ナタリー PowerPush - 黒猫チェルシー
くだらないブームは断固拒否! バンド史上最大の問題作「猫Pack」完成
今までの黒猫チェルシーのイメージは全部壊したかった
──ただひとつ気になるのは、黒猫チェルシーというバンドがこういうユーモラスな一面を見せてしまっていいのかっていうことなんですよね。ライブは文句なしにカッコいいのに、このDVDの映像はライブのテンションとあまりにも違って。中にはがっかりするファンもいるかもしれないですよ。
澤 そういうこれまでの曲とかのイメージだけで見られるのが窮屈だから、このDVDを作ったんです。
渡辺 バンド自体、もともとそのときの盛り上がりで始めたみたいなところがあるんで。
澤 だから言ってみたら、かっちりしたロックンロールバンドやと思うとるかもしれへんけど、ちょっと前まで豆腐投げたりふざけたことばっかりしとったわけで。そういう感じをやっぱ忘れたくないし。
──じゃあステージ上のイメージと、この映像とのギャップは意図的なもの?
澤 そうですね。今までの黒猫チェルシーのイメージみたいなものは全部壊したかったんです。いくらキャラ作ったりしても、そんなもんはバレとるし隠しきれんし、それを壊さないと俺ら自身が窮屈やし。だからもう、なんならライブでのパフォーマンスも全部ガラッと変えてもいい。
──ライブでのシリアスな黒猫チェルシーが本当の自分たちだっていう意識はない?
澤 全然。シリアスやと捉えられるとも僕らは思ってなかったんで。笑ってええねんで、っていう気持ちで僕らはずっとやってたつもりなんですけど、東京来てから東京のお客さんがすごいじーっと見てはるんですよ。特にライブの最初のほうとか。で、そうなってくると「どういうふうに見とるんやろな」とか「でもそういうこと気にしててもなあ」っていう感じで、結局は周りにとらわれず自分自身を出していかないと窮屈になって面白くないんやと思うようになって。
──そのあたりフロントマンの大知さんはどういうふうに感じてますか?
渡辺 まず、イメージを作るっていうこと自体があんまりバンドらしくない気がします。普段と違う自分を作り上げる必要はあんまないと思うんで。
──でもライブで激しく歌う大知さんと、普段の大知さんとの間にはけっこうギャップがありますよね。
渡辺 でも全然違うわけでもないっすよ。ステージに立ってテンション上がった俺、っていうだけやし。なんか楽しかったらいいかなと思います。
結局こいつら何がしたいの? って思われたい
──確かにこの「猫Pack」でバンドのイメージは大きく変わりそうですね。
岡本 今までの作られたイメージみたいものを壊したいなっていうのはあります。「そんなもんいらん」ってずっと思ってましたし。
澤 多分このDVDも、1年前ならやってなかったと思うんですよ。でも今は全部捨てたいって開き直ってる気持ちもあって。今までは僕ら自身が黒猫チェルシーっていうものにあわせて曲を作ったりとか「黒猫ではこの曲はどうかな」とか、そういうこともあったけど、これからは1人1人が自分のやりたいことを好きなように追求していきたい。正直な自分をやっぱ見てほしい。なんかそういう気持ちがすごく大きいです。
──じゃあ今後はライブや音源にも、自分たちの素のキャラクターを出していく?
宮田 そうですね。でも、だからと言って、おちゃらけた音楽になるかと言われるとそうではなくて。
澤 もちろん音楽は真剣にやりますよ。
渡辺 だから素を見せていくことによって、余計わからんくなってくのがいいと思うんです。結局こいつら何がしたいの、どっちやねん? っていうのが。
──イメージをなるべく固定化せずに活動していくということですね。
澤 正直、去年あたりはこのまま終わったほうがキレイなんちゃうかなと思ったりもしたんです。このまま1stアルバムのガレージパンクのイメージで、あれだけでもう終わってバンド止めたほうがいいんちゃうかと思ったりもしたんですよ。でも、今年になって開き直って、別に好きなことやるだけやから関係あらへんって思うようになった。そのためにはとにかくまず全力でやらんと何も言えへんし。とにかく一生懸命にそれをせんとあかんなと思ってて、だからイメージとかそんなこと関係ないです。個人で最高のものを作るだけやと思ってます。
渡辺 黒猫がガレージパンクのバンドやと思われて、それで固まってしまうと窮屈ですからね。そういうイメージは変えていきたいです。
CD収録曲
- ベリーゲリーギャング
- オーガニック大陸
- ファンキーガール
- 嘘とドイツ兵 (LIVE ver)
- 廃人のロックンロール (LIVE ver)
- 嫌んなった
初回盤DVD収録内容
- メンバー&箭内道彦氏率いる風とロック/ロックンロール食堂チームとの共同企画による約60分に渡るスペシャル映像『黒猫チャンネル』
- 「ベリーゲリーギャング (Lip ver)」ビデオクリップ
黒猫チェルシー(くろねこちぇるしー)
神戸出身のロックンロールバンド。渡辺大知(Vo)、澤竜次(G)、宮田岳(B)、岡本啓佑(Dr)の4名により、高校在学中の2007年3月に結成。2008年には日本テレビの深夜番組「音燃え!」に地元のライブハウスの推薦で出演し、他の学生バンドとは一線を画す格の違いを見せつけた。 2009年4月に1stミニアルバム「黒猫チェルシー」をリリース。現在は都内を中心に精力的なライブ活動を続けている。 なお、ボーカル渡辺大知は2009年夏公開の映画「色即ぜねれいしょん」の主役に抜擢。田口トモロヲ監督、みうらじゅん原作の話題の作品で、岸田繁(くるり)、峯田和伸(銀杏BOYZ)らと共演を果たしている。