ナタリー PowerPush - 黒猫チェルシー
汚い音のロックンロール! 2ndアルバム早くも到着
ずっと同じじゃ物足りない
──黒猫チェルシーというバンドは、澤さんがリーダーシップをとっているように見えるんですが、結構独裁な感じでしょうか?
澤 いや、そんなことないですよ(笑)。みんなで楽しくやってます。
渡辺 でも特に高校生のときとかは、例えば「この曲バンドでやろうや!」って言っても、澤が「あかん」って言ったら「そうか……」って、そういうことはありましたけどね(笑)。そういう意味?
澤 そういう意味って、それが独裁やん!(笑)
──(笑)。でも澤さんは自分のビジョンもあるし我も強いし、自分のやりたいことをやりたいタイプではありますよね。
澤 まあそれはそうです。でも自分がこれをやりたいと思っても、やっぱり1人じゃできないし。結局はみんなそれぞれを頼り合ってるっていう感じですけどね。
──そういうバンドの中で渡辺さんはどうですか? 自分のキャラクターや伝えたいことを十分に出せていますか?
渡辺 うーん、それがちょっと、何が足りないのはわかんないけどまだできてない気がするんですよ。ライブもある程度の数はやってるはずだし、そろそろ何かわかってきてもいいと思うんですけど……、違うんだよなあって感じはあります。
──それはどのあたりでそう感じます?
渡辺 曲に関して、納得できる歌詞も曲もできていいのが作れてると思うけど、でもこのまま同じじゃダメだなっていうか。今の曲もいいけど、ずっと同じなのはイヤやし。だから物足りない。もっといろんなことがやりたいです。
──なるほど。実は黒猫チェルシーのライブを見ていると、確かに激しくてカッコいいんですが、渡辺さんの中にたぎるもの、内面みたいなものが、まだ十分には出てきてないんじゃないかという印象もあるんです。そういうものをもっと出してぶつかりあったら、バンドとしてまた違う段階に行けるんじゃないかという気がしていて。
渡辺 あー、まさにそのとおりです! 常々思ってることをズバリ言われた。
──そのあたり渡辺さん自身も感じているところなんですね。
渡辺 はい。でも、今のところまだできんなーっていう感じですね。わかってるけどできないから、余計になんだかなあって感じで。
──澤さん的には今の話どうですか? 「渡辺もっと来いや!」みたいな感じにはならないんでしょうか?
澤 まあ、そうも思いますけど、でもバンドなんで。例えば渡辺1人が「もっともっと!」って思ったところで、バンドの4人で一緒に進んでいかなきゃダメだと思うんです。1人がそういう状態やったら他の3人が寄ってって「こういうことやな」みたいなことを確認してから進む。それがすごい大事なことやと思ってます。
映画の中の自分より“今”のライブを見てほしい
──ところで黒猫チェルシーというバンドにとって渡辺さんが映画「色即ぜねれいしょん」に出演したことは、決して小さくない出来事だったと思います。今振り返ってみて、あの映画のことをどう感じていますか?
澤 そうですね、僕も映画観に行きましたけど「渡辺出とるわー(笑)」みたいな感じで、普通に楽しく観れました。でも自分のバンドと直接つながるっていう実感はないですね。映画は映画で、バンドはバンドで。たぶん「色即」で黒猫チェルシーを知った人も多いと思うので、その人たちにも良いって言ってもらえるようなバンドになりたいとは思います。「映画良かったけどバンドは……」とかって言われたら悔しいですから(笑)。
──渡辺さんはどうですか?
渡辺 僕も映画とバンドは全然別のものだと思ってて。もちろんいい体験だったし、いいきっかけだったんですけど。あれがあったから、僕らのバンドのことを知ってくれるお客さんが増えたっていうのも実感してるし。
──でもやはり自分の軸足はバンドにあると。
渡辺 それはもちろんそうです。俳優になりたくてバンド始めたわけじゃないし。今は、黒猫チェルシーを知らずに映画を観た人っていう人も、僕らのライブに来てほしいと思います。あの映画撮影したのはもう1年前の話で、あそこに映ってるのは高校生の俺やし。もっと“今”を見てほしいなあ、っていう感じはありますね。
黒猫チェルシー(くろねこちぇるしー)
神戸出身のロックンロールバンド。渡辺大知(Vo)、澤竜次(G)、宮田岳(B)、岡本啓佑(Dr)の4名により、高校在学中の2007年3月に結成。2008年には日本テレビの深夜番組「音燃え!」に地元のライブハウスの推薦で出演し、他の学生バンドとは一線を画す格の違いを見せつけた。 2009年4月に1stミニアルバム「黒猫チェルシー」をリリース。現在は都内を中心に精力的なライブ活動を続けている。 なお、ボーカル渡辺大知は2009年夏公開の映画「色即ぜねれいしょん」の主役に抜擢。田口トモロヲ監督、みうらじゅん原作の話題の作品で、岸田繁(くるり)、峯田和伸(銀杏BOYZ)らと共演を果たしている。