ナタリー PowerPush - 倉木麻衣
15周年、新たな自分が目覚める
昨年12月8日をもってデビュー15周年イヤーに突入した倉木麻衣が、最新アイテムとなるDVDシングル「Wake me up」をリリースする。この曲はまもなく公開が始まる映画「魔女の宅急便」の主題歌として書き下ろされたもの。迷いや葛藤を抱きながらも、新たな自分を目覚めさせてがんばっていこうというストレートなメッセージが込められたアッパーチューンとなっている。
今回ナタリーでは倉木麻衣へのインタビューを実施。この曲が生まれる経緯を紐解いていく中では、キャリアを重ねてきたからこそ芽生えた自身の大きな葛藤を吐露する場面も。興味深い話がたっぷりと聞けた。
取材・文 / もりひでゆき
歌えなくなるほどのスランプから脱出
──映画「魔女の宅急便」の主題歌のお話が来たときにはどんなお気持ちでした?
びっくりしたのと同時に、すごくうれしかったです。学生時代には本を読んで、「私もキキみたいに飛べるかなー?」ってほうきにまたがったりしてましたからね(笑)。すごく思い入れが強い作品なんです。
──そんな作品のどんな部分を切り取って歌詞をつづっていったんでしょう?
作品の中には、キキがほうきにまたがっても飛べなくなってしまって葛藤するシーンがあるんですけど、そこがこの曲を作る前の私自身にすごく重なったんですね。なので、そういう葛藤を踏まえつつ、新たな自分を目覚めさせてがんばっていこうっていうメッセージをストレートに歌詞にしたんです。
──そこで出てきたのが“Wake me up”というフレーズだったわけですね。
そのフレーズを使った曲を作りたいなっていう気持ちは、主題歌のお話をいただく前からあったんです。本当にちょっと気持ちが落ちてしまっているときだったので。それが「魔女の宅急便」という作品を通して形になった感じなんですよね。この曲で書いた思いはいろんな方に共有してもらえるものだと思うんですけど、何よりも自分に向けてのものだったりするんですよね。
──倉木さんを悩ませていた葛藤とはどんなものだったんですか?
デビューから約15年歌い続けてきたんですけど、その中で何度も同じ曲を歌っているうちに、その曲を純粋に楽しんで歌うことができなくなってしまったんですよ。きっと深く考えすぎていた部分があったんだと思うんですけど、歌うこと自体ができなくなってしまうくらいのスランプになってしまって。
──それはいつ頃の話ですか?
一昨年あたりですね。
──歌うことができなくなるというのはシンガーとして相当ヘビーなことですよね。
そうですね。歌うこととメンタルはすごくリンクしているので、歌えないと思って気持ちが落ち込むとさらに歌えなくなってしまうんです。そういう状態でも歌いたいという気持ちは明確にあるので余計に悩んでしまうっていう。
──悪循環になってしまいますよね。そういう状況からはどうやって抜け出したんですか?
自分を見つめ直すために環境を変えてみようと思って、イギリスに行ったり、伊勢神宮に行ったりしたんです。そこでちょっと気持ちをリセットできた部分はありました。“Wake me up”というキーワードが思い浮かんだのも、伊勢神宮からの帰りの新幹線の中でしたし。
──なるほど。
あとは去年、“再生”をテーマにしたツアー(「MAI KURAKI LIVE PROJECT 2013 “RE:”」)をやったんですね。東日本大震災の被災地であったりとか、ツアーで回るそれぞれの場所で、いろいろなことを再生していこうっていう内容で。そこで自分自身もちゃんと再生できたというか。
──同じ曲を歌い続けることに対しての、気持ちの折り合いがついたと。
はい。ライブを通してファンの方々と同じ時間を共有することで気持ちが変わっていったんです。改めて自分の原点を見つめ直すことができましたし、私のことを応援してくださっているファンの皆さんの気持ちが背中を押してくれたので。あとは、既存曲をリアレンジして披露することで、新たな空気を入れてみる試みをしてみたりもしましたね。デビューから一緒に歩んできてくださっているファンの皆さんは、私のそういうアクションをすごく楽しんで受け入れてくれたので、モチベーションも上がりました。
──まさに、新たに“目覚める”ことができた感じだったわけですね。
はい。そんな経験ののちに生まれた「Wake me up」という曲では、もう完全に気持ちをチェンジすることができたと思います。歌うことによって新しい自分が表現できるんだなっていうことに改めて気付かせてくれたので。
- DVDシングル「Wake me up」/ 2014年2月26日発売 / ノーザンミュージック
- 初回限定盤 [DVD+CD] 1365円 / VNBM-3005
- 通常盤 [DVD+CD] 1050円 / VNBM-3006
初回限定盤DVD収録内容
- Wake me up(Music Clip)
- Wake me up(Live @Mai Kuraki COUNT DOWN LIVE 13-14 ~あRE:がとう!一期一会!~)
通常盤DVD収録内容
- Wake me up(Music Clip)
CD収録曲
- Wake me up
- always giving my heart
- Wake me up ~Instrumental~
倉木麻衣(くらきまい)
1982年生まれの女性シンガー。マイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストンから影響を受け、音楽活動を開始。高校生の頃に現在のレコード会社のスタッフと出会い、デビューに向けて始動する。まず1999年10月に、Mai-K名義でシングル「Baby I Like」にて全米デビュー。続いて同年12月に倉木麻衣としてシングル「Love, Day After Tomorrow」にて日本デビューを果たす。同曲はいきなりミリオンヒットを記録し、1stアルバム「delicious way」は400万枚を超える大ヒットに。透明感あふれる繊細な歌声、ポップかつキャッチーな楽曲で幅広い層からの支持を受け、これまで発表してきたシングル39作はすべてオリコンランキングにてトップ10にランクインしている。2014年2月に映画「魔女の宅急便」の主題歌「Wake me up」をDVDシングルとしてリリース。近年は被災地での復興支援をはじめとする社会活動も積極的に行っている。