音楽ナタリー Power Push - 黒木渚
私が歌う4つのラブソング
“ラスいち”が働かないと愛には変化しない
──今作では4曲とも恋愛がテーマになっていますが、最初から全曲ラブソングにしようと思っていたんですか?
最初は全部をラブソングにするつもりはなかったです。とりあえずラブソングを1曲書いてみようと思って、「君が私をダメにする」を書いて。それをきっかけにラブソングがいっぱいできたので、その中の4つを入れました。
──ああ。なるほど。
「君が私をダメにする」ってすごくハッピーに感じられると思うんですよ。危ういけど、すごくハッピー。自分で言うのもなんですけど、黒木渚がそれで終わっちゃダメな気がして、1個ヤバいやつを入れとかないとって(笑)。愛ってもっと多面的にいっぱいあるでしょ?って言いたかったんで。
──2曲目の「エジソン」もそのバリエーションの1つですか?
はい。最初に“愛”というでっかいテーマを掲げたときに、ラブソング=バラードというのが固定観念としてあったので、それを打ち破ろうと思って「君が私をダメにする」をリード曲にして。でもやっぱり王道のラブソングが作りたいと思ってたときに、たまたま「世界の偉人名言集」みたいなサイトを、部屋でゴロゴロしながら見ていて。そのページがトーマス・エジソンのところだったんですよ。「1%のひらめきと99%の努力」という言葉は恋愛と似てるなと。99%の条件がそろった男性が目の前に現れても、残りの1%……どこかピンとこないと恋愛対象にならないよな、ということを考えてて。その視線の先に、電球の模様のウォールステッカーがあって、そこでエジソン、恋愛、電球が三角形のようにバン!とつながって「よっしゃ、書こう!」と思いつき書きました。
──1%のほうを信じる歌。
そうです。ひらめきとか直感のほうを。ほぼ完璧という男性は身の周りにいっぱいいる気がするんですよ。でもなんでその人のことを恋愛対象とは感じないんだろう?ということを考えると、やっぱり“ラスいち”の部分で直感が働かないと愛には変化しないということなんですよね。
豪華プレイヤー陣とのレコーディング
──この曲には、田渕ひさ子(G)さんとBOBO(Dr)さんが参加してます。田渕さんはデビュー時から一緒にやっていますね。
はい。田渕さん、今回“私はこの曲のソロはこれだと思う”というフレーズを決め打ちで持ってきてくださって。それがめちゃくちゃカッコよかった。
──BOBOさんはどうでした?
BOBOさんは今回初めてご一緒したんですけど、実は前の日にぎっくり腰になってしまったみたいで。でもドラムを叩くときは腰に負担のかからない姿勢で座るから痛くないらしいんですよ。だからレコーディング中だけ平気な顔をして100点の演奏をして、終わった瞬間に崩れ落ちて(笑)。すごいなーと思いました。BOBOさんの持ってる独特のリズム感もすごいと思いましたね。柏倉さんはフレーズ王で、BOBOさんはパワー系。全然タイプが違ってて、めっちゃ面白かった。
──そして3曲目「レスポール」。「100万円のレスポールをどぶ川に投げ捨てた」という歌い出しが強烈な曲です。
そのエピソードは実話ではありませんが(笑)。でもこんなことできたらいいなというか、自分の中にこういうタイプの人種がいるんですよ。めちゃくちゃ不器用なサプライズ要員みたいなものが。周りにいる人を元気付けたいし、小さな悲しみから救いたいと思うんだけど、やり方がわかんないからとりあえずその人の大事なものをぶっ壊して細かいことをどうでもよくしようみたいな。
──あ、前向きなんですね。よかれと思ってるということは。
そうです。だから笑顔でぶん投げる(笑)。でも能天気で、とんでもないことをやっちゃう人が近くにいると、細かいことが気にならなくなることは本当にあるし。“この人スケール違うな”みたいな人が1人いると、何か安心して余裕が生まれてくることがあるから、そういう存在になっていたいなということです。
──それはわかる気がします。
これはスガダイローさんのピアノが素晴らしいです。歌詞に忠実にピアノを乗せてくるんですよ。“ヒトラー”という言葉が出てくると、軍隊が行進してるみたいな和音を使うし。で、ワンテイク録り終えて「こんな感じでいいの?」と言われたときに「スーパーマリオみたいに、平和な風景の中をたたたーっと移動してるんだけど、途中で敵が出てきたり、スターをもらって無敵になったり、実はすごいことが起きてる」というイメージをお話したんですよ。突然カメが火を吹いたり、淡々としてるんだけどちょっとコメディチックな印象がほしいです、みたいなことをスガさんに言ったら、今度は、“ユーモア”という歌詞のところに、タタッタタッター♪って、スーパーマリオのメロディが入ってた。いやー、素晴らしかったですね。
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- ニューシングル「君が私をダメにする」 / 2015年6月10日発売 / LASTRUM
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 1944円 / LASCD-0063
- 通常盤 [CD] / 1296円 / LASCD-0064
収録曲
- 君が私をダメにする
- エジソン
- レスポール
- アンチスーパースター
初回限定盤特典CD収録内容
4月11日東京グローブ座のワンマンライブ音源
黒木渚 FREE LIVE ONEMAN TOUR
「君が私をダメにする」
- 2015年7月5日(日)宮城県 MACANA
- [昼の部]OPEN 15:00 / START 15:30
[夜の部]OPEN 18:30 / START 19:00 - 2015年7月11日(土)福岡県 BEAT STATION
- [昼の部]OPEN 15:00 / START 15:30
[夜の部]OPEN 18:30 / START 19:00 - 2015年7月18日(土)大阪府 ROCKTOWN
- [昼の部]OPEN 15:00 / START 15:30
[夜の部]OPEN 18:30 / START 19:00 - 2015年7月19日(日)愛知県 ell.FITS ALL
- [昼の部]OPEN 15:00 / START 15:30
[夜の部]OPEN 18:30 / START 19:00 - 2015年7月22日(水)東京都 LIQUIDROOM
- OPEN 18:30 / START 19:30
黒木渚(クロキナギサ)
宮崎県出身の女性シンガーソングライター。2010年12月に自らの名前を掲げたバンド・黒木渚を結成し、2枚のシングル 「あたしの心臓あげる」「はさみ」とミニアルバム 「黒キ渚」をリリースするも、2013年12月の「COUNTDOWN JAPAN 13/14」出演をもってバンドは解散した。翌年から黒木がソロ活動をスタートさせる。サウンドプロデューサーに松岡モトキ、ミュージシャンに柏倉隆史、中尾憲太郎、MASEEETAらそうそうたるメンバーを迎え、同年4月に1stフルアルバム「標本箱」を発売した。2015年1月には3rdシングル「虎視眈々と淡々と」と同時に初の短編小説「壁の鹿」を発表。同年6月にはラブソング4曲を収めた4thシングル「君が私をダメにする」をリリースした。女性の心理を生々しく歌った楽曲と、演劇のようなライブパフォーマンスでファンを魅了している。