倉木麻衣が音楽で表現する“無条件の愛” ニューアルバム「unconditional L♡VE」完成 (2/2)

完成させるまで絶対に死ぬことはできない!

──これまでのお話を聞くと、倉木さんが曲に込めるメッセージはより説得力を持って響いてくるように思います。新作「unconditional L♡VE」は本当に愛に満ちた作品ですよね。改めてその仕上がりをどう感じていますか?

今回は先にテーマを掲げたうえで、それにマッチする楽曲をたくさんの候補の中から選んでいったんです。アルバムの方向性はチームの人たちともしっかり共有することができていたので、いつも以上にみんなの思いがギュッと詰まった作品になったと思います。1年半をかけて、1曲ずつゆっくりと向き合えたこともすごくよかったですね。私自身、すべての曲に対してのこだわりが本当に強かったので、制作中はずっと「このアルバムを作り上げるまでは絶対に死ねない!」みたいな強い気持ちを持って向き合えていたような気がします(笑)。

──1曲目のタイトルチューン「unconditional L♡VE」と2曲目の「UNBREAKABLE」は、メッセージ的に本作のテーマがもっとも色濃く注ぎ込まれている印象です。欧米のポップスのようなアプローチを持つサウンドに力強さを感じさせる倉木さんのボーカルが乗せられることで、最高の幕開けを飾ってくれていますね。

聴いていて元気になれるような、気持ちが高まっていくような曲調でアルバムをスタートさせたかったんです。私は基本的にウィスパーボイスで歌うのが好きなタイプなんですけど、この2曲ではかなりガツンとパワフルに歌った感じですね。ひさびさに取り組んだラップパートも含めて、すごく楽しみながら作っていくことができました。どの曲においても、私自身が心から楽しんで向き合っている気持ちや、今の倉木麻衣が持っているフィーリングがしっかり込められていると思うので、皆さんにも楽しんでもらえる内容になっていたらうれしいです。

──今回は歌詞先行で制作された曲もあるそうですね。

歌詞を先に書いたのは「UNBREAKABLE」ですね。これまでにも詞先で作った曲はあったんですけど、今回は歌詞の構成でかなり遊んだのが大きなトライでもあって。いわゆるJ-POPのスタンダード的な作りではなく、どんどんシーンが展開していって、畳みかけていくようなニュアンスの歌詞を書いてみたんです。それができたうえで曲をオーダーしたところ、作曲家さんが私の思いをしっかり汲み取ってくださって、ものすごくカッコいいサウンドに仕上げていただけました。自分としてもすごくいい経験になりました。

──そんな2曲からスタートしたアルバムは、そこからドラマ「ムショぼけ」主題歌となる「ONE LOVE」や「クレバリーホーム」CMソング「Wで包むよ」、アニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマ「ベロニカ」といった耳馴染みのある楽曲が並べられていきます。タイアップ曲であっても、“unconditional LOVE”というテーマからかけ離れたものにはなっていないし、アルバムの中に違和感なく収まっていますよね。

ありがとうございます。そこは、タイアップ先の世界観をしっかり取り入れながらも、自分が今伝えたい思いをミックスしながら作らせてもらうことができたからだと思います。

今まで以上にエモーショナル

──そしてアルバム後半には「Proof of being alive」「Sea wind」という、これまでになく繊細な歌い方が印象的な新機軸の楽曲が2つ収録されています。

どれも新しい自分を込めた曲ではあるんですけど、「Proof of being alive」……“生きた証”というタイトルを持つ1曲では本当に新たな挑戦ができたと思います。私はこれまでにシンフォニックライブを何度もやらせていただいているんですけど、その経験を通して見つけた新たな音楽の楽しみ方みたいな部分を注ぎ込んで作ったのがこの曲で。非常にクラシカルな雰囲気を持ったこの曲に出会えたことで新たな気付きもあったし、今後もいろいろなことにトライしていけそうだなと思わせてくれるきっかけにもなりました。

──荘厳な世界観を倉木さんのブレッシーな歌声が美しく彩っていますよね。

ありがとうございます。本当はどんなふうに歌えばいいのかをけっこう考えたんですけど、結果的にメロディの起伏を意識しながら、今まで以上にエモーショナルに歌い上げることができたような気がします。自分的には好きなタイプの歌い方でもあるので、そこを色濃く出せたのはうれしかったですね。

──歌詞の内容もすごく素敵ですよね。今の時代に強く響きうる希望が描かれています。

人生の中にはいろいろな困難があるもの。でも、それを乗り越えた先にはきっと希望が見えるし、その希望というのは子供の頃に見ていたピュアな夢に通ずるものなんじゃないかなと思って。それを大事にしてほしいなという気持ちを込めて書いた歌詞ですね。曲を聴きながら、皆さんがそれぞれに歩んできたこれまでのストーリーを思い浮かべ、そこに思いを馳せてもらえればなと思います。

倉木麻衣

倉木麻衣

こだわりのミックス・マスタリング

──次に収録されている「Sea wind」は来生たかおさんの作曲ですね。ゆったりと心地よくたゆたうような世界観は、倉木さんのキャリアの中でもすごく新しいものだと思います。

これは本当に今までに歌ったことがないタイプの曲でした。チームの発案で来生さんに作曲をお願いして、倉木麻衣のことをイメージして作っていただいたのがこの曲で。シンプルだけどエバーグリーンな魅力を持つメロディは、まさに今回の“unconditional LOVE”というテーマにマッチするものだなと思いました。本当に素敵ですよね。そんなサウンドに引き出されるように、歌詞では「すべてを愛して生きて行こうよ」という気持ちを言葉にすることができました。我々の日常生活はもちろん、もっと大きな視点で地球のことさえも感じられるような1曲にもなったような気がしています。

──すべてを包み込むような、温かく柔らかなボーカルも聴きどころですよね。

私は普段、瞑想をしたりするのですが、この曲はそれに近い状態で歌いました。

──瞑想ですか。

はい。ライブ前なんかにすごく緊張するタイプなんですけど、その瞬間の自分にフォーカスしてマインドフルネスな状態になれる瞑想をすると、精神的に落ち着いて緊張しなくなるんです。この曲はサウンド的にも皆さんに癒しを感じてもらえるようなヒーリングミュージックのようでもあるので、私自身も瞑想しているときのように落ち着いた気持ちで歌うことを心がけました。日々、さまざまなストレスを感じて、イライラすることもいっぱいあるとは思うけど、そんなときはこの曲を聴くことで少しでもホッとしてもらえたらうれしいです。今は気軽に旅行に行けない状況なので、この曲を通して南の島にいるような気持ちを味わっていただくのもいいかもしれないですね(笑)。自分たちの住む地球のことを、そしてそこにある大きな愛を感じていただけたら、気持ちはきっと軽くなってくるはずなので。

──今回のアルバムは曲ごとに海外の多彩なミックスエンジニアを起用し、マスタリングに関してはSterling Soundのクリス・ゲーリンジャー氏が手がけられています。そこにも強いこだわりがあったようですね。

そうですね。状況によって1曲に対して複数のエンジニアさんにお願いしたり、アメリカのエンジニアの方にお願いしたりすることも多かったんですけど、今回はThe Rolling Stonesやエド・シーランを手がけたセンゾ・タウンゼンドさんというUKの方にお願いした曲もあります。それによって新しい倉木麻衣のボーカルの色を引き出してもらえたような気がしますね。マスタリングを終えたものを聴いたときは、1音1音がより鮮明に聴こえてくるようにもなっていたし、サウンドにものすごく広がりを感じられるようになっていました。そうやって今回は音の1つひとつにも徹底的に時間をかけてこだわったので、ぜひヘッドフォンで体感していただきたい作品でもあります。

デビュー22周年、早いですね

──本作を引っさげて11月から全国ツアーが開催される予定でしたが、コロナ禍の状況を踏まえて全公演が中止となってしまいましたね。

そうなんです。スタッフの皆さんと何度も話し合いをしましたが、皆さんに安心して来ていただくことを考えたら、本当に残念ですが、今は中止にせざるを得なかった。ただ、私はライブに対しての希望は捨てていないので、いつかみんなで120%の気持ちで楽しめる時期が来たら絶対に開催しようと思っています。なので、それまで待っていただけたらなと。

──12月12日には配信ライブ「Mai Kuraki Live Project 2021“unconditional L♡VE”」も決定していますからね。倉木さんとつながる場はしっかり用意されています。

はい。配信ライブではこれまでにやったことのないスタイルに挑戦しようと思ってもいて。内容はすでに固まっているので、それをしっかり形にするため、リハーサルをがんばって仕上げている最中です。アルバムの曲は目一杯披露しようと思っていますし、それにプラスして皆さんにずっと愛していただいている曲も歌うつもりです。直接会うことは叶いませんでしたけど、まずは配信ライブを思いきり楽しんでもらえたらなと思います。

──配信ライブの直前、12月8日にはデビュー22周年を迎えますよね。

そうですね! 早いですねー(笑)。それだけの期間、活動を続けて来られたのはファンの皆さん、スタッフの皆さん、そして倉木麻衣に関わってくれたすべての皆さんのおかげです。なので私としてはすべての方への感謝の気持ちしかないですね。その恩にお返しができるように、そして皆さんの希望をつないでいけるように、ここからもいろいろな楽曲を届けていこうと思います。今回のアルバム「unconditional L♡VE」を聴くことで自分自身を鼓舞しながら、23年目もがんばっていきます!

公演情報

「Mai Kuraki Live Project 2021 “unconditional L♡VE”」

2021年12月12日(日)18:00~
※12月19日(日)23:59までアーカイブ映像を配信

プロフィール

倉木麻衣(クラキマイ)

1982年生まれの女性シンガー。マイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストンから影響を受け、音楽活動を開始。高校生の頃に現在のレコード会社のスタッフと出会い、デビューに向けて始動する。1999年10月に、Mai-K名義でシングル「Baby I Like」にて全米デビュー。続いて同年12月に倉木麻衣としてシングル「Love, Day After Tomorrow」にて日本デビューを果たす。同曲はいきなりミリオンセールスを記録し、1stアルバム「delicious way」は400万枚を超える大ヒットに。近年は音楽活動と並行して、被災地支援をはじめとする社会活動も積極的に行っている。2000年からアニメ「名探偵コナン」のテーマソングを担当しており、2017年7月に同一アーティストが歌唱するアニメシリーズのテーマソング最多数を記録したとして、ギネス世界記録に認定された。2021年10月に“無条件の愛”をテーマにしたニューアルバム「unconditional L♡VE」をリリース。