ワーナーミュージック・ジャパンによる「音楽×RPG -音で紡ぐファンタジー作品-」をコンセプトにした音楽プロジェクト「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語」。その第1弾作品となるCDアルバム「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」が発売された。
「ラファンドール国物語」は音楽と音声でストーリーが進行する、一般的なアニメとは表現方法が異なるエンタテインメント作品。2016年9月から毎週Web上で紙芝居形式の動画が更新され、今年7月から9月にかけてTOKYO MXやSUN TVにてテレビ放送もされた。
音楽ナタリーでは今回アルバムの発売を記念し、ストーリー原作・作詞・作曲を手がける矢内景子と、傭兵部隊の隊長ブライ・アル・カーラ役を演じる浪川大輔の対談を実施。物語のテーマになっている二面性についてや、音楽でストーリーを表現するために必要なこと、声優としてキャラクターを演じる秘訣など、さまざまな事柄について語り合ってもらった。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 佐藤類
「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語」
作品紹介
オフィシャルサイトにて第一幕公開中。
2019年第二幕予定。
- あらすじ
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ラファンドールの最北にある、フェブルと呼ばれる霧深い小さな村で、リエンとその妹・トレスタは慎ましくも幸せに暮らしていた。しかしある日、村が襲われすべてが燃え尽くされてしまう。逃げ込んだ森の中で2人は生活を始めるが、ラファンドールに蔓延する「フォージュ」と呼ばれる祟りがトレスタを襲い、彼女はリエンの目の前で仰け反って口から黒い影のような霧を吹き出す。瀕死のトレスタを助けたい一心のリエンは、1人で森を抜け出し、その方法を探しに旅に出る。リエンを次代の「光の王」だと言って護衛をかって出るブライ率いる傭兵部隊アロンディアス、「闇の目」を完成させるためにリエンの血をすすろうと襲う赤い目の男ネブラエス、トレスタを思いリエンから引き離そうとする親友アイソル、光の王の影響力が弱まっている隙に国を乗っ取ろうと企む影の王、そしてリエンの目の前に突如として現れるトレスタにそっくりな謎の少女シェルシュ。ラファンドールを取り巻く光と影の古き歴史と自らの出生の秘密を知ったリエンは、それぞれの思惑と真実の狭間で揺れ動く。果たしてリエンは、トレスタをフォージュから救えるのだろうか……。
- キャスト
- スタッフ
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- 原作・音楽:矢内景子
- サウンドプロデュース:近谷直之
- 脚本・シナリオ:野島一成
- プロデューサー:島津真太郎(grounding lab)
- A&Rプロデューサー:池田俊貴(Warner Music Japan)
「光=いいもの、影=悪いもの」という構図には絶対にしたくない(矢内)
──「ラファンドール国物語」は“光と影”という二面性をテーマに、音楽でストーリーを紡いでいくというファンタジー作品です。浪川さんはこの作品に参加するにあたり、どのようなことを考えましたか?
浪川大輔 やっぱり、どんなものにでも光と影があるし、どっちもなきゃいけないものだと思うんですよね。例えば人の性格であれば明るい・暗いだったり、あるいは善悪だったりがあって。それを真正面から捉えて、どうやって掘り下げていくのか非常に興味がありましたし、自分がキャラクターを通してどこまで表現できるのか、楽しみでもありました。
矢内景子 浪川さんがおっしゃった通り、何事にもポジティブな面とネガティブな面があるんですけど、例えば本作では「光=いいもの、影=悪いもの」という構図には絶対にしたくなくて。つまり光にもきっといい・悪いがあって、影にもいい・悪いがある。そしてこの物語の設定上では光と影が1つになった種族である人間にも当然、いろんな意味でいい・悪いがある。そうやって常に付きまとう二面性とどうやって向き合っていけばいいのか。それが、私が「ラファンドール」を通じて一番伝えたいことなんです。
浪川 矢内さんの中では、光は一般的に「いい」と考えられていること、影は一般的に「悪い」と考えられていることをそれぞれ象徴してるのかなって。
矢内 そうなんです。「光と影」って聞いたとき、だいたいの人は光が正義みたいに捉えがちだと思うんですけど、ラファンドール国を統治する光の王がいい人なのかというと、よくわからない。一方、人々から恐れられている影の王にも何か事情がありそうだし、ヒロインのシェルシュというキャラクターはその影の王と深い関係があったりの娘だったりする。「一般的な善悪の線引きって、本当に正しいの?」っていう、問題提起でもありますね。
浪川 1人の人間が抱える光と影もありますよね。例えば浪川という人間にはいい面と悪い面があって、自分としては悪い面を認めたくないんだけど、でもそれを受け入れないと成長できないみたいな。
矢内 うんうん。それを受け入れて、どんどん自己が統合されていくみたいなことを、光と影というモチーフを使って描いてみたいというのも、当初から考えていたことですね。
セリフだけで物語を先導していきたくはない(浪川)
浪川 それを音楽で表現するって、いったいどういうことなんだろうって最初は思ったんですよ。でも作中の楽曲やBGMを聴いて、徐々に「なるほどな」って。
矢内 私の本分は音楽家だし、音楽は自分の人生を通して寄り添ってきたものなんですけど、音楽の定義ってすごく曖昧なんですよね。例えばこのアルバムって、曲の冒頭に20秒くらいセリフの掛け合いが入っていたりするんですけど、「このパートは音楽なのか?」と問われれば、私は今回に限っては「音楽です」と答えられます。逆に、それに続く楽曲にしても「これは物語です」と言えると思っていて。そうやって一般的な音楽や物語の「こうあるべき」みたいな概念すらも壊したものを提示したいっていうのも、密かに思っていたことです。
浪川 僕も声優として参加させていただきながら、すごくチャレンジしてるなって思って見てました。
矢内 今回、私は声優さんのキャスティングもやらせていただいたんですけど、演技力はもちろん、声の響き方もすごく重視してるんです。声も、一種の音じゃないですか。それに対して、私はBGMという音を付けていくわけで。そのBGMに関して言えば、例えば驚いたときに現実の世界では音なんか鳴らないじゃないですか。
浪川 うんうん。
矢内 ただ、その人の中では「驚いた」っていう感情の動きがあって、じゃあその動きを音にしたらどうなるか、あるいはその人の心情的にどういう音が聞こえるか、という観点でBGMを制作しています。シーンによっては事前に作っておいたBGMもあったんですけど、最終的に、皆さんの演技に合わせて全部作り直してるんですよ。だから音でいかにキャラクターの心情を伝えるかという点で、BGMにはすごくこだわっています。
浪川 音のプロの方がそこまで考えて作ってくださってるっていうのに、今すごくプレッシャーを感じているんですけど(笑)、共感するところもたくさんあって。
矢内 どんなところですか?
浪川 表現には、文字では伝えられない部分があると思うんです。例えば「ドキドキ」とか、日本語の擬音語や擬態語って外国の方にはわからないですよね。だけど音楽は“世界共通言語”みたいに言われることがあって。実際、感情を表現しやすいものでもある。シルク・ドゥ・ソレイユの「KA(カー)」っていうショーには一切セリフがないけど、そこにストーリーはきちんとあって、観る側も感動するんですよ。もちろん「ラファンドール」にはセリフも歌詞もあるので、今言ったことと矛盾してるかもしれないけど、同じような地平を目指してるのかなって。
矢内 うれしいです。
浪川 自分はセリフ担当かもしれないですけど、セリフだけで物語を先導していきたくないし、かと言って音楽に引っ張ってもらうだけっていうのも違うから、その両者のバランスが一番大事なんでしょうね。
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単にきれいな声で滑舌よくしゃべればいいってことじゃない(浪川)
- 「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」
- 2017年12月6日発売 / Warner Music Japan
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[CD2枚組]
3240円 / WPCL-12814~5
- DISC 1 収録曲
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- 約束
- 囚われた光[リエン・マキュール(CV:花江夏樹)]
- ひとつだけ
- 満月の夜のこと[トレスタ・マキュール(CV:日岡なつみ)]
- 魔法の鍵
- 霧の世界
- 名もなき少年
- Deep Down
- 愛しい人よ[ネブラエス・デュガン(CV:鈴木達央)]
- DISC 2 収録曲
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- SOL
- walking away
- 僕のいない朝[アイソル・ナザド(CV:梅原裕一郎)]
- Trigger
- RISE
- 翔[ブライ・アル・カーラ(CV:浪川大輔)]
- face
- four windows
- 大切な人
1st Album発売記念
「SPECIAL STORY LIVE」に抽選で招待!
アルバム「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」を購入した人の中から抽選で、「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語 ある少女の光と影の追憶 発売記念スペシャルストーリーライブ」に招待。詳しくはアルバムに封入されている応募券を確認しよう。
- 2018年2月25日(日)神奈川県 PREMIERE HALL
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出演者
シェルシュ / 日岡なつみ(トレスタ役) / 福島亜美(シェルシュ役) / and more
エントリー期間:
2017年12月5日(火)10:00~2018年1月31日(水)23:59
- 矢内景子(ヤナイケイコ)
- 物語を音で紡ぐ“シンガーソングテラー”。「モンスターストライク」や「白猫プロジェクト」など数々のゲーム音楽に携わる。2016年9月に始動した「音楽×RPG -音で紡ぐファンタジー作品-」をコンセプトにした音楽プロジェクト「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語」でストーリー原作・作詞・作曲を担当。同プロジェクトの第1弾アルバム「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語~ある少女の光と影の追憶~」を2017年12月にリリースした。
- 浪川大輔(ナミカワダイスケ)
- 1976年4月2日生まれ東京都出身の声優 / 歌手。幼少期から子役として活躍し、アニメの声の出演や洋画の吹き替えなどで幅広く活躍している。主な出演作に「LUPIN the Third」シリーズ(石川五ェ門役)、「ハイキュー!!」シリーズ(及川徹役)、「魔法使いの嫁」(リンデル役)など。