ナタリー PowerPush - la la larks
清く正しく“部活ノリ” プロ集団の新境地
プロセスと結果が見える活動
──la la larksの結成は2012年で、1stシングルのリリースまで2年近くのスパンがあります。その間、ライブ活動やFM局の番組への出演、クラウドファンディングでのCD制作など、普通のCDリリース以外の手法でリスナーに音を届けてきました。そこに何かこだわりはあるのでしょうか?
内村 バンドを結成して、すぐにCDを作ろうって感じじゃなかったから。ちゃんと普通に曲ができて、披露する場所があって、その場所に人が入りきらなくなったら大きくしようみたいな。それだけを普通に考えてやってた。「CDにして聴きたい」って声が大きくなったら作ろうかっていう思いでいました。そうした活動の中で、AZUMA HITOMIちゃんのアルバムへのリミックス参加だったり。
江口 栗山千明さんに対する楽曲提供だったり。
内村 ありがたいことに人のつながりでこういうお仕事をいただくことが多かったので。その都度その都度、それに対して応える形で活動をしていたんです。FM局で流してもらってたデモ音源もラジオにかけてもらうために作ったわけではなくて。単純にいずれ来るレコーディングのために1回プリプロした音源をライブのチケットの特典で付けてた。
江口 500円、チケット代を上げたくて(笑)。
内村 チケットを手売りで販売するときにCDを付けていたんです。FM局で流れるきっかけになったのは、昔レギュラーをやらせてもらってたときのラジオのディレクターさんとバッタリ会ったときに、私たちが無所属なことも全然気にしないで「ゲストで出てよ」って言ってくれて。そのとき、かける曲がないからデモをお渡ししたんです。そうしたら番組だけじゃなくてJ-WAVE全体でかけてくれたっていう流れがあるんです。1段ずつ、プロセスとその結果が見える活動が今はできている。それが今のバンドのすごく気に入っているところです。
捨てたいけど捨てられないものがエゴイズム
──今回、アニメ「M3-ソノ黒キ鋼-」のエンディングテーマとして制作された楽曲が1stシングルとしてリリースされます。アニメタイアップのきっかけはなんだったのでしょうか?
江口 去年の末に坂本真綾さんとthe band apartが一緒にやったとき(参照:坂本真綾「SAVED. / Be mine!」特集 坂本真綾×the band apart(原昌和&木暮栄一)対談)に手伝わせてもらって。以前からいろいろとご一緒させてもらっていたそのディレクターさんから「今度こういうアニメがあるんだけど、エントリーする?」って言われ「する!」って返事して決まりました。それが12月末の話です。正月休み返上で曲を書き、デモを作り……みたいな。
──アニメの制作サイドからはどのような発注があったんですか?
内村 最初に台本をいただきました。それを私が読んで、こんなふうなアニメですって江口さんに伝えて。
江口 内村から聞いたキーワードの中に「運命を背負う」というのがあって。
──その「運命を背負う」というキーワードが、どう「ego-izm」につながったんでしょうか?
内村 エゴイズムって要は“自分の気持ち優先”ってことじゃないですか。でも運命は時に自分の気持ちとは違ったものだったりする。それがトラウマであろうが、絶対自分が譲れないことであろうが、運命を背負っていくために邪魔するもの、捨てなければならないものがエゴイズムだなって思ったんです。歌詞の中に入れたのはそういう感情からですね。
──“捨てなければならないもの”なんですね。
内村 捨てたいけど捨てられないものがエゴイズム、みたいな。
江口 彼女自体も休みたいと思ったのに休ませてもらえない。そのとき捨てなきゃいけないのは、休みたいと思うエゴイズム(笑)。そういう運命を背負わなきゃいけないと思ったときに、人は変わっていくと。そう思っています。
一番すごいのは2番のB
──以前ナタリーでのインタビューで内村さんは「アニメのエンディングは89秒のドラマだ」とおっしゃっていました(参照:School Food Punishment「Prog-Roid」特集)。もともとこの言葉は江口さんに言われたものだとも語られていましたが、今回89秒のドラマとしての仕掛けは何かあるんですか?
江口 まず頭サビじゃないこと。それと珍しく2回サビが来るっていうところですね。だいたいアニメソングって頭サビのほうが作りやすいんですよ。でも「M3-ソノ黒キ鋼-」っていうアニメがホラーテイストの強い作品で不穏な雰囲気のままエンディングに突入するってことがわかっていたので、頭サビじゃねえなーと思って。ピアノのリフで不穏に入っています。
──じわじわ盛り上がっていってドラムやキーボード、ストリングスの音が重なり、最後は前向きな雰囲気で終わるというのもこの曲の特徴ですね。
江口 音が厚みを増してくるとやっぱりバンドっぽくていいですよね。今回は最初からアニメのエンディングの尺で作った曲なので、その中でやれる最大限の工夫をしようと思っていました。
内村 起承転結とか、エンディングの尺で作っているので実は89秒ですべてが完成しているんです。これをフル尺にするときにただ繰り返すとアニメの尺でよかったと思われてしまうので、89秒で充分満足できるものを作ってからのフル尺っていうのが大変でした。
江口 フル尺の中で一番すごいのは2番のBなんですよ。ここでいきなり3拍子になる。アニメサイズのデモを作ったあとに、ざっくり切り貼りして繰り返しを作ってみるんです。で、聴いてみると、やっぱ飽きるわーと思う。だいたい2番のAとかのリズムを変えたり、尺を詰めたりとかをやってくんですが、今回は何かこのままだとダメな気がして。そんなとき、ん? ちょっと待てよ、これイケるかも!と閃いて、急に拍が変わるっていう技が繰り出されてるんです。
──ではアニメしか観てないリスナーは……。
江口 フル尺を聴け!と。アニメのオープニングって明快な楽曲が好まれるんですが、それに比べてエンディングには自由というか遊びの部分があると思っていて。アニメでオンエアされる尺には入らなかったけど、Bメロの拍が変わるとかの要素をフル尺で入れられたのは面白かったですね。
- 1stシングル「ego-izm」/ 2014年6月4日発売 / FlyingDog / VTCL-35183
- [CD] 1404円 / VTCL-35183
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収録曲
- ego-izm[作詞・作曲・編曲:la la larks / ストリングス編曲:江口亮、石塚徹]
- end of refrain[作詞・作曲・編曲:la la larks]
- earworm[作詞・作曲・編曲:la la larks]
- ego-izm(Instrumental)
- end of refrain(Instrumental)
la la larks(ラララークス)
内村友美(Vo / ex. School Food Punishment)、江口亮(Key / Stereo Fabrication of Youth、MIM)、三井律郎(G / THE YOUTH、LOST IN TIME)、クボタケイスケ(B / sads)、ターキー(Dr / ex. GO!GO!7188)からなる5人組バンド。2012年に結成。定期的なライブ活動を通じて着実に知名度を上げていく。2013年には栗山千明に楽曲「0」を提供。またAZUMA HITOMIの1stアルバム「フォトン」にはリミックスアーティストとして参加している。2014年1月、デモ音源でのオンエアにも関わらずJ-WAVE TOKIO HOT 100で「さよならワルツ」が22位にチャートイン。J-WAVEの番組「TOKYO REAL-EYES」では番組とのコラボ企画として新曲を制作し、2014年4月にはクラウドファンディングの出資者向けにCD「28時」をリリースした。同年6月、1stシングル「ego-izm」を発表する。