ナタリー PowerPush - LACCO TOWER

“狂騒演奏家”がすべてをさらけ出した 激情的新作「続・短編傷説」

誰が何を言おうと一旦は全員で検討してみる

──僕は3曲目の「弥生」がすごく好きなんですよ。ループ感のある、温かな雰囲気のサウンドがアルバムのいいアクセントになっているなと。

真一 これこそまさにレコーディング2日前にできた曲なんですけど。

重田 最悪だったよね。

真一 大介に「ちょっと気を抜ける曲があってもいいんじゃないか」って言われたのをきっかけにできたんですよ。

細川 うん。LACCO TOWERの曲って様式美というか、けっこう作り込まれてるものが多いと思うんですよ。転調も多いし、変拍子も多いしっていう。でも、そういう曲ばかりだと聴いてる人が疲れちゃうんじゃないかなと思ったんです。なので、少しリラックスして聴けるものをリクエストしたら、これができあがって。レコーディングの2日前に(笑)。

──あと、真一さん以外が手がけた1曲というのはどれになりますか?

真一 「杏子」がケイスケの曲です。ケイスケがギター1本で歌ったのを渡されて、まずそれを俺なりにアレンジしました。デモに比べてBPMを20くらい上げたんで、みんなに聴かせるときにはどんな反応が返ってくるか一番緊張しましたね。

塩崎啓示(B)

松川 で、それを僕と大介でアレンジし直して、またもう1回真一に渡したっていう流れでしたね。完成型を聴いた瞬間、「すげえいいな」って思えた。

塩崎 うん。今回のリード曲だろうなって感じだったよね。

松川 個人的にすごく好きな世界観を持った曲なので、歌詞もすぐに書けて。得意中の得意(笑)。

──LACCCO TOWERの制作は、メインで真一さんがコンポーズを手掛けつつも、完成に向かう過程ではメンバー全員の意見がしっかり反映されて、いろんな方法論を試されている印象ですね。

松川 そうですね。いい意味で全員の意見が強いんですよ。だから誰が何を言おうと一旦は全員で検討してみるっていう。そういうことが自然とできるようになりましたね。真一もね、曲を持ってきたからといって「こうじゃなきゃやだ」みたいなナメたことは言わないですし(笑)。

重田 同じパートを何回も違うパターンでやってみたりするもんね。そこで、「今のだったら前のほうがよかったな」とかっていうジャッジをするっていう。

松川 うん。で、そのジャッジにズレがないんですよ。いいと思うものがみんな同じっていう。そういう意味では、LACCO TOWERっぽさっていうものを感覚的にみんなわかってるんだろうなって。

意味があるソロ、間奏を作りたい

──話を伺っていると、細川さんも制作にガッツリ関わったみたいですし。

細川 最初はなかなか意見を言いづらい感じもあったんですよ。入ったばっかりだったんで。でも、意見を言ってみれば「それやってみよう」って必ず言ってくれるので、いろんなことを試せるのがすごく楽しいんですよね。真一ジェットが擬音ばっかりでイメージを伝えてくるのがちょっとわかりにくいですけど(笑)。

松川 けっこう雰囲気的な感じで伝えてくるからね。「ここはジャージャージャージャーで」とか「もっとタカタカタカタカで」とか(笑)。

真一 「杏子」は“ジャージャージャージャー”ですね。聴いてもらえればわかると思います。

重田 「トゥルルルルバシャーンバシャードンバーン!」とかね。全然わかんねえ、みたいな。

松川 でも、やってみたら「あ、それそれ」ってすぐになるっていう。「あ、これなんだ」みたいな(笑)。

重田 まあ、そこはもうつきあい長いからね。

松川ケイスケ(Vo)

──もうひとつ、僕がすごく印象的だったのは、どの曲も間奏がめちゃくちゃカッコいいってことで。歌がない場所でもしっかり聴かせようっていう気概をめちゃくちゃ感じたんですよね。

松川 へえ、それは初めて言われたな。うれしいね。だいたいこういうインタビューだと、そこは聞かれないもんね。たぶん変な顔してますけど、今すっげえうれしいはずですよ、真一ジェットは。

真一 うん。間奏は一番凝るところですね。間奏への入り方と、メロへの戻り方はものすごく考えてます。大事です。ただ単につけるギターソロだったら僕はいらないと思ってるんで。意味があるソロ、間奏を作りたいと思ってます、常に。

すでに新曲作りのための合宿をやってる

──新メンバー加入後、一発目となるこの傑作を引っ提げて、全国ツアー「続・傷心旅行」もスタートしますね。

松川 はい。ツアーって基本団体行動なんで、ストレスを感じる部分もあると思うんですよ。過去の経験からすると。でも、今回は単純に楽しく回れそうな気がしてるんですよね。もうヤバいだろってくらい天然な大介が入ったことで(笑)、友達同士で遊びにいくみたいな感覚で全国回れるんじゃないかなって。

重田 うん。あんま意気込んでないですね。20代前半の頃は「やったるぜ」「おめえら盛り上がれよ」みたいな感じがあったけど、今はもう楽しくやれればいいかなって。余裕っす。余裕しかないっす。

塩崎 昔はライブに対して「絶対こうだ」っていう完璧主義なところがあったんですけど、今はいい意味でそういうところもなくなってるんで。

──細川さんはどうですか?

細川 めっちゃ楽しみですね。

重田 連れてく? どうする?

細川 俺だけ新幹線だと悪いんで、車で一緒に行きますよ。

松川 ……ね。こういうとこがあるんですよ(笑)。

重田 いきなりポジティブっていう。イラッとさせるよね。

──あははは(笑)。塩崎さんのブログを拝見したところ、すでに新たな制作も始めているようですが。

塩崎 そうっすね。曲作りのための合宿をやったりしましたね。

松川 ほとんど飲んでたけどね(笑)。

塩崎 ほとんどこいつ(真一)の下ネタでね(笑)。

重田 合宿所の受付の人が前代未聞だって言ってましたから。

塩崎 まあでも新曲もどんどん作っていきたいと思ってますよ。

LACCO TOWER
LACCO TOWER(らっこたわー)

2002年に結成されたロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスで都内、群馬を拠点に活動を続けている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩崎啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年7月に新編成となって初のミニアルバム「続・短編傷説」をリリースする。