LAID BACK OCEANの1つの到達点
──ここからは「色+色」について伺います。フルアルバムを1枚しか出していないバンドが2枚組全30曲の作品をリリースするという。
計算が合わないですよね(笑)。
──流通作品のみならず、現在は手に入らない「RE:SOUZOU PROJECT」の作品からも収録していて、まさにオールキャリアベストな内容ですね。
すべての歴史を総括して、新しく録り直した曲も入れて、「これが今のLAID BACK OCEANだ」というモノを示したかった。構成と曲順はホントに悩んだけど、これがすべてですね。
──今回、DISC 1は熱量があってメッセージ性の強い曲がそろった赤盤、DISC 2はピアノの静謐な響きが味わえる曲がそろった青盤という構成になっています。
LAID BACK OCEANは、タイトルの「色+色」の通り、いろんなことをやってるんですけど、大きく分けると赤を想像する瞬間、青を想像する瞬間があって。ビートで分けるアイデアも最初はあったけど、なんか違うかなと考えていたとき、SYUTOがこういう分け方を提示してくれたんです。
──確かに、赤盤の1曲目「Mr. Good Morning」、青盤の1曲目「カップラーメンジェネレーション」はどちらも激しいロックナンバーですけど、曲が纏っているムードが違いますね。
そうなんですよ。だから、激しいという観点でその2曲を並べるのはちょっと嫌だったりもして。
──LAID BACK OCEANは突飛な活動が注目されがちですけど、ずっと音楽と向き合って、曲を発表し続けてきたんだなと感じました。
やっぱり、「何をやってるんだ?」と思われることもあるんだろうけど、めちゃめちゃ追求して音楽やってるし。それは胸を張って言えることですね。
──作品それぞれに意味があるから、収録される曲もふさわしい居場所がある。こうやってバンドの歴史がすべてわかる作品を手に取ってもらえれば、そこが伝わると思いますよ。
そういう10年だったし、そこを感じてもらえたらうれしいですね。いい音楽をやって、それが多くの人に届いてほしいという思いが大前提としてあって。でも、それがみんなと同じようなやり方じゃ嫌だ、という話の順序ですから。
──このベスト盤はいわゆるキラーチューンや代表曲をバーっと並べたような作りではなくて、いい起伏や抑揚がありますよね。
もう、これしかないと思ってますよ。めちゃめちゃ時間がかかったけど、曲順も考えられるすべてのパターンを試したし。過去の作品を寄せ集めて出しましたみたいなベストアルバムではないですね。
──曲順でいえば、赤盤の1曲目となった「Mr. Good Morning」はコロナ禍の空気をぶち破るような力がみなぎっていて。この時期に発表する作品の1曲目にものすごくふさわしいなと感じたんです。
さっきも話したように、この曲はLAID BACK OCEANの1つの到達点と言えるような曲だから、1曲目にするというのは決まってたんですけど、今の空気だと確かにそういう聴こえ方もしますよね。実際、赤盤の2曲目を未来へ進む「Embark」にしたのは、そこから何をつないでいくのか、という気持ちがあったからだし。
真空パックされたあのときの気持ち
──歌詞を改めて読んでいくと、暗闇の中で光を見出したり、新たな息吹を吹き込むようなメッセージが多いですよね。LAID BACK OCEANの成り立ちもそういったところがありますし、バンドのテーマとして持っている部分なんでしょうか?
なくしてしまったモノからどう回帰するか、どうやって立ち上がるのか。それはLAID BACK OCEANのテーマとしてありますね。それをやってきた10年だったから、今の状況と合わさるところはきっとあるし。青盤の締めくくりとなった「pray_music」は東日本大震災のときにTwitterだけで発表した曲なんですけど、あのときと今がリンクしているような状況だから、そういう意味でも震災から10年経った2021年に出してしかるべき作品になったと思います。
──今回、半分ぐらいの曲が新録もしくはリミックスされています。年数が経った曲と向き合って、気付いたことやアップデートできたと実感したところはありますか?
「こんな僕らが戦うべきもの」は、ゼリ→が解散してからほぼ最初にできた曲なんです。そこから10年経って、改めて「戦うべきものはなんなのか?」と歌ったとき、ちゃんとつながっていることを感じて。SEIJI(Dr)くんも「今のYAFUMIが歌っているのに、あのときの気持ちが真空パックされて、今でもフレッシュに鳴り響いてることにグッとくるよ」と言ってくれたんです。それ以外でも、録り直した曲すべてにそれは感じることができたから、ブレることなく、筋を通してやってこれたなと実感しましたね。ずっと応援してくれているファンのおかげでもあるし、自分たちを褒めてあげてもいいんじゃないのかな、って。
──そのままの形で収録された曲もありますが、新録やリミックスをしなかった曲との境目は?
大まかにいえば、そのままの状態を許せるかどうか。あとは、「サーチライト」みたく大幅にライブアレンジが変わっていると、それは自分たちで聴いても気持ち悪かったりするから、録り直して。特別感を出すために録り直したようなことはなくて、それぞれなんらかの理由がありますね。とは言え新録していない曲もバンドの歴史だし、オレたちらしいんじゃないのかなと。KYOHEIにデザインを頼むこともそうだったりするけど。
──すべては地続きであるし、過去を否定するようなことはしない、と。
そうですね。あと、「RE:SOUZOU PROJECT」で募集したメンバーもまだまだいますから(笑)。
──バンドメンバーを999人にするという企画「#LBO999」ですね(参照:LAID BACK OCEAN: #LBO999)。現在、メンバーは999人になったんですか?
いや、これがまた難しいところで。999人なんてすぐ集まるかなと考えてたけど、好きがゆえに入りたくないという人もたくさんいて。途中で止まってるんですけど、それでもLAID BACK OCEANにはあと600人ぐらいのメンバーがいますね(笑)。
──ということは、今も募集は……?
してます。出入り自由だし、バンドを脱退したぐらいじゃメンバーでなくなるようなことはないし(笑)。
ロックバンドや音楽家の在り方
──新曲「COLOR COLOR」についても話を聞かせてください。「Embark」、「PATIENT CITY」、「Beginners」といった2020年に発表した「RE:SOUZOU PROJECT」の曲たちは赤盤に収録されていることもあり、新曲はノリのいいモノが出てくるんじゃないかと予想していたんですが、ガッツリと聴かせるバラードでした。
確かに、1曲ぐらい真新しい曲を入れたいなと思って作り始めたときは激しい曲だったりもして。ただ、なんか違うなと感じていろいろとやっていくうちに、今の温度感に合うのはこの曲かな、と。原曲自体はだいぶ前からあって、ライブでも1回やってるんですよ。
──歌詞もベスト盤のタイトル「色+色」とリンクしてますが、そういうふうに仕上げたんですか?
曲のタイトル自体はもともと「COLOR COLOR」で、歌詞は手直しはしたものの、題材としては一緒ですね。ベスト盤の最後のパーツとして新曲をはめ込もうとしたとき、ノリのいい曲ではなく、すでにポケットに入ってた「COLOR COLOR」がふさわしかったという。
──バラードはそういうモードに切り替えて書いていくんですか?
LAID BACK OCEANはピアノがあるから、ともすればそっちに近寄ってしまうところがあるけど、今はいい意味でフラットに制作できている気がしますね。無観客で配信ライブをする機会が多くなって、お客さんを盛り上げるというところではなく、何を伝えたいのか、どう響かせたいのか、というところにフォーカスできてるから。
──ライブの現場がないと、自分たち自身と向き合うしかないですしね。
そうですね。だから、今後のロックバンドや音楽家の在り方として、マネタイズとは別なところで、いかに純度が高いモノを生み出していくのか。そして、それが広がっていくという形になるんじゃないかな。
──10周年イヤーの始まりとしてベスト盤が世に出て、2月にはオンラインライブが予定されています。映像のディレクションを元メンバーであるYUTAROさんが手がけるというのはホントに驚きました。
まあ、そうですよね(笑)。YUTAROは今、映像ディレクターとして特化した活動もしていて、めちゃめちゃいろんなアーティストを撮ってるんですよ。
──元メンバーだからこそ、ほかの映像ディレクターとは違う角度からの考えもあるでしょうし。
「この曲はここだよね!」みたく、セットリストを並べただけで意図が伝わるし、熱量が最初から高い。脱退したYUTAROが「このバンド、売れるっしょ!」と言っているのもうれしいですね(笑)。
──ハハハハ(笑)。そうなると、普通とはまた違ったオンラインライブになりますね。
今回は事前収録の形にして、ただただ演奏してるだけじゃない、1曲1曲を作り込んで届けるようなモノにする予定です。もちろん、生配信のライブもいいんですけど、ライブを1つの作品として考えてみようと。だから、ベストアルバムをリリースしたあとに俺たちが何を提示するのか、というふうに捉えてもらいたいですね。
──その後については、何か考えていますか?
本来ならばツアーをやりたいところなんですけど、現状を踏まえて、LAID BACK OCEANらしく何かを見出して進んでいこうかなと考えています。ホントに世界がどうなるかわからないけど、モチベーションはまったく下がってないし、バンドとして生きていくうえでさまざまな方法論がある中で、俺たちは音楽で何かできるのか、表現者としてどうあるべきか。それを純度高く追求していくだけだろうし。
──もともと、LAID BACK OCEANは何をするのか想像もつかないバンドですし、そのときどきにマッチしたアプローチをしていきそうな予感がします。
突拍子もないバンドなんで、そういうふうに考えてもらって、俺たちから何が生み出されるのか。みんな、それぞれいろんなことがあるだろうけど、一緒に生きてみていってほしいなと思ってます。
ライブ情報
- 10th Anniversary Streaming Live "COLOR COLOR"
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配信日:2021年2月6日(土)20:00~