ナタリー PowerPush - 黒崎真音
自由を見つけて手に入れた新たなビートと言葉
新しい黒崎真音のパフォーマンスを見せられる
──さっきのお話で裏が取れたような気もするんですけど「X-encounter」って今の黒崎さんの気持ちがきちんと音に乗っていますよね。
変わったものを食べる気持ちがですか?
──それはあくまで一例です(笑)。特に表題曲は、ご自身が言っていた通り、新しい経験やチャレンジをすごく楽しんでいるように聞こえたんです。
そうですね。今回はちょっと新しい気持ちで取り組んでみたいなっていう部分があったので、作編曲の高瀬(一矢)さんには「私のこれまでの楽曲のテイストや、私の好きなヘヴィロック、メタル的な激しさも生かしてもらいたい」とだけお伝えして。基本的には高瀬さんに身を委ねてました(笑)。
──結果「VERTICAL HORIZON」制作時に黒崎さんが目指したというデジタル感、ダンスミュージック感がさらに強調された楽曲になっています。アガるAメロがあって、Bメロで一回ブレイクして、サビで爆発っていう展開じゃなくて、曲が進行するにつれ気持ちよくアガれる作りになっていて。しかも単にクールなだけじゃない。ちゃんとバトル系のアニメ「東京レイヴンズ」の主題歌らしく熱くてエモくもある。
もともと高瀬さんが作ったMELLさんとかKOTOKOさんとか川田さんの曲、特にMELLさんの「kicks!」や「Red fraction」がすごく好きだったので「ああいう雰囲気になりそうです」って高瀬さんからお話をいただいたときからワクワクしていて。デモを聴いたときもやっぱり「こんなカッコいい曲を歌わせてもらえるのか!」ってなっていたんですけど……。
──いざ本チャンのトラックができあがって、歌を入れてみたら実際にカッコいい曲ができあがってしまった、と(笑)。
そういう感じかもしれませんね(笑)。「Red fraction」とはまた違う疾走感と透明感があるし、アニメソングとしてもけっこう挑戦的。かなりソリッドでタイトなものになっていて。私が歌わせていただいてきたアニメソングにはなかったタイプの楽曲だけに、携われたこと自体単純にうれしいんです。あと「この曲でまた新しい黒崎真音のパフォーマンスを見せられるな」「どんなパフォーマンスを見せようかな」って考えることもすごく楽しいですし。
熱い気持ちに気付いたなら「この際だからやってしまえ!」
──その「単純にうれしかった」「すごく楽しい」感じって黒崎さんの書いた詞にも表れている気がします。
それは私自身、本当にそう思います。今日も電車の中で思ってました(笑)。
──あはははは(笑)。前のシングル「UNDER / SHAFT」についてお話を伺ったときには自分は「/」の位置にいる。「UNDER」=地下にはいないけれど、天高く伸びた「SHAFT」ほど高みにもいない。その両極の中間で状況を眺めている、と言っていて(参照:黒崎真音「UNDER / SHAFT」インタビュー)。
そうですね。
──だから石橋を叩いても渡らないタイプというか、思慮深いタイプなんだろうな、って思ってたんですけど「X-encounter」では「向かい風に逆らい 小さな羽根 広げ目指そう」「真実へと 翔けて行こう」と、ものすごくポジティブな姿勢を見せている。
この曲の歌詞は「東京レイヴンズ」の主人公の(土御門)春虎くんをイメージして書いたんですけど、この子がすごくガッツのある子で(笑)。最近の私以上に「やってみなきゃわからないだろ!」ってタイプの子だったので、その姿を観ていたら熱意というか、勇気というか、いい意味での暑苦しさというか(笑)、彼のそういう一面が私の胸に響いたんです。それで「ちょっと前向きな詞を書いてみようかな」って。だから、あの詞は本当に彼からもらったイメージをもとに作ったものですね。
──これは勝手なイメージなのかもしれないんですけど、黒崎さんって春虎みたいな熱いタイプは……。
確かに元気すぎるのはちょっと……(笑)。どういうふうに相対すればいいのか迷っちゃう感じがしちゃうと思います。「東京レイヴンズ」の中なら冬児みたいなクールで、落ち着いて周りを見渡せるキャラクターのほうがタイプですね(笑)。
──でも今、黒崎さんは春虎という人の考え方に乗れている。
考え方に乗ったというよりは、同じマインドを感じたというか。たぶんもともと私の中にも彼のような強い気持ちってあったんだとは思うんですけど、そもそもその感情の存在に気付けてなかったんです。でも、さっきのチャレンジ精神が湧いているっていう話ともある意味つながっているとは思うんですけど、最近になってようやく自分の中にもあった熱い気持ちみたいなものに気付けるようになって。だったら「もうこの際だからやってしまえ!」と(笑)。直球の作り方をしてみました。
家で何回も聴くカッコいい曲
──直球を投げるのはラクでした?
テクニック的な部分ですごく悩んだ感じですね。テンポが速い上に、全体的に符割が細かくて、さらにサビがすごく長い曲なので。最初はそのメロディにたくさんの思いを乗せたくて、1つの音符に1単語を置ける英語を散りばめてみたりもしたんですけど、そうしたら早口言葉みたいになっちゃって。今の私の前向きな気持ちや「東京レイヴンズ」という作品の魅力がちょっと伝わりにくくなってしまったんです。で、英語は作品のタイトルの「RAVENS」と、そのタイトルとダンスミュージックの世界のキーワードを掛けた「RAVE ON」っていうフレーズくらいに留めて、日本語もできるだけ言葉数を削ってみて。でも感情は伝わるようにって何回も書き直したんです。
──そうやって丁寧に言葉を刈り込んだからか、「X-encounter」って6分超えの曲なんだけど、その長さを感じさせないというか。実は熱い言葉が続くんだけど、どのフレーズもサウンド同様シャープだし、めちゃくちゃ温度が高いわけではない。だからすごくスムーズに聴けるんですよ。
私自身、すごくいい力の入れ具合の詞を書けた気はしています。最初から強い言葉を投げかけるわけじゃなくて、曲が進んでいくごとに言葉もだんだんステップアップするというか。勢いを増していく感じの詞を書けたし、歌い方もここ最近の黒崎真音にはない感じ。ちゃんと熱さや重さも残ってるんだけど、どこか無機質で、熱さや重さをクールにセーブした感じになりましたし。それが高瀬さんの熱いんだけどクールなオケにハマって。我ながらカッコいい曲になったな、とは思ってます。家で何回も繰り返し聴いていますから(笑)。
- ニューシングル「X-encounter」/ 2013年11月6日発売 / GENEON UNIVERSAL
- 初回限定盤 CD+Blu-ray 2625円 / GNCA-0312
- 初回限定盤 CD+DVD 1890円 / GNCA-0313
- 通常盤[CD] 1260円 / GNCA-0314
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収録曲
- X-encounter
[作詞:黒崎真音 / 作曲・編曲:高瀬一矢] - unchain.
[作詞:黒崎真音 / 作曲・編曲:fu_mou] - X-encounter<instrumental>
- unchain.<instrumental>
初回限定盤Blu-ray / DVD 収録内容
- MAON KUROSAKI TOUR 2013 “VERTICAL HORIZON” 2013.4.28 at SHIBUYA O-WEST
- TVアニメ「東京レイヴンズ」ノンテロップオープニング
- 「X-encounter」TV-SPOT
- X-encounter
黒崎真音(くろさきまおん)
アニソンシーンを中心に活躍する女性シンガー。2000年代のアニソンに多大な影響を受け、音楽活動を開始する。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で全話異なるエンディングテーマを歌唱。その異例ともいえるリリース形態とあらゆるジャンルの楽曲を歌いこなす高い歌唱力で大きな注目を集める。そして「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の関連楽曲すべてを収録したアルバム「H.O.T.D.」でCDデビューを果たす。その後もテレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」やOVA「薄桜鬼 雪華録」のエンディングテーマ、映画「リアル鬼ごっこ3」「同4」「同5」の各主題歌、テレビアニメ「薄桜鬼 黎鳴録」のオープニングテーマなど、多くのアニメのテーマソングを担当。その一方で2011年以来「Animelo Summer Live」に連続出演するなど国内外のアニソン系フェスに招へいされ、またmotsu、fripSideのsatとユニットALTIMAを結成し個人名義以外の活動も広く展開している。そして2012年10月にはアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のオープニングテーマを収録した5thシングル「UNDER / SHAFT」を発売し、2013年4月には2ndアルバム「VERTICAL HORIZON」をリリース。同年11月にはアニメ「東京レイヴンズ」のオープニング曲「X-encounter」を発表する。