ナタリー PowerPush - 空想委員会
100円のネクタイがつかんだ“現実”
空想委員会がメジャーデビューアルバム「種の起源」を6月4日にリリースする。
彼らにとって初のフルアルバムとなる今作。勇気を出せない学生の恋愛ソング「ラブトレーダー」や教室での憂鬱を歌った「『ユートピア』検索結果」など彼ららしい楽曲が並ぶ一方、自身を鼓舞する「カオス力学」や、変わっていく決意をあらわにした「空想進化論」など、バンドとしての自信や決意も強く感じられる作品に仕上がっている。
ナタリー初登場となる今回、3人にインタビューを実施。初めはやる気のなかったという3人がメジャーデビューまでたどり着いた経緯や今作に込めた思い、そしてモヤモヤした学校生活を歌い続ける理由などを聞いた。
取材・文 / 小林千絵 インタビュー撮影 / 臼杵成晃
バンドをクビになったボーカルと、ボーカルが抜けたバンド
──バンドの結成の経緯から教えてください。
三浦隆一(Vo, G) 最初は僕が違うメンバーと空想委員会っていうバンドを始めて。佐々木と岡田は第3期メンバーです。別に入れ替わり制じゃないんですけど(笑)。1期、2期のときは僕が「空想委員会」という名前を持ったままクビっていう状態で。佐々木と岡田のお2方に協力いただいて、第3期でメジャーデビューまで来ました。
──三浦さんとお2人はどこで知り合ったんですか?
佐々木直也(G) 岡田くんは三浦さんと対バンしたことがあって知ってたんです。で、好きだったんだよね?
岡田典之(B) 第1期から知ってました。その頃から「この人といつかバンドやるぜ」って勝手にたくらんでいて。
佐々木 そしたら三浦さんが第2期をクビになったのと同じ時期に、僕と岡田くんが一緒にやってたバンドのボーカルがいなくなってしまって。
岡田 三浦さんから「サポートでもいいから手伝ってくれ」って連絡が来たんです。で、こっちのバンドもそういう状態だから、「いいギタリストいますよ。絶対三浦さんのその声とメロディに合いますよ」って佐々木も誘ったのが始まりです。
三浦 ただバンド名は「空想委員会」なんですけど(笑)。
佐々木 こっちのほうが人数多かったのに(笑)。
「空想委員会」=くだらないことをやっているちゃんとした団体
──バンド名を変えようとは思わなかったんですか?
岡田 思いました(笑)。横文字でカッコいいものに。
佐々木 そしたら(三浦に)「ダメ!」って言われて。「はい、わかりました!」って。
──バンド名を残したかった理由はなんですか?
三浦 横文字のバンドがいっぱいいたのでまず差別化を図ろうと。あとは「空想委員会」っていう名前を自分で気に入っていて。というのは、「空想」というすっごいくだらないことをやっている、ちゃんとした団体(=「委員会」)っていう組み合わせが自分的にすごいヒットしたんです。なので「これでなんとかお願いします」って2人に言いました。結果残してよかったかなと。
佐々木 そうだね。
三浦の声とメロディに惹かれた
──先ほど、岡田さんはいつか三浦さんと一緒にバンドを組みたいとたくらんでいたとおっしゃっていましたけど、どういうところにピンときたんですか?
岡田 まず声がちょっと不思議な声だと思って。高い通る声っていうよりも、体の真ん中にドスッとくるようなミット系の響きを持ってる声だなと。それと曲のメロディラインが非常に素敵だなと思いました。僕は歌を大事にするバンドっていうのをずっとやりたかったので。
佐々木 三浦さんは2期メンバーに「バンド向いてないんじゃない?」って捨て台詞を吐かれてお別れしたみたいで。でも全然そういうふうには見えなかった。声が特別だなって思って、音源を聴いて衝撃だったのは今でも覚えてます。今までバンドをやってきたボーカルの中で一番惹かれました。
三浦 2期のときは楽器隊がめっちゃ音大きくて、ライブハウスに出るたびに「歌が聞こえない」「空想委員会の弱点は歌だ」って言われてたんですよ。だから「俺の声が小さいのか」ってずっと悩んでたんですけど、このメンバーは「歌を生かすように音作りすればいいじゃん」ってやってくれて……。ありがとうって感じです(笑)。
──ではこの3人になってからは順調に?
三浦 いや、最初は不安でしたね(笑)。2人にやる気がなくて。佐々木は曲の練習してこないし、岡田はのんびりしてたし。
岡田 「まあチャンスがあれば…」みたいな甘いこと言ってましたね。
三浦 なので「とりあえずサポートでいいのでお願いします」って始めたんです。
佐々木 当時は仕事もしてたんで、ライブも2カ月とか3カ月に1回くらいのペースでやっていて。で「懺悔録」(2011年1月発売)を作るときに、これからは真剣に取り組んでいこうよって話し合いをして。そこからは一生懸命やりました。
- メジャーデビューアルバム「種の起源」 / 2014年6月4日発売 / キングレコード
- 通常盤 [CD+DVD] / 2800円 / KIZC-255~6
- お試し価格盤 [CD] / 2000円 / KICS-93066
収録曲
- カオス力学
- 八方塞がり美人
- 残響ダンス
- エリクサー中毒患者
- ラブトレーダー
- 主の機嫌
- To DARWIN(instrumental)
- ドッペルゲンガーだらけ
- 「ユートピア」検索結果
- 空想進化論
- 自然選択説(※通常盤のみ)
空想委員会(クウソウイインカイ)
三浦隆一(Vo, G)、佐々木直也(G)、岡田典之(B)からなる3人組ロックバンド。2011年にリリースしたインディーズデビュー作「恋愛下手の作り方」がタワレコメンに選ばれ、一気に知名度を上げる。その後もハイペースでCDをリリースし、各地のイベントやフェスに出演。2014年2月にはゲスの極み乙女。との共同ツアーを開催し、話題を集めた。2014年6月にキングレコードから「種の起源」をリリースし、メジャーデビュー。恋愛に対する不平不満や、ひねくれた感情を書いた独特の歌詞が、学生を中心に多くの共感を呼んでいる。