KYONO(THE MAD CAPSULE MARKETS、WAGDUG FUTURISTIC UNITY、T.C.L.、!!!KYONO+DJBAKU!!!)が個人名義初のライブDVD「KYONO LIVE -The Beginning of Dawn-」を9月18日にリリースした。
この作品は、今年4月に東京・WWW Xで行われたKYONO名義初のアルバム「YOAKE」のリリース記念ライブ「YOAKE RELEASE PARTY -The beginning of dawn-」を映像化したもの。音楽ナタリーのインタビューでは、ソロ名義初のアルバムやライブDVDについてはもちろん、KYONOのライブのために結成されたKYONO、ミヤ(G / MUCC)、hiromitsu(B / AIR SWELL、deadbites、OXYMORPHONN)、DUTTCH(Dr / UZMK)からなる“KYONO BAND”についても語ってもらった。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 永峰拓也
とことん自分のこだわりを突き詰めた「YOAKE」
──KYONOさんは昨年にソロ名義初のアルバム「YOAKE」を発表して(参照:KYONO初ソロアルバムにJESSE、MAH、Tokyo Tanaka参加)、新たに活動を始められました。まずはそのあたりの心境や経緯から聞かせてください。
ソロプロジェクトという形でWAGDUG FUTURISTIC UNITYを立ち上げたり、地元の仲間たちとT.C.L.というバンドを組んだり、DJ BAKUくんとコラボをしたりといった活動はしてきました。でもソロ活動をしたという感覚ではなくて。どれも真剣に向き合っていますけど、どこか遊び心的な部分もあったんです。でももう自分もだいぶいい歳になってきたので、自分にとって一生残るような本気の作品をそろそろ作りたい。どうせならKYONO名義というわかりやすい形で、自分らしい作品を制作したいと思ったんです。
──そもそもソロの楽曲作りの出発点は、どこにあったんですか?
T.C.L.やWAGDUGの活動をしながら、ソロの楽曲制作もちょっとずつ進めてはいたんです。ちゃんと作り始めたのは、制作の藤原(茂樹)さんと出会って、「ソロアルバムをリリースしましょう!」と言ってもらってからですね。
──「YOAKE」は作詞作曲はもちろん、ボーカルや楽器のレコーディングまで、すべてKYONOさん1人で担当されたそうですね。
そうです。今までは自分が録ったデモをメンバーに聴かせて弾いてもらっていた感じでした。曲は作るし詞も書くけど、どこかしらほかの人の要素が入っていたし。完全に自分1人でどこまでいけるのか、トライしたくなったんです。全部に自分の魂が入った音にしたくなったというか。「YOAKE」はドラムの打ち込みから始めて、シンセやベース、ギター、ハモリまで全部自分でやりました。もちろん録音に関してはエンジニアに協力してもらいましたけどね。タイトルは、KYONO名義としてこれがスタートという意味を込めて“YOAKE=夜明け”と付けました。
──自分1人で作ってみてどうでした?
すごく時間がかかりました。実は1年くらいかけて作ってたんです。大変でしたけど、完成したときの達成感はありましたね。制作期間の後半は時間との闘いでした。制作中に「KYONO名義のアルバムがリリースされます」というニュースがスポーツ新聞に載ったんです。それまでゆっくり作っていたんですけど、そこでケツに火が付きました。「これはまずい、もうリリース日ずらせないよ」と思って(笑)。
──楽曲に対してのビジョンは最初からハッキリしていたんですか?
やりながら見えてきた感じですね。曲を作っている最中にまた次の曲のアイデアが出てくるので3、4曲並行して少しずつ進めていました。1曲目の「EQUAL SOCIETY」は、最初にイントロのシンセのモワモワモワという音だけがある状態で、このモワモワモワにリズムを入れたらカッコよさそうだなという感じで、どんどんイメージを広げていきました。
──それは、バンドでほかのメンバーに指示を出しながら音を作っていく作業とはまったく違いますか?
僕は基本的にバンドのときは、そんなにわがままを言わないというか、独裁的にならないようにしているので(笑)。バンドだとメンバーそれぞれがキャラクターや色を持っているので、その人なりの音になればいいと思っています。そういう意味では、「YOAKE」にはとことん自分のこだわりを突き詰めました。
──制作する中で発見した新たな自分みたいなものは何かありましたか?
「あ、俺1人でできるんだな」と思いました(笑)。
思いっきりメロディ重視
──トラック作りはどうでしたか? トラック作りははっきりとした正解があるわけではないから、やればやるほどキリがないとよく聞きますが。
ホント、その通りです。やればやるほどカッコいい音になっていくので、マスタリングの前日までミックス作業をしていました。エンジニアの小西(康司)さんには「いい加減にしろ」と言われました(笑)。ミックスしているときは楽しかったし、「どこまでカッコよくなるんだろう」と思っていたんですけど、今聴き返すともう少しいい音にできたんじゃないかなと思ってしまいます。
──そういった話もよく聞きます。ミックスにおいてこだわったのはどのあたりですか?
音質です。キラキラ感というか、どこまで自分のイメージする音質感に近付けられるかという部分にはこだわりました。小西さんの横須賀のスタジオに通ってミックスしたり、横須賀に行く途中に後輩のスタジオがあるのでそこでまた音を入れたり。それでまた家に帰ってきて編集して……そういうサイクルだったので、後半はずっと頭の中がぐるぐるして、ちょっとおかしくなるというか、気が触れているような雰囲気になっていたと思います(笑)。でも逆に神経はどんどん研ぎ澄まされていって、細かい音が聞こえてきていました。
──「YOAKE」は歌メロがポップですよね。観客が一緒に歌えるようなメロディの曲もあります。ここまで歌に意識が向いたアルバムは、もしかして初めてじゃないですか? これまでは叫ぶことはあっても、歌うことにあまり意識は向いていなかった気がします。
はい。間違いないですね。30年くらい音楽活動をやってきて、「YOAKE」は一番歌に意識が向いた作品かもしれないです。
──どうして歌に意識を向けようと思ったんですか?
昔は歌メロと叫びは半々くらいのバランスがいいと考えていたんです。今回は思いっきりメロディ重視の曲が自分に作れるのか、チャレンジしたくて。でも作ったはいいけど、自分が歌ったときにイメージ通りのメロディになるかという不安もあって。自分ではない人が歌ったほういいと思った3曲は、ゲストボーカリストを入れることにしました。お願いしたのはMAH(SiM)、JESSE(RIZE、The BONEZ)、Tokyo Tanaka (MAN WITH A MISSION)。みんなキャラが立っているので、それぞれ合いそうな曲を考えてお願いしました。
──面白いですね。自分が曲を作ったはいいけど、自分にうまく歌えるかどうかは、歌ってみなければわからない。
歌ってみて、「あ、違った」となる感じですね。頭の中で浮かんだリズムやコードをいざ録ってみたらイメージと違ったからキーを変えたりとか、自分が歌ってしっくりくるメロディに変えていきます。なんか、作る側と歌う側で違う自分がいるんですかね(笑)。
ほかの人に歌ってもらってもいい
──KYONOさんはボーカリストとしての自分をどういうふうに評価していますか?
うーん。たぶんですけど、周りの人よりもボーカリストという意識が弱いのかもしれないです。
──じゃあ、何をする人ですか?
そう言われるとボーカリストなんですけど(笑)。ギターを弾くよりも、ベースを弾くよりも、歌が一番自信はあるので。でも、歌うより作品を作るほうが好きなのかもしれないですね。作った作品は結局自分が歌うしかないんですけど、気持ち的にはほかの人に歌ってもらってもいいくらいには思っています。
──そうなんですか?
ただ、たぶん自分じゃないと歌えないだろうなという曲もあります。それが「YOAKE」だったりするんですけど。
──例えば今後2ndアルバムをリリースするときに、「この曲は俺が歌うよりもあの人が歌ったほうがカッコいいから任せます」ということもありえるわけですか?
ありえますね。
──KYONOのソロアルバムを買ったのにほかの人が歌っている状況は、いいんですか?(笑)
あはは(笑)。例えば女の人の声が欲しかったり、そういう部分もあるので。まだ女性の声を取り入れるのはやったことないですけど。あとやっぱり、自分の声にいつか限界がくると思っているので。
──昔とキーは変わりました?
昔よりも高くなってますね。なぜか高い声が出るようになったんです。いや、高くなったというよりも、下も昔より低音が出るようになったし、もしかしたら少し幅が広がったのかもしれないです。それは自分のイメージに近い声を一生懸命出そうとしていた結果、そうなったんだと思います。
──イメージやビジョンが自分の力よりもほんの少し上にあって、それを実現するために努力をしたらそうなったという感じでしょうか。
そういう感じですかね。
──理想的じゃないですか。
ハードルを少しずつ上げていってるのかもしれないですね。
──「YOAKE」の制作作業から得られたものはありますか?
次の段階につながったことですかね。「YOAKE」を作ったことで、ライブがやれたし、ライブDVDをリリースできた。そしてライブをやっていく中で、こういう曲があればもっとお客さんが楽しめるんじゃないかとか、新たなイメージやアイデアも湧いてきた。この流れが楽しくて。
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KYONO BANDメンバーが鳴らす音でイメージが広がる
- KYONO「KYONO LIVE -The Beginning of Dawn-」
- 2019年9月18日発売
Music Securities,Inc. / MUFFIN RECORDS. -
[DVD+CD] 4320円
VCBM-2014~5
- DVD収録内容
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- EQUAL SOCIETY KYONO Ver.
- DOMINATION
- BREED KYONO Ver.
- YOAKE KYONO Ver.
- FLY!!!
- INFLUENCE
- SUN IN CLOUD
- CREATURES
- ONE WORLD
- MIRAI x SEKAI -Acoustic Ver.-
[BONUS TRACK]
- DRIVE (MV Mix)
- The Making of -The Beginning of Dawn-
- CD収録曲
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- DRIVE
- SAILING THE LIFE
- KYONO(キョーノ)
- 神奈川県横浜市出身のボーカリストで、1985年に結成、2006年に活動休止したTHE MAD CAPSULE MARKETSのメンバー。2006年にはDJ STARSCREAM(Sid #0 of Slipknot)とのコラボレーション楽曲「HAKAI(Deathtroy)」が、映画「デスノート the Last name」のトリビュートアルバム「The songs for DEATH NOTE the movie ~the Last name TRIBUTE~」に収録された。同年からハードコアバンドT.C.Lのメンバーとして活動を開始し、2007年8月にソロプロジェクトWAGDUG FUTURISTIC UNITYを始動。2012年にはDJ BAKUとのユニット!!!KYONO+DJBAKU!!!を結成した。2016年には宮藤官九郎監督映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」主題歌の作曲を担当。2018年10月には個人名義初のアルバム「YOAKE」を発表し、2019年9月には「YOAKE」のリリース記念ライブ「YOAKE RELEASE PARTY -The beginning of dawn-」東京・WWW X公演の模様を収録したライブDVDを発売した。
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