音楽ナタリー PowerPush - 黒夢

清春の告白

1番は作曲家、2番は作詞家、3番はシンガー

──あるインタビューで清春さんは、曲を作る段階では黒夢もsadsもソロも区別は付けてない、とおっしゃってましたよね。それがどこかの段階でそれぞれに振り分けられる、と。

それは復活以降ですよね。とにかく曲を1日に3~4曲作るんですよ、2週間ぐらい。スタジオに入ってとにかく作りまくる。没のものは途中でやめて、完成するまで作って1日3曲作るっていうのを続けるんです。そこでは黒夢用、sads用、ソロ用って区別は付けない。やってるとできなくなっちゃうんで。とにかくたくさん作って、そこで人時くんがベース弾いてる姿が浮かんだり、黒夢って文字だったり……自分がギター弾きながら歌ってるのか、マイクスタンドで歌ってるのか、ハンドマイクなのか、そういうイメージで分けたりとか。テンポだったりギターから作ったのかリズムから作ったのかメロから考えたのかによっても違いますし。利点としては、人間って激しい曲を作ってると、ふっとメロウな曲を作りたくなったり、ねちっこい曲ばかり続くと激しい曲をやりたくなったりとかするんですよね。そういう意味ではちょうどいいですね。ソロで激しい曲ばかり作ってもしゃーないし、黒夢で変にねちっこい曲ばかり作ってもしゃーない。そういう意味では区別付けずに作って振り分けるというのは、いいバランスだと思ってます。

黒夢

──そこでポップ性というのは加味されないんですか。これはシングル向けに作る、とか。

ああ、シングルにできそうな曲ができちゃった場合には「シングル」ってフォルダがあるんです。そこに放り込んで、さらに考える。ただsadsではシングルっていう概念はほとんど考えてないですね。シングルを作るとしたら、ソロなのか黒夢なのかっていう。特にソロの曲は全部シングルにしてもいいような感覚で作ろうと思ってるんで。あとは……レコード会社の担当ディレクターに全部渡して「この中から黒夢で使いたい曲を取って」っていうやり方もあります。信頼できるようなスタッフやディレクターがいれば、委ねることもある。

──あらかじめコンセプトを決めて作るのではなく、作りたいものを作ると。レコードを作るときはソングライターという意識が強いわけですか、プロデューサーというよりも。

今はねえ……僕の中では……作曲家っていうのが1番。2番は作詞家。3番はシンガー。

──シンガーは3番ですか! へえ……。

うん。作詞作曲する段階で、歌いやすくしちゃうんで。作詞作曲でシンガーとしての自分をかなり助けてるという意識がありますね。例えば「この曲イマイチだけど歌でよくしよう」とか思ってなくて。歌はそのときのベストを尽くすんですけど、うまく歌えるように作詞作曲をしてますね。

──ああ、そうですか。清春さんの声と歌があれば、どんな曲でもカッコよく聞こえるんじゃないかと思いますけど。

それがねえ、あるんですよね、自分の中で歌いにくい曲と歌いやすい曲が。もちろん自分で作るから歌いやすい曲しか作らないですけど、たまにできちゃうときがあるんですよ、メロの感じとか、この歌詞だと歌いにくいとか。そういうときは歌いやすいものしか採用しない。たまにカラオケとか連れて行かれると、全然歌えない曲とかあるんですよ。サザンオールスターズの曲とかまったく歌えないですからね、僕。

──だいぶ前ですけど、矢沢永吉のトリビュートにsadsで参加してたでしょ(2001年にリリースされた「JOYRIDE ― 矢沢永吉 スーパー・カバー・トラックス」収録の「I SAY GOOD-BYE, SO GOOD-BYE」)。あれなんかめちゃくちゃよかったですけどね。

あれも自分の歌いやすい曲選んでますから(笑)。トリビュートはモッズとかhideさんとか、こないだやったDEAD ENDとか参加してますけど、自分が歌いやすい中で一番好きな曲を選んでますから。歌いやすいか歌いにくいか別として一番好きな曲を選ぶんじゃなくて。

──外部の作曲家と組むとか、そういうお考えはないんですか?

全然いいんですけど、やっぱりそこでも歌いやすい曲を選ぶでしょうね。1回ソロでZIGGYの森重(樹一)さんに作ってもらったことがあって。お互いの曲を作って、歌詞は自分で書いて歌うっていう企画だったんですけど、やっぱり森重さんの歌いやすそうな曲を作っちゃうんですよ(笑)。たぶん森重さんも僕の歌いやすそうな曲を作ってくれたんだろうし。たまたま気に入っていただけて、僕も歌いやすい曲をいただいたし。だから……そう考えるとプロの歌手の方々はすごいな、と思いますけどね。どんな曲でもたいてい歌っちゃうんで。

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──あえて難曲に挑んで自分の歌唱スキルの限界にチャレンジして歌いこなすとか……。

やらないですね。シンガーとしての意識は薄いんですね。

──なるほど。作曲作詞が1番、ということはやはり楽曲をじっくり1人で作っていくソロという形態が今の清春さんの指向には合っている。

うん、そうですね。バンドだともうちょっとパフォーマー、というかアジテイターとしての意識が強くなるかもしれない。ライブが終わったあとに、お客さんたちが満足そうに、幸せそうに帰っていくのを見て、ああよかった、と思うのはソロなんです。

──あ、そうですか。ちゃんと伝えたい、わかってもらいたい、という気持ちがソロのほうが強い、ということなんですかね。

うん。バンドだと変な話、ぶっ壊すとか、衝動みたいなものも大事なんで。強くなったような気分になっちゃうというか。そういうのはソロではあまりないですね。「オラー!」って感じでマイクをぶん投げちゃうような、そういう魔法があるじゃないですか、バンドには。でもソロははじめからそういうものはない、という前提でスタートしてるんで。

──そういうこともあって、じっくり聴いてもらうようなソロのほうが、今の清春さんにはしっくりくる。

うん。やっぱり……そうですね。ずーっと聴けるもの、ずっと歌ってられるもの、というのがいいですね。自分の音楽を聴き続けてもイヤにならない、ずっと聴いていられる、っていうのが目標ですね。僕の場合ずっと聴いていられるものがMORRIEさんぐらいしかいなくて。そういうのって、人生に1個か2個しかないと思うんですよね。いろんなものが好きなんだけど、本当に信じられるもの、包まれるような感覚があるもの。子宮の中に入ってるような感覚。安心できる感じがある。僕もそういうものを目指したいんですよ。

──なるほど。その一方で、黒夢の熱狂的なライブもあって。その両輪があってこそ清春さんの音楽、ですよね。

いいバランスだと思います。今、人時くんと僕の信頼関係はすごく強いものがある。それも復活しなければなかったことなんで、すごくありがたいことですよね。それも東京に出てきて組んだんじゃなくて、地元で一緒に出てきた子なので、ミュージシャンとしてもそうですけど、人間として、人生としてもよかったと思います。

──さて、これから始まる後半のツアーはどんなものになりそうですか?

前半のツアーでは、シングルとか売れた曲を全部やったんですよ。なので後半では、恐る恐る復活後の2枚のアルバムの曲をメインにしたセットをやりたいなとは話してます。

──恐る恐る、ですか(笑)。でもあるバンドの人が言ってましたけど、新作で何か新しいことをやると、直後のツアーではみんな戸惑ってノリが悪いけど、その2つあとぐらいのツアーになるとその曲がまた新たな定番になってめちゃくちゃ盛り上がる、ということもあるみたいですね。

うんうん、わかります。今は「黒と影」よりは「Headache and Dub Reel Inch」の曲のほうが盛り上がるんですよ。時間を置くといいみたいですね。

──だから恐る恐るやらないでください(笑)。

(笑)。そうですね。

New Single(ライブ会場限定販売)タイトル、価格未定
発売会場

2015年2月3日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
2015年2月5日(木)大阪府 なんばHatch
2015年2月9日(月)愛知県 Zepp Nagoya

※上記3公演のチケットをお持ちのお客様のみご購入いただけます。各会場とも販売数量には限りがございます、予めご了承下さい。

黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.2「毒と華」
  • 2014年12月4日(木)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2014年12月5日(金)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年12月12日(金)京都府 京都FANJ
  • 2014年12月13日(土)京都府 京都FANJ
  • 2014年12月14日(日)滋賀県 SHIGA U★STONE
  • 2014年12月20日(土)富山県 MAIRO
  • 2014年12月21日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2014年12月23日(火・祝)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年12月24日(水)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年12月30日(火)大阪府 なんばHatch
  • 2014年12月31日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年1月6日(火)東京都 新宿LOFT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月7日(水)東京都 新宿LOFT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月10日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年1月11日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年1月16日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年1月17日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年1月21日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2015年1月22日(木)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2015年1月28日(水)大阪府 BIGCAT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月29日(木)愛知県 THE BOTTOM LINE(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月30日(金)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2015年2月3日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2015年2月5日(木)大阪府 なんばHatch
  • 2015年2月7日(土)岐阜県 岐阜club-G
  • 2015年2月8日(日)岐阜県 岐阜club-G
  • 2015年2月9日(月)愛知県 Zepp Nagoya

2015年1月、2月公演はイープラスにて2次プレオーダー申し込み、12月8日(月)23:59まで受付中!

スマートフォン向け音楽プレイヤーアプリ「黒夢公式アプリ」
黒夢(クロユメ)

清春(Vo)と人時(B)の2人からなるロックバンド。1994年2月にシングル「for dear」でメジャーデビューし、「優しい悲劇」「Like @ Angel」「少年」など数々の名曲を発表。1995年5月にリリースされたアルバム「feminism」以降、すべてのアルバムがチャート上位を記録する。しかし人気絶頂のさなか、1999年1月に無期限活動休止を発表。その後、清春はsadsを結成し、人時もソロプロジェクトを始動する。2009年1月に日本武道館にて解散ライブを開催し活動に一旦終止符を打つも、翌2010年1月に再始動を発表。2011年2月にシングル「ミザリー」をリリースしたほか、同月に国立代々木競技場第一体育館にて復活ライブを敢行。同年11月に復活後初めてとなるアルバム「Headache and Dub Reel Inch」、2014年1月にアルバム「黒と影」をリリースした。2014年7月より最後のロングツアーと銘打ち「黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP」を開催中。