音楽ナタリー Power Push - クミコ with 風街レビュー
クミコ × 松本隆 16年ぶりタッグで生まれた“恋歌”
「さみしいときは恋歌を歌って」はあらゆる世代に通用する恋歌
──恋の始まりの歌だけど、不安も見え隠れしますよね。特に「大事な朝ありがとう」と言いつつ、「ねえ3年後も一緒にいるかな」という歌詞にはドキッとさせられます。
松本 3年後もこの2人はたぶん一緒にいないだろうなと思いながら書いたから(笑)。
クミコ わかる。私もそう思う。歌いながら、「いないな」って(笑)。
松本 人生そんなに甘いもんじゃないからさ(笑)。
クミコ でも、この曲を若い人が歌えば「3年後も絶対一緒にいるよね」という解釈になるんですよね。
松本 だからきっと、涙の意味は年代によって違うと思う。10代20代の場合、30代40代の場合、それぞれの世代にとっての「大事な朝」があって、それぞれの世代が描く「3年後」があるから。
クミコ 20代にとっては「希望の朝」。
松本 「最初の朝」だよね。
クミコ まだまだ希望にあふれてる。
松本 ゴールインを見据えてる感じだろうね。
クミコ どきどき、わくわく。
松本 でも30代40代になると、ちょっと疑心暗鬼が入ってくる。「一抹の不安を抱えた朝」なんだ。もしかすると2人にとって「最後の朝」なのかもしれない。
クミコ 恋の疲れを覚える時期ですからね。
松本 で、50代以上になると「そういえば、昔そういう朝があったなあ」って(笑)。
クミコ 思い出になっちゃうのよね(笑)。
松本 だからこの歌は普遍的なんです。あらゆる世代に通用する「恋歌」だと思う。
恋に落ちたときの堕落感を書いた「恋に落ちる」
──一方、永積さんの「恋に落ちる」は、それぞれの人生を送りいろいろな過去があるであろう男女が「知り合って数秒後にはなんとなく理解しあえる」という、こちらもズバリ、大人が恋に落ちる歌です。
松本 恋に落ちたときの墜落感を描きたいと思った。意外と盲点なんだよね。誰もそういう観点で歌を作ってないから。
クミコ 「墜落」とか「きりもみ」とか「ブレーキをかけるつもりでアクセルを踏み間違えて」とか、そういった言葉が出てくるのが面白くて。
松本 恋に落ちた感覚、その状態を説明してるだけなんだけど、歌を聴きながら、言葉を追っていくとけっこうくるんだよね。
──しかもこの曲、松本さんの詞に永積さんがメロディを付けたんですよね。
クミコ そうなんです。だからこの詞も上がってきたとき、果たしてこれにメロディを付けられる人なんているのかしらって、実は私、危ぶんでたんです(笑)。
松本 あはははは(笑)。
クミコ 永積さんにお会いしたとき、彼がおっしゃってた。「これが松本さんが書いた生の詞なんだと思うとすっごい緊張した」って。「だから、どうしよう、書けない、書けない、でも、書かなきゃ、書かなきゃと思ってたらできたんですよ!」って。
松本 そんなにプレッシャーがかかったんだ(笑)。
クミコ ものすごく光栄だったんですって。要するに、自分のところに松本さんの詞がきた、ということが彼は非常にうれしくて、一生懸命曲を書いたって。
若い世代ががんばってくれると本当にうれしくなっちゃう
──詞先とは思えないくらい永積さんらしい曲に仕上がっていますよね。
松本 ホント、曲が詞にピッタリなんだ。ビックリするぐらいに。
クミコ だから私、思わず言っちゃった。「よくできましたね、この詞で」って(笑)。
松本 出た、クミコの上から目線(笑)。
クミコ 違うの違うの、素晴らしい曲だってことを言いたかったんです。ホントにいい曲だったから。
松本 しかも永積くん、コーラスではクミコの歌の裏で遊んでるんだよね。彼ならではのソウルっぽいコーラスで。
クミコ そうなの。彼は歌もすっごく上手。私はものすごく勉強になったんです。自分ではそんなふうには歌えないから「永積さんの歌、すっごくよかった!」って。これもちょっと上から目線で言っちゃったんだけど(笑)。
松本 あはははは(笑)。
クミコ だって彼、若いから。私、永積さんのお母さんと同じぐらいなんだもん。「よくやった、よしよし」って、どうしてもそういう感じになっちゃう。秦さんもそうですけど、若い世代ががんばってくれると本当にうれしくなっちゃう。
松本 秦くんがスタジオにやって来たらクミコは「かわいいかわいい」ってしきりに言ってたよね。100回くらい(笑)。
クミコ だってかわいいんだもん! くまのぬいぐるみみたいなんだもん(笑)。今まで周りにそういう世代がいなかったから、急にかわいい青年がやって来て、きゃーって思わず手が伸びそうになっちゃった。
松本 触りたくなっちゃったんだ(笑)。
クミコ もちろん触らないんだけど、触りたくなっちゃうじゃない。秦さん、すごく照れちゃってた。ホント、目の保養(笑)。
松本 レコーディングの日が初対面だったわけじゃないでしょ?
クミコ コンサートの楽屋でお会いするとか、そういうことは何度かあったんです。でもそういうオンの状態のときって、私もそうだし皆さんそうなんですが、厳しい表情をしてるじゃないですか、緊張感もあるから。だけどレコーディングでお会いしたときはそういったことがすぽーんと抜けた素の状態だったんでしょうね。ホントにかわいかった。素顔がかわいいのは若い証拠。おばさん、うれしい!
松本 ダメだな、こりゃ(笑)。
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収録曲
- さみしいときは恋歌を歌って
[作詞:松本隆 / 作曲:秦基博 / 編曲:冨田恵一] - 恋に落ちる
[作詞:松本隆 / 作曲:永積崇(ハナレグミ)/ 編曲:冨田恵一] - さみしいときは恋歌を歌って(Instrumental)
- 恋に落ちる(Instrumental)
【TSUTAYA購入特典あり】
- A賞:クミコ&松本隆(クミコ with 風街レビュー)×TSUTAYAスペシャルイベント トーク&ミニライブ 50組100名様ご招待
- 2016年11月12日(土)東京都 渋谷区某所
OPEN 13:30 / START 14:00
<出演者>
クミコ / 松本隆 - B賞:TSUTAYA限定特典DVD 100名様プレゼント
- クミコ with 風街レビュー「さみしいときは恋歌を歌って 」ミュージックビデオ(フルコーラスVer.)
詳細はhttp://www.puerta-ds.com/kumiko/にて。
問い合わせ先:店頭もしくは03-6800-4753(平日10:00~18:00)
クミコスペシャルコンサート2016
- 2016年9月24日(土)
- 東京都 EX THEATER ROPPONGI
- ゲスト:松本隆 / 秦基博(予定)
クミコ
女性シンガー。1982年にシャンソニエの老舗・銀座「銀巴里」でプロ活動をスタートさせた。2000年に松本隆が手がけたアルバム「AURA」で一気にその名を広める。2010年「INORI~祈り~」がヒットし、同年「第61回NHK紅白歌合戦」に初出演を果たした。2015年9月、つんく♂がプロデュースを手がけた楽曲「うまれてきてくれて ありがとう」をシングルリリース。レコード大賞作曲賞を受賞する。2016年9月、松本隆と16年ぶりにタッグを組み、「クミコ with 風街レビュー」として両A面シングル「さみしいときは恋歌を歌って / 恋に落ちる」をリリースした。
松本隆(マツモトタカシ)
1949年生まれの作詞家。ドラマーとして所属していたはっぴいえんどでは、多くの楽曲の作詞を手がけていた。1972年のバンド解散後は、作詞家として本格始動。太田裕美「木綿のハンカチーフ」、寺尾聰「ルビーの指環」といった数々の名曲の作詞を手がけ「日本レコード大賞」などを受賞する。作詞家生活45周年記念として2015年に開催されたコンサート「風街レジェンド2015」が伝説的なライブとなり、記念アルバム「風街であひませう」はその年の「日本レコード大賞」アルバム賞を受賞した。また同年、昭和から現在まで第一線で日本の音楽史を支えてきた功績が認められ「第66回芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞。2016年、クミコとタッグを組み、新プロジェクト「クミコ with 風街レビュー」を発足。9月に両A面シングル「さみしいときは恋歌を歌って / 恋に落ちる」をリリースした。