KYONO|初の配信ライブで伝えたかったこととは? 理解してくれる仲間たちと奏でた激しくもキャッチーな音楽

世代で異なる音楽の捉え方

──ところで今回で気付いたのですが、バンドのメンバーもゲストもみんな後輩ばかりじゃないですか。意図的なものなんですか?

うーん、特に意識はしてないですけどね。近い存在で、理解してくれる人に来てもらったら自然とこういう顔ぶれになったという感じです。

──自分のやっていることを若い人に受け継いでもらいたいという気持ちもある?

それはあります。広がっていってほしいなという気持ちはありますね。

──KYONOさんがTHE MAD CAPSULE MARKETSをやってた頃に比べると、この手のラウド系のバンドはすごく増えてると思うんです。今の状況をどうご覧になってます?

みんなカッコいいと思いますよ。ただ自分たちがやっていた音楽の雰囲気って、今の若い人とは若干捉え方が違うと思うんです。若い世代の人たちなりのラウドネスだったりヘヴィネスだったりがある。その違いは面白いと思ってますね。

KYONO

──何が違うんでしょう?

世代感なんですかねえ。俺らが学生時代にリアルタイムで聴いていたパンク、ハードコア、メタルというラウド系バンドの捉え方とか。俺らよりずっと若い世代は、リアルタイムじゃなくYouTubeで知ったり、アナログ盤で聴いてなかったり、聴き方や環境で感覚の違いって生まれるのかなと。例えば同じデジタルを導入しても、今のデジタルと昔のデジタルでは違う。もちろん機材も進化してるし、使う側の意識も変わってくる。ドットの大きさが違うのと一緒で。

──デジタルを導入したこともそうですけど、いろいろなことをマッドが最初にやりましたよね。でも今の人たちはマッドがすでにやったことを前提に、さらに自分たちのアイデアを重ねている。

そうですね。マッドは直接知らないけど、その次の世代のバンドは知っていたり。その都度、新しい感性で更新されていくんでしょうね。

──若い人とやっていて得られるものってなんでしょう。

やっぱり……勢いがありますよね。動きとかも含めてキレがある。自分も20歳ぐらいのときはもうちょっとキレがあったなあとか思ったり(笑)。ただそれはそれで、衰えととるか貫禄ととるかで。自分で衰えたと思うと、どんどんいろんなことができなくなっちゃう。まだできるぞと自分に言い聞かせてます。

激しさの中にキャッチーさを

──KYONOさんがキャリアを積み年齢を重ねて得られたものはなんでしょうか?

うーん……安定感、ですかね。こうやったらこうなるなというのがなんとなく想像できるようになった。昔は「とりあえずやっちゃえ!」みたいな、後先考えずやってましたけど、今はある程度想像ができるようになってきたので、想像しながらこうやってみよう、ああやってみようとできるようにはなってきました。曲にしても、これだとちょっとわかりづらいかな、とか。昔だったら、わかりづらいまま出してたと思うんですけど、今はもうちょっとわかりやすく出してみようとか、そういう変化が出てきてますね。

──聴く人のことを考えるようになった?

そうですね。昔も意識はしてたと思うんですけど。今になって「自分はこれがカッコいいと思うけど、みんなはどう思うんだろう。若い世代はどう思うんだろう」と考えながら、ちょっとしたニュアンスを考えたり、歌の大きさやミックスのバランスを考えたりはするようにはなりました。まあ基本は考えないようにしてるんですけどね。そこに合わせてもしょうがないし。自分だけの音を出したうえで、いろいろな世代の人に聴いてもらいたい。ただ、前は隙間なく音が埋まっていて、歪みの中に歌が見え隠れするぐらいでちょうどいいなという感覚だったんですけど、今はもう少しメロディをわかりやすくしたいなと思いますね。

KYONO

──ライブDVD「KYONO LIVE -The Beginning of Dawn-」のインタビュー(参照:KYONO「KYONO LIVE -The Beginning of Dawn-」インタビュー)で「最近は歌に意識が向いている」というようなことをおっしゃってましたね。

ああ、そうですね。なので今回の配信ライブのミックスも歌が聞こえたほうがいいなと思って、ちょっとこだわりました。

──その結果、曲のポップさが際立ってますね。ライブだからエネルギーはもちろんあるけど、ただラウドなだけじゃないポップネスもよく伝わってくる。

激しさの中にキャッチーさがある感じにしたかったんですよ。それは毎回そうなんですけど、今回さらにその意識が強まってますね。配信だと画面でしか観られないから。生のライブだったら空気感で伝えられるけど、小さいパソコンのスピーカーだとなかなか伝わらない。なので歌を引き立たせようと考えましたね。

──DVDにパッケージされた音は配信のときのままじゃないですよね?

違います。録るときに空気も録って、それを併せてミックスしてますね。現場にいたスタッフは音デカいなと思っていたと思いますよ。

──あ、現場でも音デカかったんですか。

爆音の中でやりたかったんですよ(笑)。やっぱりやってるこっちが楽しくなきゃと思って。

アコースティックアルバムを出したい

──余談ですが、最近は何をされているんですか?

普段ですか? 曲をちょこちょこ作っていますね。あとは有観客でアコースティックの弾き語りライブをやったり。お客さんはマスクをしてずっと座っている状態で、レスポンスはないけど話しかけてみたりして。それがけっこう面白かったので、今度はアコースティックアレンジした曲をレコーディングしてもいいかなと思いました。カバーを入れても面白いかなと思ってます。アコースティックだとより歌が目立ちますよね。ちょっとした語尾のニュアンスの聞こえ方とか。お客さんがバンドバージョンを聴いたあとにアコースティックバージョンを聴くと、こういうメロディだったんだと気付くと思うんです。

──アコースティックはどんなきっかけで始めたんですか?

KYONO

お誘いがあって。最初は配信で、次にお客さんが入った状態でライブをやったんですけど、けっこう楽しかった。

──やる前は不安じゃなかったですか?

めちゃめちゃ不安ですよ。ギタリストじゃないからどうしても歌に集中しちゃうんで、ギターがおろそかになっちゃうんじゃないか、歌いながら弾くことがちゃんとできるか、という初心者レベルの不安(笑)。

──普段いかにバンドメンバーに支えられているかを実感しそうですね。

そうなんですよ。まさにそれがすごくわかりました。でもいざアコースティックでやってみると、しっとりめのアレンジで静かにお客さんの前でやるのって意外と楽しいんだなと思いました。ちょっとしたMCでお客さんを笑わせてみたり。

──MCで客を笑わすKYONOって見てみたいですね(笑)。

ははは(笑)。観てる人も楽しそうだったし、やってるこっちも楽しかったので、こういうスタイルもたまにはいいなと。いつになるかわからないですが、いつかアコースティック弾き語りのアルバムを出してみたいですね。

──ちなみに今後のライブ予定はありますか?

はい。今度はお客さんを入れたライブをやりたいなと思っています。

ライブ情報

KYONO LIVE!! "S.A.L" 2021 Release LIVE in YOKOHAMA BAYHALL
  • 2021年12月11日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall <出演者> KYONO BAND / and more
KYONO(キョウノ)
KYONO
神奈川県横浜市出身のボーカリストで、2006年に活動休止したTHE MAD CAPSULE MARKETSのメンバー。2006年にはDJ STARSCREAM(Sid #0 of Slipknot)とのコラボレーション楽曲「HAKAI(Deathtroy)」が、映画「デスノート the Last name」のトリビュートアルバム「The songs for DEATH NOTE the movie ~the Last name TRIBUTE~」に収録された。同年からハードコアバンドT.C.Lのメンバーとして活動を開始し、2007年8月にソロプロジェクトWAGDUG FUTURISTIC UNITYを始動。2012年にはDJ BAKUとのユニット!!!KYONO+DJBAKU!!!を結成した。2016年には宮藤官九郎監督映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」主題歌の作曲を担当。2018年10月に個人名義初のアルバム「YOAKE」を発表し、2019年9月には「YOAKE」のリリース記念ライブ「YOAKE RELEASE PARTY -The beginning of dawn-」東京・WWW X公演の模様を収録したライブDVDを発売した。2020年10月に2ndソロアルバム「S.A.L」をリリース。