ナタリー PowerPush - LAGITAGIDA
オータケコーハン&あら恋・池永 インストロックの快楽を語る
インストギターロックバンド・LAGITAGIDAがアルバム「TUTELA!!」をリリースした。
「TUTELA!!」はLAGITAGIDAの1stフルアルバム。メンバーがそれぞれの持つ圧倒的なテクニックと壮絶なテンションを武器に、プログレッシブロックやアバンギャルドの影響下にある、複雑かつ変態的な楽曲群をときにシリアスに、ときにユーモラスに弾きまくり、叩きまくる1枚を作り上げている。
今回ナタリーではアルバムリリースを記念してLAGITAGIDAのオータケコーハン(G)と、オータケをサポートメンバーに迎えている、あらかじめ決められた恋人たちへの池永正二(鍵盤ハーモニカ、Track)の対談を実施。2人の出会いや、オータケのあら恋評と池永のLAGITAGIDA評、インストロックバンドとしての矜持についてなど、幅広い話を聞いた。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 小原啓樹
きっかけは「COOKIE SCENE」
──そもそもお2人の出会いって?
池永正二 ちゃんと出会ったのは2~3年前あたり?
オータケコーハン ですね。ただ、あら恋の名前を最初に認識したのは8~9年前くらい。「COOKIE SCENE」(音楽誌)に、なんか「関西の超絶ピアニカ奏者」みたいな紹介記事が載っていて。「超絶」って言葉が気になったんで、実際に聴いてみたら確かに面白かったんですよ。で、そのあとLAGITAGIDAの前身バンドのマヒルノをやっていた頃にはあら恋と対バンする機会とかもあったし、さらに共通の知り合いがいたりもして。当時池永さん、ギターを探してたんですよね?
池永 そう。ウチの前のアルバム「CALLING」(2011年5月リリース)にギターを入れたいなと思ってたときに、その知り合いから「ちょうどいい変態がいるよ」って聞いて(笑)。「マジっスか?」って紹介してもらって。で、その1週間くらいあとには「ラセン」っていう曲を一緒に録ってました。
オータケ だからオレ、デモとかもらってなかったですもん。
池永 確かに曲渡してない(笑)。とりあえずスタジオに来てもらって、作ってあったオケを聴かせて。あとはそれをループさせながら「ここで弾いて」って言って、テロテロテローって弾いてもらってましたね。
オータケ ただ池永さんの注文って難しいんですよ。すごくモヤっとしてる(笑)。
池永 「もっとあきらめて!」とか「もっと夢のある感じで」とかね(笑)。あとは「ウッドストックの泥とゴミだらけの中、疲れてとぼとぼ歩く人を前に演奏するジミヘンの轟音みたいな、季節が終わっていく感じのソロで!」とか。でもオータケくんはちゃんとその要求に応えてくれるんですよ。
オータケ 正直、半分以上わかってないですけどね(笑)。それでまあ「CALLING」のレコーディング後もライブにちょいちょい参加させてもらうようになったって感じですね。
池永 そうやね。でも「COOKIE SCENE」かあ。いい雑誌だったもんね。
オータケ ええ。当時は音楽の情報源っていったら雑誌。ネットよりも紙が強かった上に「COOKIE SCENE」って自分の好きなアンダーグラウンドなバンドの情報が載ってたし、そのバンドのCDも付いてたし。
「4×6っていくつでしたっけ?」「24! 24!」
──オータケさんが2000年代初頭のアンダーグラウンド系、オルタナティブ系のロックを好きで聴いていたのはちょっと意外な気もします。オータケさんのギターって、それこそ「COOKIE SCENE」のあら恋の記事じゃないけど超絶的。すごくテクニカルだし、LAGITAGIDAのアレンジは変拍子バリバリですよね。どちらかというと音楽理論を修めたようなタイプの人なのかなって思ってましたから。
池永 そうですか? この人、音楽理論がわかっているようで……。
オータケ ゼロだよ、ゼロ(笑)。
池永 この前、ウチのアルバムのレコーディングに参加してもらったとき「4小節が6回しで1ブロックね」って話をしたら、その6回しを全部9連符で構成したかったらしくて。で、4小節6回しには9連符が何個入るのか計算しようとしてたんですけど、突然「4×6っていくつでしたっけ?」って。あれはビックリした。「24! 24!」って(笑)。
オータケ だから音楽理論云々以前の問題なんです(笑)。
池永 アカデミックではないどころか、九九ができない(笑)。でも確かに、アカデミックではないのに、こんなに弾けるっていうのは面白いですよね。理論じゃないからこその突破感というか、大きさというか。
オータケ 理論的なことはまったく学んでないし、まったく知らないんだけど、その「COOKIE SCENE」的なアンダーグラウンド系だけじゃなくて、いろんな音楽を聴いたりコピーしたりはしていて。そういうことを中学生の頃から続けているうちに、今のプレイスタイルが身に付いたって感じなんでしょうね。
- LAGITAGIDA 1stアルバム「TUTELA!!」 / 2013年7月3日発売 / 2300円 / levitation / LEVT-001
- LAGITAGIDA 1stアルバム「TUTELA!!」
収録曲
- Incident On The Moon
- TUTELA!!
- Sufferers
- Drastica
- Surplus Population
- Fooneral
- Sensya
- Terrible Boy
- Copeten
- Spiral Nebula
- あらかじめ決められた恋人たちへ ニューアルバム「DOCUMENT」 / 2013年9月11日発売 / 2600円 / KI-NO Sound Records / KI-NO 001
- ★あらかじめ決められた恋人たちへ ニューアルバム「DOCUMENT」
収録曲
- カナタ
- Res
- Conflict
- へヴン
- クロ
- テン
- days
- Fly
LAGITAGIDA(らぎたぎだ)
オータケコーハン(G)、コーノタケヒト(B)、A(Dr)によって2010年4月に結成されたインストロックバンド。2011年4月に1stミニアルバム「CaterpiRhythm」をリリースすると、演奏テクニックを全面に押し出したスリリングなサウンドや激しいライブパフォーマンスが話題となる。2012年1月に2ndミニアルバム「CartaMarina」を発表。3月にはアメリカで開催された世界最大の音楽コンベンション「SXSW」に出演し、帰国後は東京や関西を中心にライブを実施した。その後約1年間の制作期間を経て、2013年7月に1stフルアルバム「TUTELA!!」をリリース。現在ではサポートにkAoru ikArAshi(Key)を加えた4人で活動している。
あらかじめ決められた恋人たちへ
(あらかじめきめられたこいびとたちへ)
ピアニカ奏者兼トラックメイカーの池永正二を中心に結成された叙情派エレクトロダブユニット。2003年に初のフルアルバム「釘」を発表して以降、2005年に「ブレ」、2008年に「カラ」、2009年にライブレコーディングした音源を編集したアルバム「ラッシュ」とリリースを続け、エッジの効いたエレクトロニカサウンドに、ピアニカの叙情的な音色を重ね唯一無比の世界観を表現した。また2011年にバンドレコーディング作品「CALLING」、2013年に2曲30分からなるコンセプトミニアルバム「今日」など、チャレンジングな内容の作品を続々発表。バンドの活動のほかにも、リミックス提供や映画 / 劇中音楽の制作などで高い評価を得ている。