籍後の作品まで、過去のシングルに収録された全楽曲を2枚のディスクに網羅。さらにニューシングルとも言うべきDISC 3「It's a emotional world」も同梱され、バンドの「これまで」と「これから」が封じ込められたボリューム満点の作品集となっている。
今回ナタリーでは、メンバーのMATSUMURA(Vo, B)にインタビューを実施。10周年という節目にシングルコレクションアルバムを制作した理由や、これまで発表してきた作品に込めたバンドの思いなどを語ってもらった。さらに、メンバー4人による「Complete Single Collection『c.s.c20022011』」セルフライナーノーツ、ギタリスト佐野森吾の名前の遍歴など興味深いコンテンツも用意。この特集を通じて、LAST ALLIANCEが辿ってきた軌跡を振り返ってみよう。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 中西求
MATSUMURA インタビュー
普通のベストアルバムだけは絶対に嫌だった
──このアルバムはなぜ普通のベストアルバムではなく、過去のシングル収録曲を全てまとめた形にしたんですか?
普通のベストアルバムだけは絶対に嫌だったもので(笑)。
──シングル曲やアルバムの中からライブの定番曲を選ぶのが嫌だったと?
はい。言葉は悪いけど、ベストアルバムって「バンドの墓場」的なイメージがあって。もちろん捉え方は人それぞれだと思うし、今までの曲からチョイスして「これを聴いたらライブも楽しめるよ」ってベストアルバムを作りたい人もいると思うんです。でも、LAST ALLIANCEの場合は4人とも同じ意見で、あんまりベストアルバムに対して前向きな気持ちはないんですね。
──なるほど。
このアルバムを出そうと思った理由のひとつはファンサービスです。初期のシングルは枚数限定でのリリースだったので、現在では手に入りにくくてオークションで高値が付いているものがあるって話をいろんな人から聞いていたので、だったら全部まとめて手に入ったらみんな喜ぶだろうなって。それと、アルバムから漏れたシングル収録曲の中にもいい曲はたくさんあって、ほかのアルバム曲と同じくらい力を注いだものがみんなに聴いてもらいにくい状況にあったので、こういう形でまとめたいと思ったんです。
──シングル8作品の全26曲が2枚のCDに完全収録されていますが、各ディスクの曲順は年代順というわけではないですね。
一応起承転結を考えて、このセットリストでライブをやったら面白いだろうなっていう曲順にしました。
──曲順によっては10年近く前に録音した曲と最近録音した曲が並んでますが、改めて聴き比べて違いは感じましたか?
違いはもう、声が若いとか多々ありますよ(笑)。あとは4月にこのアルバムのツアーがあるんですけど、ずっと演奏してなくて忘れちゃってる曲も多いので、そういう曲は新曲みたいな感じがして。少しずつ練習を始めてるんですけど、「昔は結構背伸びしてたな」って改めて思ったり(笑)。各パートで難しいプレイに挑戦していて、最近の楽曲よりライブを意識しないで作ってる感じがしましたね。
──むしろ最近のほうがライブに直結した曲作りをしてると?
そうですね。最近はライブでなるべくアルバムどおりに再現したいって気持ちが強いですし。あと、初期の頃の曲はトゲトゲしてるイメージがあって、最近の楽曲にあるしなやかさとは別の面白さがある。今回のアルバムの曲を今のラスアラで合わせてライブで披露したときの、お客さんの喜ぶ姿が想像できますね。
──ほかに何か気付いたことってありましたか?
僕らもリマスタリングをしてるときに気付いたんですけど、アルバムとテイクが違う曲がけっこうあるんです。最初は「懐かしいな」と思いながら聴いてたんですけど、途中で「あれ、これ歌い回しがアルバムと違うね」とか気付いて。そのへんもコアなファンには面白いんじゃないかな。
アコースティックアレンジはファンに対するサービス
──DISC 3「It's a emotional world」はこのアルバムのために新たにレコーディングされた楽曲で構成されています。「Keep on smashing blue,」「for staying real BLUE.」というアルバム2部作の後に発表される新作ということになりますが、次のモードに進む上で今回意識したことってありましたか?
僕が書いて歌ってる「a burning bullet」に関しては、ライブでそのまま再現できる曲っていうイメージがまずあって。曲自体に余裕を持たせたくて、いろいろ詰め込みすぎないように作ったかな。
──スタジオ録音ならではのエフェクトも、ところどころに取り入れられてますね。
ギターの佐野(sanoshingo Else)さんがけっこう果敢に挑戦していて。彼はいろいろ考えた上で、音楽的に攻めることでLAST ALLIANCEに順応してる気がします。
──新曲だけでなく、既発曲のアコースティックバージョンも収録されていますが、今回このような形でリアレンジしようと思ったのは?
挑戦という意味もありますけど、第一にファンに対するサービス精神ですね。前々作「Keep on smashing blue,」にはボーナストラックとして、既存の曲のボーカルパートを変えたバージョンを入れて。前作「for staying real BLUE.」では過去のデモテープに入ってた曲を追加収録しました。今回もボーナストラック的な意味合いが強くて、「アコースティックってやったことないし、やってみようか?」って流れで始めてみたんです。
──アレンジの際にはどういったことを意識しましたか?
ガチでアコースティックナンバーをやるなら、本当はもっとそれ用に曲を書いて、いろんなゲストを入れていろんな楽器も入れてみたいけど、今回は限られた時間の中でどれだけギターと歌だけで聴かせることができるかを考えました。
──元のメロディがしっかりしてるから、音数の少ないアコースティックアレンジでも存分に楽しめました。
僕の場合は2ビートの曲をやりたかったんですよ。2ビートの曲のテンポを落とすとこうなるんだよっていう。LAST ALLIANCEは2ビートの曲でも歌メロを大事にしてるし、そこを強くアピールしたかった気持ちもあります。メロコアバンドってみんな歌メロを大事にしてるし、そこにこだわりを持ってると思いますよ。
──原曲を知ってる人が聴いても新たな発見があると思うし、逆に今回のアコースティックバージョンから聴いた人は原曲を聴いたら驚くかもしれませんね。
このアコースティックバージョンを聴いて原曲が気になった人は、どんどん過去の作品をさかのぼって聴いてくれたらうれしいです。そういう意味では、今回のシングルコレクションアルバムは入門編的な作品になってほしいですね。
DISC 1収録曲
- LAST ALLIANCE
- 一刀旅団
- Drag On
- スロースターター
- MY IDEA
- Fry again, hero
- EQUAL REASON
- MABOROSHI MEMORY
- Sketch
- 夢想時代
- One Drop Of Tear
- 片膝の汚れ
- Melancholy
DISC 2収録曲
- TRUTH IN MY ARMS
- I.O.J.F.K
- ソリチュード
- astrogate-0
- HEKIREKI
- COLOR DESERT
- 羅針
- 疾走
- 真冬の蝉
- BOYS DON'T CRY
- 流星涙
- 蒼い銃創
- KONOYUBITOMARE
DISC 3収録曲 It's a emotional world
- a burning bullet
- Last Word
- HEKIREKI ~Acoustic ver.~
- WORLD IS MINE ~Acoustic ver.~
- NE(W)ROTIC WORLD ~Acoustic ver.~
LAST ALLIANCE(らすとあらいあんす)
2002年に結成されたANZAI(Vo, G)、MATSUMURA(Vo, B)、sanoshingo Else(G)、HIROSHI(Dr)からなるロックバンド。ANZAIとMATSUMURAのツインボーカルを活かしたエモーショナルな楽曲と、文学的でメッセージ性の強い歌詞が高い支持を集めている。精力的なライブ活動を経て、2003年6月に1stシングル「LAST ALLIANCE」をタワーレコード限定でリリース。続いて7月には1stアルバム「TEARS LIBRARY」を発表し、好セールスを記録する。また、自主企画イベント「UPRISING」や野外イベント「UPFIELD」も定期的に開催しており、毎回強力な出演者で話題となっている。さらに、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「京都大作戦」「PUNKSPRING」といった大型フェスにも出演。2007年からは活動の場をメジャーフィールドに移し、数々のシングルやアルバムをリリースしている。