ナタリー PowerPush - 空想委員会
100円のネクタイがつかんだ“現実”
オートマ免許でマニュアル車を運転してきた
──今作「種の起源」でメジャーデビューですね。メジャーデビューの話を聞いたときはどうでした?
岡田 うれしかったですね。メジャーって選ばれた者だけがたどり着く遠い存在だと思っていたので。
佐々木 自覚もしなくちゃいけないと思いましたけど、やっぱりメジャーデビューできるっていうことは、選ばれた特別な存在になるってことでもあるので。これからももっともっといろいろ考えながら試行錯誤してやっていきたいなと思いました。
──これまでとギア変わりました?
佐々木 いや、僕はずっとトップギアですね。トップギアでがんばってきたことが評価されたと思ってるんで、このままトップギアでいきたいです。
──お2人はどうですか?
三浦 ずっと必死だもんね。
岡田 ずっと必死。オートマの免許しか持ってないのにマニュアル車を運転しなきゃみたいな。やり方わかんないなりに必死に考えながら、でも状況はどんどん進んでいくっていう感じです。
佐々木 僕ら、インディーズの頃から自分たちでいろいろやってきたんです。自分たちで車に段ボール積んでタワレコにCD納品しに行ったりとか。だから本当にマニュアル車を運転してきた感じするね。
音作りを追求できた
──メジャーとインディーズで作り方の違いって何か感じました?
佐々木 まずスタジオが大きかったですね(笑)。あと今回、テックさんが入ったので音作りに関して、前よりも追求できました。ギターをいろいろ弾かせてもらったり。
三浦 気合いは入りました。関係者が増えるということは、その方々の期待感とかもありますし、責任も感じるし。それに応えてこそ、メジャー所属のバンドだなって思ったので、必死レベルを上げた感じです。デモも100曲くらい作りましたし。
──作る曲は変わりました?
三浦 メジャーに行くからっていう意識はあんまりないですね。ただインディーズ時代の積み重ねもあるので、おのずと変わっていくだろうなっていうのは思ってて。実際変わった部分も変わらない部分も出ました。
──具体的にはどこが変わりました?
三浦 サウンド面ですね。これまでは表現したくても表現できなかったことができるようになったんじゃないですかね。
岡田 例えば「ラブトレーダー」には初めて鍵盤が入ったんです。前から三浦さんが出すデモの段階で、リフとかフレーズをピアノで弾いてくることがあったんですけど、最終的にはそれを使わなくて。でも今回は使ってみました。
──今回はなぜ使ったんですか?
佐々木 今回のアルバムを作るにあたって「空想らしさを残しつつ飽きないアルバムにしたい」っていうのと、「変わっていく部分も見せたい」っていうのが大きなテーマとしてあって。今までやったことないこと、新しいことに挑戦したいと思っていたので、いいフレーズだし使ってみようっていう発想になりました。
岡田 これを使えたのは、空想にとって大きいことなんじゃないかなって思います。
──今回「To DARWIN」というインストの曲も入っていますね。
佐々木 これまでの作品に入れたインストの曲もそうなんですけどアルバムに入ってる曲のフレーズをモジって構成されてるんですね。だから1個1個紐解いていくと、全部アルバムのどれかの曲なんですよ。なので最初から最後まで聴いて、もう1周したときに違うように聞こえると思います。さらに次聴いたらさっきまで聞こえなかった音が聞こえたりとか。そういう楽しみを増やしたいっていうのがあって入れました。いいインターバルにもなるし、遊び心も伝えられますし。
三浦 空想委員会の武器は歌詞だけじゃなくて、サウンドもだと僕は思ってるので、そこでの勝負はし続けてほしいですね。
「空想委員会の“種”が始まる」
──今回、今までと比べると恋愛の曲が少ない印象を受けたんですけど、何か変化があったんですか?
三浦 単純に恋愛してないからですね。出会いってどこにあるんですかね?ってずっと思ってます(笑)。ただ、今回自分の中で一番大きかった事件はメジャーデビューで、それについてずっと考えてたので、こういう歌詞になりました。
佐々木 三浦さん、「種の起源」っていうタイトルの意味説明して。
三浦 メジャーデビューするときに、ファンの方にはやっぱり、メジャーに行って変わっちゃうんじゃないかっていう意見ももらったんです。で、先日インディーズ卒業ワンマンのMCで、「空想委員会は変わりますよ」という話をして。ただメジャーに行って誰かに言われたからとかじゃなくて、これから全力で音楽を広めるためにやろうとするなら状況状況で対応しなきゃならないので、そういう意味で変わるよと。でも、変わらない部分は変わらない部分で残ってて。例えばライブに来た方と楽しい時間を過ごしたいなとか、学校にちなんだ企画とか。そしたら実際、音楽性でも変わった部分と変わらない部分が出たので、今回のCDはその進化の過程を見せられればと思い、「空想委員会の“種”が始まる」という意味で「種の起源」と付けました。
佐々木 僕、この理由がすごいいいなと思ってるんです。なので、歌詞が思いっきりガラッと変わった印象はないんですけど、メジャーデビューするっていう意識的な部分で変わってきてるような気はします。「カオス力学」だったり「空想進化論」なんてもろにそうで。俺もしっかりついていかなきゃって思えました。
- メジャーデビューアルバム「種の起源」 / 2014年6月4日発売 / キングレコード
- 通常盤 [CD+DVD] / 2800円 / KIZC-255~6
- お試し価格盤 [CD] / 2000円 / KICS-93066
収録曲
- カオス力学
- 八方塞がり美人
- 残響ダンス
- エリクサー中毒患者
- ラブトレーダー
- 主の機嫌
- To DARWIN(instrumental)
- ドッペルゲンガーだらけ
- 「ユートピア」検索結果
- 空想進化論
- 自然選択説(※通常盤のみ)
空想委員会(クウソウイインカイ)
三浦隆一(Vo, G)、佐々木直也(G)、岡田典之(B)からなる3人組ロックバンド。2011年にリリースしたインディーズデビュー作「恋愛下手の作り方」がタワレコメンに選ばれ、一気に知名度を上げる。その後もハイペースでCDをリリースし、各地のイベントやフェスに出演。2014年2月にはゲスの極み乙女。との共同ツアーを開催し、話題を集めた。2014年6月にキングレコードから「種の起源」をリリースし、メジャーデビュー。恋愛に対する不平不満や、ひねくれた感情を書いた独特の歌詞が、学生を中心に多くの共感を呼んでいる。