単にきれいな声で滑舌よくしゃべればいいってことじゃない(浪川)
矢内 僭越ながら、私は声優さんのセリフ収録のディレクションもさせていただいてるんですけど、浪川さんって、例えば「くっ!」みたいな1音か2音しかない言葉を、自ら「すみません、もう1回いいですか?」って何度も録り直されてるんですよ。普段ならどんなセリフだって一発でOKテイクが録れる方なのに。
浪川 急に褒め出した(笑)。
矢内 いやいや(笑)。それによって私たちも各シーンがより鮮明になったし「浪川さんはそう来たか。じゃあどんな音を当てようか?」ってコントロールルームで勝手に盛り上がってて。
浪川 今日、別の現場でちょうど似たような話をしてたんですけど、アニメの世界でも音響効果さんっていう、文字通り効果音を作ってくださる方がいらっしゃいます。アニメの制作では、まだ絵も線もない状態で「とりあえずこんな感じで」って効果さんに依頼することもあるんですけど、効果さんもプロフェッショナルで、アーティストだから、情報がないのに「とりあえず」では付けられないって。それを今の収録の話につなげると、僕の演技が、あとからBGMを付けてくれる人にとっての情報の1つになればいいのかなっていう。
矢内 すばらしい。
浪川 だから単に綺麗な声を出せばいい、滑舌よくしゃべればいいっていうことじゃないと思うんですよ。気持ちを重視した分、滑舌が犠牲になることもあるんですけど、仮にセリフが聞き取りづらくなってしまっても、そこは音楽がフォローしてくれたりとか。あとね、音のプロの人たちが集まってたからか、なんか研ぎ澄まされてるなって感じてました。
自分が頭の中に思い描いたことを忠実に再現したいとは思ってない(矢内)
矢内 「ラファンドール」の脚本は、「ファイナルファンタジー」シリーズや「キングダム ハーツ」シリーズを手がけられた野島一成さんに書いていただいてるんですけど、先日その野島さんが「『ラファンドール』はいまだかつてないくらいト書きが少ない」っておっしゃってたんです。要は、普通だったら「微笑みながら」とか「ふと後ろを振り返って」とか、セリフの間にキャラクターの動きや表情を説明したりする文章が入るんですけど、「ラファンドール」の脚本にはそれがほとんどないと。
浪川 それは面白いですね。
矢内 なんでト書きが少ないかお聞きしたら「矢内さんは演者さんとよく話し合うって聞いてるし、自分で音も付けるんだから、きっと自分たちでどうにかするだろう」って。私は一般的な脚本をあまり見たことがないので、ト書きが多いか少ないかなんてわからなかったんですけど。
浪川 実際、すっごい細かいですよ、矢内さんのディレクション。もうね、熱意がすごすぎて、そのうちトークバック(スタジオ内で音響スタッフがいるコントロールルームから声優がいる収録ブースへ指示を出すこと)じゃなくてブースの扉を開け乗り込んでくるんじゃないかっていうくらい(笑)。
矢内 申し訳ない(笑)。
浪川 いや、むしろありがたかったですよ。僕はわりとニュートラルな状態で収録に臨むほうなんですけど、矢内さん側にちゃんと指針があるので、「それに応えるためには……」って考えやすい。逆にあまりにも指示ないとつい面白おかしくしちゃうんですよ。で、結果的にNGをもらう(笑)。
矢内 私は原作者なので、キャラクターについて知り尽くしているはずなんですけど、収録したあとに各キャラの別の側面が見えてきたりするんですね。でもそれってすごく大事なことで、私は自分1人で全部決めて、自分が頭の中に思い描いたことを忠実に再現したいとは思ってないんです。脚本の野島さんやサウンドプロデューサーの近谷直之さんをはじめ、作品に関わってくださるクリエイターさんもいろんな提案をしてくださるので、それを「そういう考え方もあるのか」と受け止めつつ、その都度「じゃあ『ラファンドール』って何を伝えたいんだっけ?」と原点に立ち戻って作品を練り直すこともしているので。
演技のために身近な人をサンプルにして、語り口を日頃からストックしてる(浪川)
──浪川さんが演じるブライは「傭兵部隊アロンディアスの若き隊長」で「冷静で決して明るい性格というわけではないが、仲間思いで信念の強い熱い青年」です。
浪川 もうね、めちゃくちゃ難しいです(笑)。「冷静」だけど「熱い」って、言葉にすると簡単だけど、よくよく考えると混乱しますよ。だから「知り合いに似たような人いないかな?」って。例えば物静かなんだけど妙に言葉に圧がある人とか、そういう人の語り口を日頃からストックしておいて。
矢内 へええー。
浪川 「傭兵団の隊長」だったら「部下のいる責任ある立場の人って、自分の周りだと誰かな?」って、やっぱり身近な人をサンプルにしたりして。それらを必要に応じて自分の引き出しから取り出して、もちろん猿真似じゃなくて声優・浪川大輔というフィルターを通して、徐々にブライという人間を構築していった感じですね。
──では矢内さんにお聞きします。ずばり、ブライに浪川さんをキャスティングした理由は?
浪川 それ本人の前で聞いちゃうの? ドキドキするじゃないですかー(笑)。
矢内 まず、ブライってすごくカッコいいキャラなんです。ただ、それって単純にイケメンだとかそういう意味のカッコよさではなく、「人としてカッコいいとはこういうことだ」みたいなカッコよさ。それを表現できる声を持つ声優さんは誰かと考えたら、浪川さんしかいなかった。
浪川 もう、押しつぶされそうな気分です。
矢内 いやホントですって(笑)。あと私は曲を作るとき、自分の頭の中で音楽が鳴ってるんですけど、同時に「この音はピアノだよな」みたいに、使う楽器も想像するんです。それと同じで、頭の中でこのブライというキャラをしゃべらせたら、浪川さんの声でしゃべりだした、みたいな。
浪川 ありがとうございます!
矢内 こちらこそですよ!
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若い子に「声優は想像力と瞬発力だ」ってよく言うんです(浪川)
- 「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」
- 2017年12月6日発売 / Warner Music Japan
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[CD2枚組]
3240円 / WPCL-12814~5
- DISC 1 収録曲
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- 約束
- 囚われた光[リエン・マキュール(CV:花江夏樹)]
- ひとつだけ
- 満月の夜のこと[トレスタ・マキュール(CV:日岡なつみ)]
- 魔法の鍵
- 霧の世界
- 名もなき少年
- Deep Down
- 愛しい人よ[ネブラエス・デュガン(CV:鈴木達央)]
- DISC 2 収録曲
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- SOL
- walking away
- 僕のいない朝[アイソル・ナザド(CV:梅原裕一郎)]
- Trigger
- RISE
- 翔[ブライ・アル・カーラ(CV:浪川大輔)]
- face
- four windows
- 大切な人
1st Album発売記念
「SPECIAL STORY LIVE」に抽選で招待!
アルバム「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」を購入した人の中から抽選で、「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語 ある少女の光と影の追憶 発売記念スペシャルストーリーライブ」に招待。詳しくはアルバムに封入されている応募券を確認しよう。
- 2018年2月25日(日)神奈川県 PREMIERE HALL
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出演者
シェルシュ / 日岡なつみ(トレスタ役) / 福島亜美(シェルシュ役) / and more
エントリー期間:
2017年12月5日(火)10:00~2018年1月31日(水)23:59
- 矢内景子(ヤナイケイコ)
- 物語を音で紡ぐ“シンガーソングテラー”。「モンスターストライク」や「白猫プロジェクト」など数々のゲーム音楽に携わる。2016年9月に始動した「音楽×RPG -音で紡ぐファンタジー作品-」をコンセプトにした音楽プロジェクト「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語」でストーリー原作・作詞・作曲を担当。同プロジェクトの第1弾アルバム「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」を2017年12月にリリースした。
- 浪川大輔(ナミカワダイスケ)
- 1976年4月2日生まれ東京都出身の声優 / 歌手。幼少期から子役として活躍し、アニメの声の出演や洋画の吹き替えなどで幅広く活躍している。主な出演作に「LUPIN the Third」シリーズ(石川五ェ門役)、「ハイキュー!!」シリーズ(及川徹役)、「魔法使いの嫁」(リンデル役)など。