今回は田渕アルバムなんです（笑）

──田渕さんはギターを加えるときにどんなことを考えてたんですか。

田渕　うーん……うーん……この曲を自分なりにどう理解するか、何をすればいいか。どこにギターを入れるか、どんな形で入れるか。自分はすぐ縦の線を付けようとしてしまうので……。

──縦の線？

田渕　区切りを付けようとする。だから同じフレーズを繰り返さないで場面を変えちゃうんですよ。

──同じフレーズをループするように延々と繰り返して弾くようなことは、あまりやったことがない。

田渕　あんまりやったことがない。どうしても場面展開を考えちゃうんですよ。だから聴いた曲に対してどれぐらい縦の線を付けるか。どんな音にするか、どんなフレーズをどこに入れるか。ほんとにゼロから考えるような作業だった。

──完全におまかせだったんですか。

田渕　そうですねえ。ここに入れてほしいとか、こういうことをやってほしいとか、言われたことはない……ですね。ドーンと来ます、ハイ。

──ちょっとはなんか言ってくれよ、とか思わなかったですか。

田渕　あははははっ！（笑）

牛尾　なぜなら、僕たちもどうしていいかわからなかったからです（笑）。「どうしたらいいんだろうコレ？」「田渕さんがなんとかしてくれるだろう」って。

──丸投げだったわけですね（笑）。

牛尾　だから今回は田渕アルバムなんです（笑）。

田渕　まあ言われたほうがいいのか言われないほうがいいのかは……わかんないですね。言われると頭が固まってしまうかもしれないし。

作り出してすぐ「あ、ポップスになるね」

──渡されたデモがどんな状態なのかわかりませんが、普通のギターバンドみたいに、ギターが鳴ってないと曲にならない、ってわけじゃないですよね。

田渕　そうなんですよねえ。

──そこにあえてギターを乗せるのは、新しい色を加えることだし、元の色を変えてしまうかもしれない。

田渕　そうなんですよー結構大変なんですよー。でも前のアルバムのときもそうでしたけど、結構楽しいんですよそういう作業。やりがいもあるし。自分が乗せた後も、みんなすごくよくギターを聴いてくれて、ここはいらないとかここに足すとか、みんなで考えてくれるので、それも楽しい。

──ギターは素材のひとつ、という感じですか。

田渕　曲によりますね。素材のひとつのときもあるし、曲の流れの中で自分なりに物語をつける場合もあるし。

──なるほど、あと気付いたんですけど、今回は全体に曲が長いですよね。

ナカコー　うん。

──前は3分台の曲が大半だったけど、今回はほとんど4分以上ある。

ナカコー　うん。今回はループで制作してるから。聴かせどころはちょっとした変化も聴かせたいし、そのために小節数もとっちゃうから。

──なるほど。この微細な変化をちゃんと聴かせるためには、これだけループがリフレインして、これだけの時間が必要である、と。

ナカコー　微細な変化を見せるとなると、どうしても長くなっちゃいますよね。

──その変化って、例えばどういうことですか。

ナカコー　いや本当にちょっとした……ハットが1個増えたり、シンベと生ベースが少しタームの違うラインを追って、聴感上ちょっと分厚くなってフェーズがかかるとか、そういう細かい変化。よく聴くとわかる、という程度の。でも今回はそういうものを聴かせたかったんです。

──それはダンスミュージックの気持ちよさと通じますね。

ナカコー　そう。ミニマルなダンスミュージックでよくやりますね。

──それと、歌の入ったポップソングであることの両立もひとつのテーマじゃないかと思いますが。

ナカコー　いや、最初はそのポップスの部分は度外視してて。もっとマニアックというか、ポップに寄らなくてもいいと思ってて。

──あ、そうなんですか。

ナカコー　と思って最初は作ってたんだけど。でも作り出してわりとすぐの段階で、「あ、ポップスになるね」って思った。フフフ（笑）。

──ポップスにしたい、じゃなくて？

ナカコー　したい、とかじゃなくて。なったから。いいじゃないかと。