ナタリー PowerPush - 黒猫チェルシー

汚い音のロックンロール! 2ndアルバム早くも到着

2009年4月に衝撃のデビューを果たした黒猫チェルシーが、2作目となるミニアルバム「All de Fashion(オール・ド・ファッション)」を12月2日にリリースする。新作は、この春高校を卒業し上京して以降の4人の進化と、現在のライブの勢いが詰め込まれた全9曲のロックンロールアルバム。

今回のインタビューのテーマはこのアルバムの成り立ちと、バンドの現在について。映画「色即ぜねれいしょん」での活躍も記憶に新しい渡辺大知(Vo)と、バンドの司令塔でもある澤竜次(G)の2人に話を訊いた。

取材・文/大山卓也

1stより汚い音になって良かった

──2ndアルバム完成おめでとうございます。前作の勢いはそのままに、音楽的にも幅のある内容になりましたね。

澤竜次 今回は1stのときと違って、ただ単にある曲を録音するっていうアルバムではなくて、ストーリー性だったり、曲順とか曲のバランスとか構成とか、そういうことを考えてやろうっていうのはありました。

──1stは初めてのレコーディングでしたし、やはり無我夢中で作ったという感じ?

渡辺大知 はい、1stは記録というか、バンドを始めた頃の勢いとか、初期に作ってた曲を今のうちに形にしときたいっていう気持ちだったんで。

 1stの頃はまだ神戸にいて高校も行ってて、土日を使ってこっちに出てきてレコーディングしてたから、次はもっと時間かけたいって思ってたんです。今回はじっくりやれて良かったです。

──ギターがすごくいい音で鳴っていますよね。

渡辺 澤は今回自分のギターアンプ買ったんですよ。

──お、どんなアンプを?

 あの、マーシャルの1959ってやつです。昔のままの形で、ボリュームを上げるにつれて自然に歪んでいくんです。普通のマーシャルより音域も広くて、すごいそのまんまの直接的な音。鳴らしたときに本当にそのままのギターの音が鳴るっていう。そういうアンプなんでレコーディングでも弾いてて気持ちよくて。

渡辺 すっごい音がでかいんですよ。スタジオのミキサー置いてる部屋でみんなで聴いてたんですけど、澤が弾いてる部屋に入ったらもう聴けるような音量じゃなかった(笑)。

──あはは(笑)。

 僕はもう麻痺してアンプの真正面に座って鳴らしてるんですけど(笑)。でもそうすることによってフィードバックやスタジオの空気感が伝わる録り方ができたと思います。

渡辺 安っぽい、弱い音にはしたくないなっていうのは意識してました。1stよりも弱くなってたら絶対イヤだって思ってて。結果1stより汚い音になったから、それがすごく良かった。

東京に来てすごくバンドっぽくなった

──今回収録されている曲はこのアルバム用に作った新曲が多いんですか?

渡辺 以前からやってる曲も入ってますけど、ほとんどは2ndのために一から作りました。

──東京に来て環境が変わって、それが曲の作り方に反映された部分もありますか?

 そうですね。去年はスタジオにもろくに入れなかったんで。家から遠いから。

──そういえば前回のインタビューで、スタジオに行くには山を2つ越えなきゃならないって言ってましたね(笑)。

 今年から東京出てきてスタジオに定期的に入るようになったし、全員が一人暮らしを始めたから、例えば僕の家にみんなで集まって、夜通しアイデア出し合ってノートに書いていったり。だから曲作りもスムーズにできるようになって。

──誰かの家に集まって夜通し話をしてっていうのは、普通のアマチュアバンドが最初に通る道だと思うんですが。それが今までの黒猫チェルシーにはなかったということ?

渡辺 はい。だから東京に来てすごくバンドっぽくなったと思います。

 以前は渡辺とベースのガッちゃん(宮田岳)は学校別々やったり、家も遠かったりで、スタジオもなかなか入れないしライブの日にちも合わなくて。それで会う機会も少なかったんですよ。だからこっち来てからは楽しいですね。

──2ndアルバムでやっとそういう話をしてるっていうのもすごいですよね。

 今まであんまり真面目にやってなかったんで。まあそろそろちゃんとやろうかと(笑)。

「黒猫はこういうバンド」って決めつけるのはやめた

──アルバムのラストに収録されている「ロンリーローリン」という曲は、他の曲とちょっと毛色が違いますね。

渡辺 これは僕が高校生のときにアコースティックギターで作ってた曲なんです。できたときは「黒猫っぽくないからバンドではやらへん」って決めてたんですけど、こっち来てから試しにやってみたら意外にうまくいったんで。

──確かにこの曲は弾き語りのフォークソングっぽい感触もあります。

渡辺 うん、黒猫に今までなかった曲というか、盛り上がりもするし、柔くもあるし、なんかやってて楽しくて。あと言いたいこと言えてるし。この曲がやれたんは僕は今回良かったなと思いました。

──この曲を渡辺さんが持ってきたとき、澤さんはどう感じました?

 今までにない曲調の曲やったんで、黒猫らしさを出したくて最初はいろいろアレンジしたりとか、もっとテンポ遅くしてみたいなことをしてたんですけど、結局は普通にみんなが思いっきり、ドラムだったら叩きたいように叩いて、ベースも弾きたいように弾いて、渡辺も歌いたいように歌って。そういうやり方でやるとやっぱ一番良くって。それができたときに、今まで持っていた変な固定観念がなくなって。どんな曲でも思いっきり演奏したら黒猫の曲になるって実感できた。それがすごい結果的に良かったですね。

──でも神戸時代にはやらなかったこの曲が今の黒猫ならやれる。何が変わったんでしょうか。

渡辺 「黒猫はこういうバンド」って決めてしまうんじゃなくて、やっぱり自分が今聴いてる音楽とか普段生活してて感じたこととか、今はそういうものをもっと正直にバンドに反映させられるようになったんだと思います。そしたらそれぞれがもっと自由に楽しくできるし、長くも続くんちゃうかっていうことで。そういうふうに意識が変わってきたっていうのはあります。

2ndミニアルバム『All de Fashion』 / 2009年12月2日発売 / 1995円(税込) / DECKREC / UKE PROJECT / DCRC-0066

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  • iTunes Store 今週のシングル「廃人のロックンロール」
  • iTunes Store アルバム「All de Fasion」
CD収録曲
  1. スピーカー
  2. オンボロな紙のはさみ
  3. 廃人のロックンロール
  4. 毛にからまって
  5. のらりのらねこ
  6. ショートパンツ
  7. 南京錠の件
  8. 排泄物 from くち
  9. ロンリーローリン

1stミニアルバム『黒猫チェルシー』 / 発売中 / 1890円(税込) / DECKREC / UKE PROJECT / DCRC-0064

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THE YELLOW MONKEYトリビュートアルバム「THIS IS FOR YOU ~THE YELLOW MONKEY TRIBUTE ALBUM~」 / 2009年12月9日発売 / 3200円(税込) / BMG JAPAN-アリオラジャパン / BVCL-50/51

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黒猫チェルシー(くろねこちぇるしー)

神戸出身のロックンロールバンド。渡辺大知(Vo)、澤竜次(G)、宮田岳(B)、岡本啓佑(Dr)の4名により、高校在学中の2007年3月に結成。2008年には日本テレビの深夜番組「音燃え!」に地元のライブハウスの推薦で出演し、他の学生バンドとは一線を画す格の違いを見せつけた。 2009年4月に1stミニアルバム「黒猫チェルシー」をリリース。現在は都内を中心に精力的なライブ活動を続けている。 なお、ボーカル渡辺大知は2009年夏公開の映画「色即ぜねれいしょん」の主役に抜擢。田口トモロヲ監督、みうらじゅん原作の話題の作品で、岸田繁(くるり)、峯田和伸(銀杏BOYZ)らと共演を果たしている。