「曲名に使いたい単語リスト」から選んだタイトル

──ちなみに、カップリングの「fake doll」は八王子さんが全てを手がけた曲なんですよね。この曲はどういう形で作っていったんですか？

八王子P　「Weekender Girl」とは対照的な曲調とサウンドにしようと思って作りましたね。あと「fake doll」というタイトルが最初に決まったんです。「自分の曲名に使いたい単語リスト」みたいなものがあって、そこから選んだ言葉なんですよ。

kz　いいな、それ。俺もそれ作ろう（笑）。

八王子P　「あ、これカッコいい！」って思った単語とかをメモしてるんです。人には絶対見せないですけど（笑）。

──サウンドを対照的にしようと思ったということですけれど、それはどういうところで？

八王子P　「Weekender Girl」は結構明るい曲で、重心が高めの曲なんですよ。

kz　開放感あるよね、あの曲は。

八王子P　だから「fake doll」のほうは、重心低めのずっしりした感じのサウンドにしようと。それに合わせて歌詞も考えた感じですね。

インターネットミュージックが形になってきている

──もう1つ今回、お2人にお伺いしたいことがあって。今年になって、自分自身や周囲を見て、環境の変化や、シーンの受け止められ方が変わってきた感覚ってありますか？

kz　それはどの分野においてですか？ ボーカロイドに限定してか、インターネットミュージックシーン全体の話か。

──ネットレーベルが注目を集めているというのもありますし、インターネットミュージックシーン全体の話を伺いたいです。

kz　だとすると、その感覚はありますね。特に、大きな動きが現れたのが今年の6月だと思っていて。要は、tofubeatsの「水星」がiTunes Storeの総合チャートで1位になった。元々tofubeatsは活躍していましたけど、あの曲はインディーズからのリリースで、しかもタイアップとかほかの誰かが関わってない個人のリリースなんです。それがiTunes Storeで総合1位になった。それはかなり衝撃的なことだと思ってて。

──僕もかなり驚きました。

kz　あれがあったことで、インターネットミュージックシーンと一般の音楽シーンの垣根って正直そんなにないんじゃないかなって思うようになってきてますね。単純にグッドミュージックかどうかで判断してくれる人たちが増えてきてると思う。ここ4～5年くらいで盛り上がってきたインターネットミュージックのシーンが、今、ようやく形になってきている気がする。メジャーのいいところも、ネットのいいところもある。両方が面白い感じになってきてると思っています。メジャーもネットも、別に対抗しあうものじゃないと思うんですよね。どちらでも、そこでしかできないことがあるわけだから。

──八王子Pさんはどういうふうに捉えてます？

八王子P　自分はボーカロイドシーンを中心に話すと、今ってほんとにメジャーデビューするPが多いんですよ。それこそ毎月2人ぐらい。

kz　そんなにいるの？

八王子P　そう。最低でも月1人はデビューなり、リリースをしていて。それぐらいのペースでたくさんの人がリリースしていて、でも、プロとして音楽でやっていくかどうかを明確にしない人も多くて。元々ボーカロイドを使って作る音楽っていわゆる同人音楽の分野ですし。

kz　延長線上だからね。

八王子P　はい。だから、今でこそ注目されているシーンですけど、その環境に慣れすぎちゃってる流れがあるのかなって、僕は思っています。

kz　今後どうしたいのかよくわからない人たちが多いってこと？

八王子P　そうですね。

kz　確かに、それは僕とかsupercellのryoさんとかも言ってることで。単純に言うと、狭苦しいというか、堅苦しい感じになっちゃってる。もっと好き勝手やればいいのにって思ったりもする。