弱い存在だからこそ“光”を信じたい

──全編聴かせていただくと、「光のアルバム」というアルバムタイトルにもすごく納得できました。実際、“光”という言葉が歌詞にはたくさん出てきていますよね。

そこはひとつこだわってたというか、バラバラにするつもりはなかったんですよね。アルバムを作り始めた頃に、自分は一番何を表現していきたいのか、何を表現していくべきなのかっていうのを考えたんです。そのときに、やっぱり希望みたいなものを僕は音楽から得てきたし、それに感動してきたので、誰かを助けてあげられるというか、少しでも幸せな気分にさせてあげられるような音楽を作ろうみたいな気持ちになったんですよね。

──そこから“光”というテーマにつながっていくと。

それをテーマにして活動していくのが一番、自分に合ってるのかなぁって。最初に録った「タイムカプセル」にしても、曲自体には“光”っていうテーマが入ってないんですけど、弦アレンジの部分で少し“光”みたいなものが表現できたらいいなぁっていうのは思っていたし、そこから始まって、それぞれの曲に“光”っていう言葉を入れていったんですよね。

──直接的に“光”という言葉を使ってない曲に関しても、そういう方向へリスナーの気持ちを導いていこうという意図が込められているわけですよね。

そうです、そうです。未来に向けて前向きな力を表現している曲もあるような気がしてますし。で、それは“光”っていう言葉とちゃんとリンクしている感じもあって。結果として、すごく前向きで明るいアルバムになったなぁと思いますね。

──あとは“信じる”という言葉もたくさん出てくる印象があって。きっとクノさんは、あらゆることを信じて生きている人なんだろうなぁ、なんてことを思ったのですが。

あぁ、そうですね。たぶん信じたいんですよね。自分自身、すごく弱いし、すごく揺らぐし、すごく不安だし。それはたぶんみんな同じで、そういうものを乗り越えたいとか、強くなりたいとか、そういう気持ちがあると思うんですよ。それが曲としてすごく出ているので、きっとそういうところで共感してもらえるんじゃないかなって思いますね。あらためて人間だなぁっていうものが濃く出たのかなって思いますね。

グワーっていう感情で自分の枠を壊したい

──ポップスというフォーマットだと、案外、ファンタジー的な世界観になりがちな気もするんですよ。でもクノさんが描くポップスはちゃんとリアルが伴っている。そこにすごく共感できるんですよね。

そうなったんですね、たぶん。インディーでやってたときとかデビューしたときのミニアルバムとかは、もしかしたらけっこうファンタジーだったのかもしれないですけど、そうじゃないところに足を踏み入れて、その中で表現するっていうところに今回のアルバムではこだわったかもしれないですね、今考えてみると。

──聴き心地は洗練されてるんだけど、人間臭さがあるというか。

そうですね。比喩表現だったりとか、何かに喩えてみたいなことがあまりないですもんね。より直接的で、街が見えたりっていう生活的な部分もあるし。いわゆるリアルというか、そういう枠の中で歌詞は表現したのかなって。ただ、今回これを作ってまた思うところもあるっていうか。これをやった後にもう一度、ファンタジーをやるかもしれないなっていうのはありますけどね。

──この先のことも、もうすでにビジョンとして思い描いている感じですか？

あります！　今度はこれとは真逆なものを作ってみたいっていう気持ちもあって。それを今から模索していこうかなって。

──え～と、また2年くらいかかりそうですか（笑）？

アハハハ。それはわかんないですけど、結局、ずっと根底にあるのは、グワーっていう感情なんですよね。そのグワーが重要だってことをあらためて最近すごく感じてる。それがあれば何もいらないし、そのグワーを呼び起こす方法が少しずつわかってきたところもあって。今回は自分の枠を決めて表現していったところがある思うんですけど、この先はそれをめっちゃ壊したくなってるんですよね。

──枠をとっぱらったとしても、ご自身の中にあるグワーを信じればまた素晴らしいものが作れるであろうと。

うん。今回のアルバムは達成感がすごいぶん、もうきっと同じものは作れないと思うし、作る必要もないですからね。新しいものを作るべきだって確信してるんです。

──作れるだろうという思いもあると。

それもありますね、うん。まだ具体的に曲にはなってないんですけど、もうね、あるんですよ（笑）。世界を変えるぐらいの気持ちで、また新しい作品が作れるんじゃないかなって思ってます。まあ、でもこの「光のアルバム」は、練って練ってこだわってこだわって、すごく強いものが作れたと思うので、ぜひみなさんに聴いてもらいたいですね。