ナタリー PowerPush - LAMA
緻密なループがポップスへ変身 2ndアルバム制作秘話
次に出す音はこれしかない、という積み重ね
──牛尾さん、以前、ポップスって自分はやってこなかったし、どういうものかよくわからない、とおっしゃってましたね。わかりました?
牛尾 いや、わかりませんでした(笑)。
──「ポップスになるね」とナカコーさんはおっしゃいましたが、どういうものだと思ったんですか。
牛尾 うーん、どうでしょうねえ……言われてみれば確かにポップスなんですけど、なんでしょうそれは。単純に歌が入ってるものなのか。2人(ナカコーと牛尾)で最初にループ作ってるときに、これいいねって言ってるものって、例えばPANASONIC(フィンランドのエレクトロニカ系ユニット。極度に抽象的で鉱物的な音響ミニマル。のちにPAN SONICと改名し、2010年に解散)みたいなものだったりするから。それってポップスとは程遠いじゃないですか。サイン波がずっとずれてるだけの5分間を「いいねえ!」なんて言って作ってるんだから(笑)。そういうものをやってたから。
──そういうものを想定してたんですか?
ナカコー うん、そういうものにメロディが乗っかるんだけど、それもそこまで優しくないというか。
──そういう名残はちょっと残ってますね、後半のほうとか。
牛尾 僕の意識としては、さっきの「曲が長い」て話に通じるんですけど、詰将棋に近いっていうか。こうにしかならなかったんですよ、今回の作品は。次に出す音はこれしかない、という積み重ねで作ってるから。だから多分一音でも抜いたら成り立たないし。そういう風にやっていって、最終的に歌が入るとLAMAの音になる。
──それは面白いですね。すごく論理的に、理詰めに作っていった結果が、こういうポップなものになる。
牛尾 僕の意識はそうですね。メロディにしても、対位法じゃないですけど、カウンターパートで作っていくと、そこに一発音が入るかどうかという世界になってくる。そうなってくると、そこに行き着くしかなかったのかな、と。
──テクノを作ってる人ってそういう作り方する人が多いんじゃないですか。
牛尾 そうでしょうね。
──そこにポップスを感じたのはどうしてですか。
ナカコー いや、別にポップスを思ったわけじゃないんだけど(笑)、アブストラクトなものとか、カッコいいけどとがってるものをイメージしてたんだけど……音を足していくうちに何曲かはね、これにメロディ乗っけるのはむずい、というのはあったんだけど(笑)。
牛尾 あまつさえギターもか!って(笑)。そこで丸投げして(笑)。
ナカコー メロディを2人(ナカコーとフルカワ)で作ってるときに、ずっとループを流しながら、お互いが出すメロディを何度も聴いて……ここまで行くとちょっとヤバイけど、そこまでは行かないぐらいのメロディで成立してたっていうか。
──ヤバイって何が?
ナカコー なんか……難しい方向に行くぞっていう。その一歩手前の安心感を与えるようなメロディを出し合ってたから。
──ー話し合ってというよりは、阿吽の呼吸で?
ナカコー スタジオで、スピーカーから大きな音でループを出しながら、こうやって(耳元に囁くように)ちっちゃい声でメロディを言い合って(笑)。聴こえないから耳に近付いて「ええっ? ええっ?」って(笑)。そのメロディを録音して作っていく。最初の発端は、流れているものに対して反応して、即興的に付けていったものを、あとでパソコン上で構築していったりする。
フルカワ ループ作ってるときも、音素材を組み合わせて作り上げていく工程を共有しながら、種からできるところから聴いてて、それがガン決まりになる前にメロディを注入していく。いわばループを作ってるのと同じような感覚でメロを付けてる。最後の、音の差し引きをしながら曲を構成していく段階でメロを足したりコーラス足したりする。だから(メロディを作るのは)ループを作ったり音を組み立てている作業と似たような感覚なんです。楽器が違ってるだけっていう。
──鼻唄で感覚的にメロディをつけるんじゃなく、構築していく感覚。
フルカワ というのもあります。
──じゃあこの曲はミキさんでこの曲はナカコーくんと決まってるわけじゃなく、2人のメロディが混在して組み合わさっている。
フルカワ ブースに入って2人で作るんですけど、そのときどっちが主軸で歌うかは、あとから決めるのね。
ナカコー 曲によっては「今オレはこういうメロディを歌うから、それに対して、何かカウンターのメロディはない?」って投げかけて、この距離(隣に座っている、ぐらいの距離)でわーっとやりながら、それをスタジオに行ってわーっと録って。
──それでメロディまである程度構築したものを田渕さんに渡すわけですね。さっきミキさんが言った「ガン決まり」になる前に。
フルカワ 次の予測が簡単についてしまうような段階になる前に。こういうメロディが来たら、それに応じてほかの音も変わっていけるような、そういう柔軟性を残しておきたいのね。
ナカコー カチッとは決めてないですね。
- 2ndアルバム「Modanica」 / 2012年12月12日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3360円 / KSCL-2166~7
- 通常盤 [CD] / 3059円 / KSCL-2168
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CD収録曲
- For You, For Me
- White out
- Parallel Sign
- D.B.A.
- Domino
- Know Your Rights
- Strawberry Burn
- Dear
- In The Darkness
- So
- Life
- Namida no Umi
- And All
初回限定盤DVD収録内容
2012.04.21 LAMA 「Ki/oon 20 Years & Days」 LIVE at LIQUIDROOM ebisu
- Warning
- Spell
- Blind Mind
- Fantasy
- Dreamin'
ライブ情報
Modanica Tour
- 2013年1月27日(日)
- 大阪府 心斎橋JANUS
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2013年2月2日(土)
- 東京都 WWW
OPEN 18:00 / START 19:00
LAMA(らま)
ナカコー(Vo, G)、フルカワミキ(Vo, B)、田渕ひさ子(G)、牛尾憲輔(Programming)の4人からなるロックバンド。2010年12月結成。2011年4月、東京・WWWでKIMONOSと対バンを実施。これがお披露目ライブとなる。この模様はライブストリーミングチャンネル・DOMMUNEにて生中継され、約8万人が視聴した。同年8月に1stシングル「Spell」を、11月に1stアルバム「New!」をリリース。2012年夏には全国各地の夏フェスやイベントに出演し、その音楽を幅広い層にアピールした。2012年12月、約1年ぶりのオリジナルフルアルバム「Modanica」をリリースした。