ナタリー PowerPush - L'Arc-en-Ciel

20周年からさらに羽ばたく4年3カ月ぶり新作「BUTTERFLY」

ken インタビュー

音楽が出す空気感を感じて、楽しみたい

──今回のアルバムを作る上で、kenさん自身の中に大枠のコンセプトやテーマのようなものはあったんでしょうか?

ないですね。2011年の年始に「L'A HAPPY NEW YEAR!」というライヴをやったんだけど。久しぶりのステージで、その時点ではいまいち、ぼんやりしてたんですね。でも、5月に味の素スタジアムで「20th L'Anniversary LIVE」をやったときに「ああ、L'Arc-en-Cielをやっているんだ」って実感したんですよね。

──なるほど。

だから曲作りをしているときにも、次のアルバムのコンセプトがどうだからってデモを作っていたんじゃなくて、そのときに思っていたのは……「CHASE」のオフィシャルインタビューでも言ったと思うんですけど、音楽は音楽でしかないっていうか。音楽が出す空気感を感じて、楽しみたいなっていう気分だった。悲しくも楽しくも、具体的な言葉で表現できない感情を覚えるような音色……そういう曲を書きたいなと思っていたのかな。そういうふうに考えて曲は作っていたんです。アルバムトータルというよりも、シングルがいくつか出ているから、それがアルバムに入るだろうなと思っていたくらい。

音色として気持ちいいというものを作ろう

──アルバムの中でkenさんが作曲されている「wild flower」は、どのような作り方だったんですか?

「wild flower」はストリングスから始まるんですけど。そのストリングスか、グロッケンの音か、どっちかから作り始めて。この前奏は何も考えず……さっき言ったみたいに、これが悲しいのか楽しいのか、上がるのか下がるのか、それはわからないけれど、音色として気持ちいいというものを作ろうと。そこを作ったら次はこう、っていうのが出てくるから、それを1曲分作り続ける感じでしたね。

──「未来世界」も同じように作られたものなのでしょうか? 独特の空気感を持った楽曲ですが。

最初は、ギターもドラムもベースも入ってなかったのかな。曲の頭部分の感じが、最後までいくような。そこに何かを足しちゃったら、何かを連想させてしまうような気がして。何もない感じがいいなあと思っていたんですよね。そう思ってたら、デモ出しのときにhydeが「バンドで演奏できる形も聴いてみたい」って言って。「ああ、やっぱりそう?」と思って(笑)。それはそうだなっていう感じで、両方を兼ね備えたものにしようと。で、ドラムのパターンはユッキーがプリプロのときに叩いたのかな。ドラムパターンはそれを元にビルドアップして。ベースはアップライトで、ギターも最初の質感を最大限残せるというか、空気感をパワーアップできるものを入れてみたんです。普通のエレキベースを入れてみたら、その曲の空気感が一瞬にして壊れたのね。これはダメじゃんと。どうしようかなと考えて、アップライトにしたんです。

──kenさんの頭の中にある音が、そのまま具現化したと言えるのでしょうね。歌詞もその音に素晴らしくハマッていると感じました。hydeさんの歌詞に、じんわりとした独特の世界観がある。できあがった曲に、こういった歌詞が乗るっていうのは、kenさん自身、想像していたんでしょうか。

最初に歌詞を見たときにびっくりしましたね。なんでびっくりしたのかわからないけど、とにかくびっくりして。「wild flower」の歌詞もびっくりした。ものすごかった。「こんなふうな歌詞をはめようと思うけど、どう?」って、hydeがメールで送ってきたんですけど、もう「ばっちりです」って返信しました(笑)。

20周年の思いが入ったレコーディング

──ちなみに今回の「BUTTERFLY」は、「CHASE」で始まり「未来世界」で終わる、kenさんの曲で始まってkenさんの曲で終わるアルバムになっていますよね。

ああ。たまたまですね、それは(笑)。

──アルバムの曲出しでは、メンバーそれぞれがいろいろなデモを持ち寄るわけですよね。その瞬間というのは、20年という時間を経てもいまだにワクワクするというか、このアイデアは面白いな!と感じるものですか?

それはありますね。

──今回、特にワクワクした曲というのはありますか。

「X X X」はコーラスワークが新鮮だったから、すごい面白そうじゃない!って思ったし。ユッキーの「shade of season」は、デモにいろいろ音を足していったのがすごく面白かったですね。いろんな方向へアレンジできる幅があった曲だったんですよね。

──アルバムを作るにあたって、バンドの20周年だということは、念頭にあったんでしょうか?

曲作りをしているときは曲に向かっていたから、何も考えてなかったですね。さっき言った、味の素スタジアムでのライヴをやってから、20周年とかそういう思いが出てきたんですよね。レコーディングは味の素スタジアムのあとに行った曲も多いから、そういう思いがエキスとして入っていると思います。

──今回のアルバムは、約4年3カ月ぶりとか、結成20周年とか、シングル7曲収録とか、トピックがたくさんあると思うんです。でもお話をお伺いしていると、そういうことよりも、もっと素直に純粋にいい曲を追い求めた結果のアルバム、という感じなんですね。

そうですね。もし自分が味の素スタジアムライヴの後にデモを作り始めていたら、20周年感がデカかったかもしれないですけどね。

ニューアルバム「BUTTERFLY」 / 2012年2月8日発売 / Ki/oon Records

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CD収録曲
  1. CHASE
  2. X X X
  3. Bye Bye
  4. GOOD LUCK MY WAY -BUTTERFLY Ver.-
  5. BLESS
  6. shade of season
  7. DRINK IT DOWN
  8. wild flower
  9. SHINE
  10. NEXUS 4
  11. 未来世界
完全生産限定盤 CD収録曲
  1. 夏の憂鬱 [SEA IN BLOOD 2007]
  2. 花葬 平成十七年
  3. HEAVEN'S DRIVE 2005
  4. Round and Round 2005
  5. Dune 2008
  6. I Wish 2007
  7. Promised land 2005
  8. HONEY 2007
  9. Feeling Fine 2007
  10. ROUTE 666 -2010-
  11. milky way 2004
  12. metropolis 2011
完全生産限定盤 DVD収録内容
  • ベストヒットLEC
L'Arc-en-Ciel(らるくあんしえる)

1991年にtetsuya(B)を中心に大阪で結成。インディーズシーンで絶大な人気を得て、1994年7月にビデオシングル「眠りによせて」でメジャーデビューを果たす。その後多数のヒットシングルを連発。ハイクオリティなサウンドとキャッチーなメロディ、シングル3枚やアルバム2枚の同時リリースなどでも話題を集めた。近年は各メンバーのソロ活動と並行しつつ、海外でのライブも実施している。結成20周年を迎えた2011年は、味の素スタジアムでのアニバーサリーライブや全国アリーナツアー、さらにベストアルバム3作品やシングル3枚のリリースなど、華々しい活動を展開した。2012年2月、約4年3カ月ぶりとなるニューアルバム「BUTTERFLY」を発表する。