音楽ナタリー PowerPush - 黒夢

清春の告白

リスナーとズレがある

──黒夢のほかにアウトプットがいくつもあるのはよかったんでしょうね。黒夢で何もかも全部やろうと思ったら、けっこう大変だったかも。

黒夢

けっこう大変だと思います。例えばダムド(The Damned)とか、今でもやってるじゃないですか。でもやっぱり盛り上がるのは「Love Song」とか「New Rose」みたいな昔の曲で。新しい曲もやってるんでしょうけど、ダムドって名前でやってると、そこではなかなか新境地を拓けないわけで。お客さんが観たいものと僕らがやりたいものがあまりにもズレちゃうと、僕らが一番感じたいライブでの高揚感みたいなものが体験できなくなっちゃうと思うんですよ。

──黒夢に求められるもの、イメージされるものと違うことをやろうとすることの困難さを感じている、ということですか?

うーん……思いのほか……。復活した限りは、ライブだけとかベスト盤だけ出すっていうのは活動してることにならないと思うんです。ちゃんと新譜を作って、初めて活動してると言えるわけで。なので、黒夢は復活してから2枚アルバムを作ったんですけど、お客さんの愛着という部分では昔の曲に敵わない部分もありますね。もちろん今の曲を愛してくれる子もいますけど。

──なるほど。

逆にソロとか最近の僕の活動を全部知っている人からすると、「少年」や「Like @ Angel」みたいな曲はトゥーマッチなんですよ。でも黒夢しか観に来ない人は、そういう曲を聴きたいわけですよね。だからその狭間で……たぶんほんとにやりたいことを黒夢でやったら、思いきりズレるだろうなって思うし。新しいアルバムを作っても、やっぱり少しズレてるんですよ。

──復活後の黒夢のアルバムが、黒夢を待っているお客さんの期待に応え切れていない、ということですか?

うん。ソロのお客さんとはズレてないと思うんですけどね。でも黒夢を待ってる子たちとはズレてるかなと。だって復活した第1弾の「Headache and Dub Reel Inch」(2011年リリース)はけっこう同期を導入したんですよね。それでもダメでしたからね。

──あれ、めちゃくちゃカッコよかったじゃないですか。

と、思うんですけどね。同期を除いたら元の黒夢と同じじゃん、と思うんですけど、同期がある、ピコピコしてるってだけでダメみたいで。今日本で活動してるバンドってほとんど同期が入ってるし、今の時代だったら普通じゃないかと思うんですけど、やっぱり昔の黒夢を好きだった子には……その当時20歳ぐらいなら、今は35歳ぐらいだと思うんですけど、その子たちが信じたものとは違うんですよね。でも当時……4年ぐらい前ですけど、別にいいじゃんって思ってたんです。今の時代がこうだし、僕らもミュージシャンとしていろいろ経験してるから、多少ピコピコしようがシーケンスが入ってようがいいんじゃない、って思ったんですけど。

──要するに黒夢を2010年代の、今の音楽として鳴らすためにシーケンサーを使って同期ものを入れてみたけど、受け入れてもらえなかった。

うん。だからこの2~3年、同期を外してみようかなと思ったり。ライブで新旧取り混ぜたメニューにするにしても、それっぽくない(同期ものではない)曲を選んじゃう自分がいるんですよね。活動再開後にけっこうライブをやってるので、結果はある程度出てるんですよ。それを待ってる子たちの前で、僕らも興奮できないようなプレイをしたくないっていうのがあって。ファンに合わせる、ということじゃないんですけど、やってて気持ちいいか悪いかって考えたときに……といって、ソロをずっと追っかけてくれてる子たちにとっては、昔の曲ばかりじゃトゥーマッチだし。黒夢しか来ない子たちは、新しい曲ばかりじゃついてこれないし。

まだ負けたくない

──今の清春さんの感性を素直に反映できるアウトプットの形というと、ソロってことになるわけですか?

うーん……ソロでの自分の音楽は……変な言い方かもしれないけど、大事にしてますね。うん。それが、黒夢だったりsadsだったり、そういうハードな部分を求めたい、ライブで暴れたい子たちにとって違ったとしても、「ソロだから別にいいじゃん」って言えるんですよ。でも黒夢とかsadsになると、来てくれた子たちには思いきり楽しんで帰ってほしいと思うし、昔よりも全然。それがたぶん解散とか活動停止したバンドのボーカリストが、いろんな形態で表現していくときに、背負わなきゃいけない十字架、というか運命なのかなと思います。ずっと黒夢だけやってれば、また違ったのかもしれないですけど、あのときはとにかくやめたかったんで。今はアウトプットがいっぱいあるし、うまく分散できてると思いますけど。実際、黒夢、sads、ソロとあって、ファンの人はほとんど被ってますけど、でもアンケートとか見ると、いつ出会ったか、いつファンになったかで全然違うんですね。今は黒夢の全盛期を知ってて、僕のソロの音楽も知ってるって人はほとんどいないですよ。

清春(Vo)

──あ、そうですか。

後追いで聴く人はいるだろうけど、ソロのファンはほとんどsadsの後半ぐらいからじゃないかな。黒夢は黒夢で、また別の人が来てる感じです。

──でも、ファンの新陳代謝があるのは健全ですよね。

うん、そうですね。黒夢しかやらなかった場合は、ずっと残ってる人の割合がもうちょっと高かったと思うんですよね。だけど……1回離してるし。僕もそうですけど、若い頃に好きなバンドが解散するって、それこそ勤めてた会社が潰れたぐらいのショックがあるじゃないですか。上司を恨んでみたり……信じてたはずなのに、裏切られたと思って。ああ、違うことをしたいんだってがっかりしたりするもんですよね。会社変わっても同じ仕事をずっと続けようって人はそんなに多くない。減ったと思うんですよ。だから……ずっとやってるバンドとかうらやましいですからね、今となっては。無理して続けてる場合もあると思うけど、活動停止だけしておいてソロをやって、でもバンドは続いてるってパターンはけっこうあると思うんですけど、それがうらやましい。

──名古屋の大先輩のTHE STAR CLUBや原爆オナニーズはいまだに続いてますからね。

うん。でもその一方で、まだ負けたくないっていうのがあります。例えば売れることがすべてでは全然ないし、そんなふうにはまったく思ってないですけど、黒夢でもsadsでもヒット曲があるのにソロではない、って言われると、やっぱり悔しいんですよ。だからもっといい曲を作りたい、というのもあって。まだ負けたくない、という気持ちもあるんです。

──自分の過去のキャリアに負けたくない、ということですか。

うーん……結局、曲を作った時期だけだと思うんですけどね。同じ自分が作ったとしてもバンドの曲ならそれは黒夢の曲、sadsの曲としてインプットされるんで、ソロではないわけです。バンドが好きな子たちっていると思うんですよ。たとえ同じ曲であっても、バンドじゃなくソロになると聴かなくなっちゃう人たちがいるんで……仕方ないとは思うんですけど、そこに負けたくない。

New Single(ライブ会場限定販売)タイトル、価格未定
発売会場

2015年2月3日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
2015年2月5日(木)大阪府 なんばHatch
2015年2月9日(月)愛知県 Zepp Nagoya

※上記3公演のチケットをお持ちのお客様のみご購入いただけます。各会場とも販売数量には限りがございます、予めご了承下さい。

黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.2「毒と華」
  • 2014年12月4日(木)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2014年12月5日(金)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年12月12日(金)京都府 京都FANJ
  • 2014年12月13日(土)京都府 京都FANJ
  • 2014年12月14日(日)滋賀県 SHIGA U★STONE
  • 2014年12月20日(土)富山県 MAIRO
  • 2014年12月21日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2014年12月23日(火・祝)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年12月24日(水)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年12月30日(火)大阪府 なんばHatch
  • 2014年12月31日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年1月6日(火)東京都 新宿LOFT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月7日(水)東京都 新宿LOFT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月10日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年1月11日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年1月16日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年1月17日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年1月21日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2015年1月22日(木)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2015年1月28日(水)大阪府 BIGCAT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月29日(木)愛知県 THE BOTTOM LINE(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月30日(金)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2015年2月3日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2015年2月5日(木)大阪府 なんばHatch
  • 2015年2月7日(土)岐阜県 岐阜club-G
  • 2015年2月8日(日)岐阜県 岐阜club-G
  • 2015年2月9日(月)愛知県 Zepp Nagoya

2015年1月、2月公演はイープラスにて2次プレオーダー申し込み、12月8日(月)23:59まで受付中!

スマートフォン向け音楽プレイヤーアプリ「黒夢公式アプリ」
黒夢(クロユメ)

清春(Vo)と人時(B)の2人からなるロックバンド。1994年2月にシングル「for dear」でメジャーデビューし、「優しい悲劇」「Like @ Angel」「少年」など数々の名曲を発表。1995年5月にリリースされたアルバム「feminism」以降、すべてのアルバムがチャート上位を記録する。しかし人気絶頂のさなか、1999年1月に無期限活動休止を発表。その後、清春はsadsを結成し、人時もソロプロジェクトを始動する。2009年1月に日本武道館にて解散ライブを開催し活動に一旦終止符を打つも、翌2010年1月に再始動を発表。2011年2月にシングル「ミザリー」をリリースしたほか、同月に国立代々木競技場第一体育館にて復活ライブを敢行。同年11月に復活後初めてとなるアルバム「Headache and Dub Reel Inch」、2014年1月にアルバム「黒と影」をリリースした。2014年7月より最後のロングツアーと銘打ち「黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP」を開催中。