LACCO TOWER|メジャーデビュー5周年で振り返る過去、見据える未来

LACCO TOWERが“黒白極撰曲集”と銘打ったアルバム「闇夜に烏、雪に鷺」を3月31日にリリースした。

本作では、メジャーデビュー以降の5年間に発表された楽曲群からメンバーが選び抜いた全22曲を、黒盤、白盤と名付けられた2枚のディスクに収録。選曲はもちろん、その曲順に至るまでこだわりが注ぎ込まれたことで、新鮮な聴き心地で楽しめる“ニューアルバム”となっている。またDISC 3にはこれまで発表されてきた16曲分のミュージックビデオも収められ、5年分の歴史を映像で振り返ることもできる。3枚組の大ボリュームとなった本作からは、比類なきロックバンドとしての姿を多面的に感じることができるはずだ。

コロナ禍を通してバンドの足元を改めて見つめ直すことができたというメンバー5人に、去年からの気持ちの動きや本作に込めた思いをじっくりと聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / NORBERTO RUBEN

1人の人間として

──LACCO TOWERは昨年6月にメジャーデビュー5周年を迎えましたが、世の中はコロナ禍真っ只中だったのでいろいろと思うところがあったんじゃないですか?

松川ケイスケ(Vo)

松川ケイスケ(Vo) そうですね。バンドとしてバーッと走っている中、急に目の前にドーンと壁が落ちてきて身動きが取れなくなったような感覚でしたから。ただ意外とね、結論としてはよかったかなと思うところもあるんですよ。前が見えなくなったからこそ周りのことがよく見えるようになったというか。バンドとしていろんなことができなくなった状況で、逆に今バンドとして何ができるのかを改めて考えることができましたし。

塩﨑啓示(B) 信号に例えるなら、赤になって止まってしまったけど、横で同じように立ち止まっている人たちのことも見ることができたし、なんなら自分たちの後ろ……過去のことなんかにも目を向けることができた。今まではずっと前だけ見て走ってきたけど、去年の状況がどこか俯瞰する視点を与えてくれたところもあったというか。自分たちの足元もしっかり見ることができましたしね。

真一ジェット(Key) このピンチをチャンスに変えたいという思いはありましたね。去年は誰も経験したことのない状況だったと思うので、その中で自分たちの道をどう切り開いていくかという、フロンティア精神みたいなものを持っていろいろと動けたと思います。単に悲観的になるのではなく、ちゃんと前には進めていたんじゃないかなと。

──自分たちの足元を改めて確認したことで何が見えましたか?

松川 いろいろ見えたんですけど、案外はっきりしたのは人間性というか。ミュージシャンとして、バンドとして以前に、1人の人間としてどう生きていきたいかみたいなところを各自がけっこう考えたと思うので、そこはすごく意味があった気がします。

──各自が向き合った自分の生き方をバンドとしてすり合わせたりもしたんですか?

松川 いや、あからさまにすり合わせてはいないですけど、日々の言動をはじめ、自然と染み出してくるものはありますからね。そこはうまく共有できていた気がします。

細川大介(G) 僕らはコロナ禍になる前からリモートで活動することが多いほうだったんですけど、去年はその回数が尋常じゃないくらい増えましたからね。そこでいろいろな話を密にしてきたことで、お互いの気持ちをわかり合えるところはあったと思います。

重田雅俊(Dr)

重田雅俊(Dr) ふと立ち止まったときに、今まで当たり前だと思っていたメンバーのいいところを改めて感じたし、だからこそLACCO TOWERとして一緒にやってきてよかったなと思うことがすごく増えたんですよね。しかも、世の中が大変な状況になっているときに、例えばバンドとして動くことを止めるという選択をする人がいても別におかしくないわけじゃないですか。でも自分たちは特に確認をしたわけじゃないけど、みんな前に向かって進もうとしていた。そういう意味ではメンバー全員がしっかりつながれていたということだと思います。だから僕、昨年末のリモートライブが終わったときにメンバーに言いましたからね。「一緒にやっててよかった、ありがとう」って。

──いい話ですね。

重田 去年は自分自身いろいろあったし、コロナ禍で不安な部分も大きかったんだけど、メンバーたちはちゃんと見守ってサポートしてくれてましたからね。これはちゃんと伝えるべきだなと。

とにかく未来のことを決めていこう

──コロナ禍で活動できない間に、メジャーデビューからの5年間について振り返ったりしましたか?

松川 メジャーの5年間はもちろん、その前のことも含めて、「あのときこうだったな」みたいなことはすごく振り返りましたね。そのうえで、「もっとこうしておけばよかった」みたいなものも心の中に生まれてきたので、そこをこれからの時間でどうしていくかをしっかり考えることができました。要はある種の後悔みたいなものをチャンスに変換できるようになったところがあったと思います。目の前のレールが一旦なくなったことで、変な固定観念が払拭されて、すごく自由な感覚になれたんですよ。ここからはどんなボールを投げてもいいんだなっていう。

真一ジェット(Key)

真一 それがさっき言ったフロンティア精神ってことだと思うんですよね。決められたレールの上を進むのではなく、レール自体を自分たちで作ればいいんだよっていう。去年からのつらい状況においてもそうやって後ろ向きにならずに済んだのは、この5年を含めたこれまでの活動があったからこそだと思いますね。

細川 僕らはもともと、いいレールの上を順調に走っていたとしても、アルバム出してツアーやってという、いわゆるルーティンの繰り返しになってしまうことをすごく恐れるタイプなんです。もちろんそういう活動ができることは当たり前ではないし、ありがたいことではあるけど、「このままでいいのかな」とすぐ思ってしまう。結局わがままってことなのかもしれないけど(笑)、でも僕らはこれからももっともっと好きなことを好きなようにやっていいんだなって、より思うようになったところは確実にありますね。

松川 うん。その中で見えた結論としては、とにかく未来のことをバンバン決めていこうと。それが正解かどうかはわからないけど、とにかく目の前にやるべき何かがないと進めないなと思うんですよ。すごく当たり前のことではあるけど、それを去年、身をもって感じたところがあったので、無理やりにでも先に向けてボールを投げていくというのが今の自分たちのテーマです。

自分たちがやりたいことをやるんでしょ

──今回、メジャーでの5年間に生まれた楽曲をまとめた選曲集をリリースしようと思ったのはどうしてだったんですか?

細川大介(G)

細川 実は去年、今までと違う新しいことをやる動きを決めていたりもしたんですよ。でもそれがコロナでできなくなってしまったので、そのアイデアは一旦保留にして、違う動きを見せようと。コロナ禍でメンバーそれぞれの気持ちがまた1つにまとまった感じもあったので、じゃあここでLACCO TOWERはこういうバンドなんだよって、皆さまに改めて提示しておくほうがいいんじゃないかなと思ったんです。自分たちとしても、もう一度足元をしっかり見つめ直しておきたい気持ちもあったので。

松川 で、今回は基本、大介が選曲を進めてくれて。内容に関しては、それを見せてもらったうえで、僕とまた少し話をしながら固めていきましたね。

──黒盤と白盤と銘打たれた2枚のディスクそれぞれに11曲ずつ、計22曲が収録されていますが、どんな基準で選曲していったんですか?

細川 メンバーそれぞれの思い入れの強いものであったり、自分たちを紹介するうえで外せない曲であったりという視点で選んでいきました。

松川 ただ、大介の性格上、最初は自分たちが収録したい曲とファンに人気のある曲のバランスを取ろうとしていたんですよ。そこは違うでしょという話はしましたね。

細川 最初はメンバーもお客さんもみんなが納得できるようなものをすごく考えちゃっていて(笑)。でもケイスケに「自分たちがやりたいことをやるんでしょ」と言われたことで、選曲がちょっと変わったところはありましたね。

──でも今回提示された楽曲群とリスナーが求める曲との間に、そこまでのギャップはないような気がします。すごく納得のいくラインナップでした。

塩﨑啓示(B)

塩﨑 僕らは毎年お客さんの投票でセットリストを決めるというイベントをやっているので、わりとお互いの思いを確かめ合う瞬間が多いんですよ。だから確かに僕らが好きな曲、やりたい曲と、お客さんが好きな曲との相違はそこまでないかなとは思いますね。

重田 うん。自分もバンドの一員としてずっとやってきたので、違和感があったら「ちげえぞ!」って言ってやろうと思っていたんですけど、一切なかったッスね(笑)。ホントいいアルバムになってるんで。

真一 僕はもうどの曲が入ってもよかったという親心的な感覚があるんですけど、でも今回の収録曲たちは選ばれるべくして選ばれた感じはしますね。

──新たにアルバムとして構築されたことで、既存曲ながらも聴こえ方がかなり変わりますよね。

細川 そうですね。強く言っておきたいのは、単に好きな曲をまとめただけのベストアルバムではないということで。今回はMV集を含めた3枚組なので、歌詞の内容や曲のBPMなども意識しながら、曲順も含めて3枚としての流れをしっかり考えましたからね。曲単体としてはいいんだけど、流れにハマらなかったから泣く泣くベンチ入りしてもらった曲もありましたし。