ナタリー PowerPush - 黒崎真音
自由を見つけて手に入れた新たなビートと言葉
11月6日、黒崎真音が現在放送中のテレビアニメ「東京レイヴンズ」のオープニングテーマとして6thシングル「X-encounter」をリリースする。このシングルの表題曲は、I'veの高瀬一矢が作編曲を手がけたナンバー。そのトラックはヘヴィロックとデジタルサウンドの融合を目指した彼女の2ndアルバム「VERTICAL HORIZON」のサウンドを踏襲しながらも、よりデジタル感とループ感を強調したクールでトランシーなダンスチューンに仕上がっている。そして黒崎自ら手がける詞は徹頭徹尾ポジティブ。そばにいる「キミ」のために飛翔するヒーローをダイレクトな言葉で祝福している。
昨年10月にリリースした「UNDER / SHAFT」以来、1年ぶりとなるシングルのリードトラックにして「新たなる黒崎真音の代表作がここに誕生!!」と銘打たれたこの楽曲はいかにして生まれたのか。黒崎に聞いた。
取材・文 / 成松哲
やっと自分を自由にしてあげられた
──黒崎さんにナタリーにご登場いただくのは2ndアルバム「VERTICAL HORIZON」をリリースした4月以来(参照:黒崎真音「VERTICAL HORIZON」インタビュー)なんですけど、この半年っていかがでした?
実際の時間は6カ月なんですけど、私自身の感覚としてはすごいあっという間でした。「十鬼の絆 花結綴り」というゲームの主題歌を歌わせていただいて、その曲や関連するイベントに出たりとか、今回のシングルの「X-encounter」の準備があったりとか。あとはアニサマ(Animelo Summer Live 2013)に出演させていただいたり。いろいろやらせてもらっているうちに半年が過ぎていたって感じでした。
──その「いろいろ」を経験した感想は? 例えばアニサマで黒崎さんはセンターステージに1人で立って「君と太陽が死んだ日」をアカペラで歌っていた。あれには黒崎真音の腕力の強さを見せつけられたような気がしたんですけど。
腕力(笑)。でもそうですね。「腕力を見せつけてやるぜ!」みたいな気持ちはさすがになかったんですけど、自分らしいパフォーマンスって何かなあ?っていうことは考えてました。私の出たアニサマ最終日は声優さんが多い日で、すごく有名な声優さんや大人気の声優ユニットの皆さんがたくさん出ていらっしゃっていて。そんな中、“アニソンアーティスト”である私に何ができるんだろうって考えたら、やっぱり歌しかなかったので。みんなに一番近い場所であるセンターステージで、少しだけアカペラで歌わせてもらおうかな、と思ったんです。まあ、すっごく緊張しましたけどね(笑)。
──「まったくもって余裕」とは言わないまでも、気合い十分で臨まれたんだと思ってました。
もちろん気合いはすごく入っていたんですけど、緊張はしていました。本番前になったらなんだか急にノドが渇いてきたりとかして(笑)。でも本番は気持ちよく歌えていたし「アニソンシンガーもまだまだ見どころありますよ」っていうメッセージを少しは形にできたかな、とは思ってます。だから「いろいろ」を経験した感想としては、前よりもその「いろいろ」なことを楽しめてるなあ、っていう感じですね。
──以前はステージに上がること、歌うことがもっとキツかった?
キツかったとかつまらなかったというよりは、あまりにも必死すぎたというか。なんかこう「がんばらなきゃ!」っていう気持ちが強かったんですけど、「もっとこういうことをやりたいな」とか、今はチャレンジ精神や好奇心が湧いてきていて。いい意味で今までよりちょっと好戦的というか(笑)、気持ちが前を向いてるんです。「負けるかも」っていう考え方は払拭していこうっていう気持ちになっていますね、最近は。
──その気持ちが黒崎さんをアニサマのセンターステージに向かわせた?
そうなんだと思います。以前の私は「今、何を言えばいいのか?」「今、私がするべきことはどんなことなのか?」……。いろいろわからないことが多かったというか、自分があんまり自由になれていない感じがしていたんです。だから必死になりすぎていたんですけど、デビューして3年経って、さすがにしたいことやしなきゃいけないことがわかるようになったら、かなり気持ちがラクになったし、自分自身を自由にしてあげられた気がして。それでようやくいろんなことにチャレンジしたり、興味を向けたりすることができるようになったって感じですね。今はこれまでの中で一番いろんなことを楽しめている気がします。
宝塚観劇とゲテサークル
──具体的にはどんなことに興味が向いたり、楽しめたりしてます?
最近、宝塚歌劇団のことをすごく好きになって。「自分が生まれる前の作品に触れてみよう」という思いからアニメ版の「ベルサイユのばら」を観て、それ以来ハマってしまっていたので、宝塚のことも以前から気になってはいたんです。ある日たまたま気になってフラッと東京にある劇場に行ってみたら、「ベルサイユのばら」ではなかったのですがある公演の当日券があったので、それを買って入ったら見事にハマってしまい(笑)。今はヒマがあれば観に行っているんですけど、いつ行ってもキラキラしている役者さんたちにすごく心を洗われるんですよ。演劇って1カ月間くらい毎日同じ公演をしているわけじゃないですか。でも役者さんたちは毎日ちゃんと輝いていらっしゃる。そういう舞台を観ていると「こういうふうに自分もなりたい」「なれるかもしれない」っていうプラスな気持ちをもらえますし。……あとはなんですかね? 食べたことのないものを食べてみたりとか?(笑)
──何を食べました?
カエルを焼いたものを食べたりだとか、サンショウウオとかナマズとか(笑)。 お友達と普通にごはんを食べに行ったら、レストランのメニューにカエルがあって。それを2人で食べてみたところから始まったブームなんですけど、その後、同志を募って「ゲテサークル」というものを組みまして(笑)。今では毎月そのメンバーで誘い合っていろんなものを食べては「わっ! 何これっ!」って騒いでます。すごくストレス発散になるんですよね。実はアニサマ前にも食べて「よし、これでがんばれるね!」なんてやってましたし。今はそういう、やったことのないことをやってみたり、知らなかったことを知ったりするっていう経験が本当に快感になってるんです。
- ニューシングル「X-encounter」/ 2013年11月6日発売 / GENEON UNIVERSAL
- 初回限定盤 CD+Blu-ray 2625円 / GNCA-0312
- 初回限定盤 CD+DVD 1890円 / GNCA-0313
- 通常盤[CD] 1260円 / GNCA-0314
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収録曲
- X-encounter
[作詞:黒崎真音 / 作曲・編曲:高瀬一矢] - unchain.
[作詞:黒崎真音 / 作曲・編曲:fu_mou] - X-encounter<instrumental>
- unchain.<instrumental>
初回限定盤Blu-ray / DVD 収録内容
- MAON KUROSAKI TOUR 2013 “VERTICAL HORIZON” 2013.4.28 at SHIBUYA O-WEST
- TVアニメ「東京レイヴンズ」ノンテロップオープニング
- 「X-encounter」TV-SPOT
- X-encounter
黒崎真音(くろさきまおん)
アニソンシーンを中心に活躍する女性シンガー。2000年代のアニソンに多大な影響を受け、音楽活動を開始する。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で全話異なるエンディングテーマを歌唱。その異例ともいえるリリース形態とあらゆるジャンルの楽曲を歌いこなす高い歌唱力で大きな注目を集める。そして「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の関連楽曲すべてを収録したアルバム「H.O.T.D.」でCDデビューを果たす。その後もテレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」やOVA「薄桜鬼 雪華録」のエンディングテーマ、映画「リアル鬼ごっこ3」「同4」「同5」の各主題歌、テレビアニメ「薄桜鬼 黎鳴録」のオープニングテーマなど、多くのアニメのテーマソングを担当。その一方で2011年以来「Animelo Summer Live」に連続出演するなど国内外のアニソン系フェスに招へいされ、またmotsu、fripSideのsatとユニットALTIMAを結成し個人名義以外の活動も広く展開している。そして2012年10月にはアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のオープニングテーマを収録した5thシングル「UNDER / SHAFT」を発売し、2013年4月には2ndアルバム「VERTICAL HORIZON」をリリース。同年11月にはアニメ「東京レイヴンズ」のオープニング曲「X-encounter」を発表する。