LACCO TOWER|5人は何色にもなれる 18年目の初期衝動

今の自分たちを投影したい気持ちになった

──やりたいことをやれた部分はほかにもあります?

細川 僕は、「必殺技」でワガママを言わせてもらいました。ギターリフありきの曲がどうしても作りたかったんですよ。初っ端からギターリフが鳴ってる曲って、今までのLACCO TOWERにあるようでなかったので。で、サビはメジャーなコード進行にしたかった。これも激しい曲の場合、サビでマイナーコードになることが多かったんで、「必殺技」は明るくポップなサビにしたくて。この曲に関しては僕がまずデモを持って行って、真ちゃんに作りたいイメージを伝えて詰めていきましたね。

重田 俺は我を通すというよりは、むしろ寄り添った感じです。みんなのよさを引き立てるために土台としてどうあるべきかを改めて考えて、「こうしてほしい」に対してほぼ全部応えてみたら、自分自身もすごく腑に落ちたので。超アッパーな「地獄且天国」からスローテンポの「永遠」まで幅広い内容だし、真一の頭の中にあるものと楽曲の全体像をしっかり形にすることは1曲1曲で意識しました。

松川 歌詞に関してはまったく苦労しなかったんですよね。湯水のように出てくるというか。「まだまだ書きたいことがたくさんあるんだな」と気付けた制作でした。

──それはリード曲の「若者」に関しても?

松川 はい。「若者」は大介に「もしかしたらリード曲になるかもしれないから、そのつもりで歌詞を書いて」とサラッと言われたんです。そういうオーダーがあったので、今の自分たちを投影したい気持ちになったし、アルバムを通して書きたいことのフィールドをいろいろと作ってもらってる感覚で、僕は楽しかったんですよね。

細川大介(G)

細川 もともとはレコーディングの最初のほうでできてた「線香花火」がリードになる予定だったんですけど、最後のほうで真ちゃんが「若者」のデモを上げてきて。聴いた瞬間に「メインに取って代わるんじゃないか」と思ったんですよね。でも、真ちゃんはそういうつもりで持ってきてなくて、「バラードにしたくない」とも言ってたよね?

真一 「狙って作りました」っぽいのが嫌だっただけなんだよね(笑)。正直言うと、レコーディング後半になって「まだリード級の曲できるだろ!」って思いで自分にハッパかけて作ったのよ。でも、作っていく中でリード曲に化けるようなプロセスが欲しかったから、始めはみんなに「8分の6拍子だけど、前作の『花束』みたいなバラードじゃなくてロックな感じにしたい」って注文をあえてしたんです。

松川 タイトルから浮かんだんですよ、「若者」は。僕、歌詞を書くときのタイプが2つあって、タイトル先行型とキーワード先行型のどちらかなんですね。「このタイトルで何かを書きたい」か「この一文を使って何か書きたい」か、っていう。

──若者というタイトルで何かを書きたかったわけですね。

松川 そうです。世間一般で言われる若者という世代を経て、キャリアを積んだ僕らだからこその内容にしたい。第三者の若者じゃなくて、自分自身の若さだったり、若いときに感じてたことだったりを表現したい。そんなことをぼんやり思ってたときに大介のオーダーやこの曲調を受けて、落とし込めそうな気がしたんですよね。

塩﨑 「LACCO TOWERのことを歌った曲でもある」とケイスケから聞いたうえで歌詞を見て、本当に素晴らしいなと思いました。「若者」の歌詞がなかったら、みんなに呼びかけてもうちょっと向き合いたいなとか、そういう気持ちにはならなかっただろうし。「美しく生きたいな」の部分もすごく好きです。

今なら何をやってもLACCO TOWERになる

──さっき大介さんが「メガヒットがない」とおっしゃいましたけど、今作の「若者」や「夜明前」をはじめ、名曲はたくさん生まれていると思います。

松川 そう言っていただけると、本当にうれしいです。

細川 名曲はめっちゃあるんですよ。メガヒットがないのが不思議ですもん!

塩﨑 ね!

細川 「夜明前」の歌詞、好きなんですよね。曲ができあがって何回も聴いてるんですけど、特に頭の「知ってるかい 今日が未来をこじ開ける日さ」にすごく励まされてて。ヘコんでるとき、気持ちを奮い立たせて背中を押してもらいたいとき、力になってくれる曲だと思うんです。

重田 「若者」もそうだけど、「炭酸水」(サイダー)なんかもキャリアを重ねてきた今の自分たちだからこその曲ですね。ハタチの頃だったら「カッコ悪い」とか思っちゃってたかもしれない。今なら何をやってもLACCO TOWERになるっていう自信があるんです。

松川 うんうん。

重田雅俊(Dr)

重田 「ギターソロもいいな」「歌詞もいいな」とか、素直に思えるようになったなというか(笑)。若い頃ってみんな「俺のほうがカッコよく作る」「俺が目立つんだ」みたいな感じだったけど、曲をよくするための意志の疎通が自然にできてたし、バンドがより強固なものになってるなと。アルバムを作っていて、そんなことも感じましたね。

真一 歌詞で言ったら、俺は「炭酸水」が一番好きかもしれない。

松川 実体験を歌詞にするのってあまりないんですけど、「炭酸水」はモデルとなった人がいるんです。知り合いに夜の接客をしてる女性がいて、その人と喫茶店で話したときに「私なんてもう、ある程度将来見えてるし」みたいなことを言ってたのが自分的にすごく刺さって。年齢は僕よりぜんぜん下でも、その業界では年上のほうになってきた寂しさだったりとか、なんだかバンドにも相通ずるものがあって、アルバムのテーマにつながったところもあるんですよね。そういう意味で、アルバムのキーになってる曲なのかなと思います。

──「六等星」もですけど、現実に打ちのめされそうなシーンが思い浮かびますね。「どう持ちこたえるか」みたいな。

松川 「六等星」みたいな心情の人はいっぱいいると思うんですよ。六等星って肉眼で見えるギリギリの光を出してる星のことなんですけど、ミュージシャンもそうですし、ライターさんや編集者さん、どの業界でもどんな仕事でも一等星のほうが少ないじゃないですか。でも、みんな一等星になりたくてがんばってる。

──そうですね。

松川 がんばる中で選択肢がなくなって、落ち着く場所を見つける人もいますよね。それが間違いだとはまったく思わないですけど、やっぱり僕らみたいに有機的なものを生み出さなきゃいけない団体にとっては、そこと戦っていかなきゃいけない気がしていて。「六等星」では、その決意表明を控えめながら出せたんです。昔なら感情を無闇に投げつけて終わりだったのが、ちゃんと相手に当たるように、同じ熱さのまま届けられるようになったというか。

今作ってる曲が自分の遺作になったとしたら、それでいいのか?

──生きていくことを歌う曲が増えましたよね。スタイルは違えど、THE BACK HORNやSUPER BEAVERに通ずる強さみたいなものを、アルバムから感じたりもして。

松川 ありがとうございます。その2バンドなんかは、素で持ってる部分でぶつかっていかないと勝てないですから。そういう素の部分を強くしていくには、まさにメンバーで話をしたりするのが重要な気がするんです。演奏がうまくなるのも大事だけど、別の部分を鍛えなきゃいけない筋トレ感。僕らがこの1年耐え忍んでたのは、筋トレをしていたと言ってもいいかもしれませんね。

細川 「もしかしたら、明日もう音楽ができなくなっちゃうんじゃないか」なんてことを思ったりもするんですよ。同年代の人が亡くなってしまったり、死が昔よりもどんどん現実的になってきてたりするので。そんな中で僕は音楽を今やれていて、こんなに応援してくれる人がいることって奇跡じゃないですか。だからこそ、生きてる瞬間瞬間を大事にしなきゃいけない。それはここ数年ですごく感じてるんですよね。

真一ジェット(Key)

真一 大介の話を聞いてて思い出したけど、同年代のバンドマンとかが立て続けに亡くなったじゃない?

塩﨑 今年、多かったよね……。

真一 僕個人がそこまで深い関係だったわけじゃないのに、ものすごくヘコんだんですよね。「本当にあり得るな」と思っちゃったんです、自分も不意に死んでしまうことが。そんな感情に苛まれたあと、確か「若者」を書いたんですよ。

──そうだったんですか。

真一 変な話ですけど、「もし今作ってる曲が自分の遺作になったとしたら、それでいいのか?」と。で、「いや、まだいける!」と作り始めたのが「若者」だったのを、急に思い出しました。だから、あそこでリード級の曲をさらに作ろうとしたんだなって。

──けっこう前ですけど、「心臓文庫」(メジャー2ndアルバム)のリリースツアーファイナルの品川ステラボール公演(2016年11月12日開催)で、「未来前夜」を演奏する前にケイスケさんが「明日はきっと大丈夫とか、絶対いい日になるとか、自分は怖くて口が裂けても言えない」みたいなことをMCで話してたじゃないですか。

松川ケイスケ(Vo)

松川 はいはい。

塩﨑 「約束はできないけど」みたいに話してましたね。

──「でも、みんなといっしょにそう思うことはできる」というような内容だったんですけど、その頃と比べると、今はもっと「未来は変えられる」と感じていますか?

松川 そうですね。僕個人はあまり明るいタイプではなく、楽観的に未来を考えられない性格なんですよ。だからこその言葉だったのもあるし、約束はやっぱりできないけれど、未来も過去も変えられると今の自分は思ってます。過去と今の気持ちが違ってたとしても、「過去の考え方も未来を切り開いていくための役に立ってるんだ」と捉えられるように、今を変えていくというか。そうすれば、過去のどんな経験もプラスに変わるので。

──なるほど。

松川 未来が約束されてるほうがそりゃあ安心だろうけど、どんな仕事をしている人も同じような不安と闘いながら生きてるわけだし、約束されているものほど面白くないものはなかったりしますよね。だから、未来をより面白くするために今を変えることが本当に重要だなと思うんです。そのためのちょっとした切り口みたいな考え方をあの頃よりは持てている気がしますね。腹の括り方かな(笑)。

──ディープな話がいっぱい出てきますね。

松川 本当ですね。すごく前のことを覚えていただいていてうれしいですよ。

──いろんな思いがあってのアルバムなのがよくわかりました。

松川 もっと明るくね、「新作いいっしょ!」的なノリがよかったかもしれないですけど(笑)。いろいろシリアスな部分をお話できてよかったなって。

塩﨑啓示(B)

塩﨑 真一が自分のことを「天才」って言わないなんて珍しいですよ(笑)。

真一 そういうのもいいじゃない。

松川 ね。やっぱり今を全力で生きて、疲れて何も残ってねえってくらいカスカスになって家帰るような毎日を送ってないと、見えないものもあるのかなって最近はすごく思います。この歳になってそうなれたのがありがたいですね。

──これからのLACCO TOWERがますます楽しみです。

塩﨑 (7月の)17周年のライブが終わった直後の楽屋で、「これからもよろしくな!」ってケイスケが言ってきたんですよ。

一同 あはははは!(笑)

真一 あれはビックリしたわ。

細川 今は未来に向かって迷いがない感じなんです!

松川 あと、仙台で打ち上げしたとき、大介がめちゃくちゃ料理頼んでたよな。「食い切れねえだろ!」ってくらい。ダイエットしてるとかずっと言ってたくせに、揚げものばっかり。

細川 楽しかったし、もっと場を盛り上げようと思ってさ。

重田 「メッチャタノシー!!」って言ってたもんな(笑)。

ツアー情報

LACCO TOWER「変現自在」発売記念ワンマンツアー2019
「独想演奏会 ~変現自在の猟虎六景~」ホール公演
  • 2019年9月21日(土)大阪府 サンケイホールブリーゼ
  • 2019年10月5日(土)群馬県 高崎市文化会館
  • 2019年10月6日(日)群馬県 高崎市文化会館
  • 2019年10月12日(土)東京都 ヒューリックホール東京
  • 2019年10月13日(日)東京都 ヒューリックホール東京
  • 2019年10月22日(火・祝)愛知県 芸術創造センター
LACCO TOWER