久保田利伸|30周年を締めくくる、素のグルーヴ閉じ込めた初ライブ盤

とてつもない臨場感を感じられるライブCD

──柿崎洋一郎さんをはじめ、バンドメンバーは皆さん気心の知れた人たちだったんですか?

ツアー初参加はドラムのFUYUだけでしたね。いつもドラムは長年一緒にやってる、ニューヨークにいるラルフ(・ロール)という奴なんですけど、彼のスケジュールが大物アーティストのツアーと被っちゃって、僕が「そっちに行け」って言ったんですよ。「10本しかないからいいよ。日本にもいいドラマーはいるから」って。そしたら相当悲しそうな声を出してました(笑)。FUYUはプレイにグルーヴ感もあるし、音楽のことをよくわかってる、すごく信頼感のある奴ですね。

──初のライブCDを客観的に聴いて、何か感じるところはありましたか?

久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」の様子。

人のライブ盤を聴くときと同じように、空想と妄想が豊かになりますね。ライブ映像の場合は満足してしまうのも早いですが、音だけだと何十回聴いても飽きなかったり、臨場感を感じられたりするんですよ。どの公演のテイクにするかを選ぶときに、スタジオに来たスタッフもとてつもない臨場感を感じられると言ってました。

──元の音源だと生音じゃない曲も、今回はバンドサウンドで聴くことができますしね。

元の音源と同じ機材でやったとしても、音が絶対ライブの響きになるんですよ。環境が違うし。だったら、ライブの空気感に合う生の楽器に入れ替わってるほうが自然だと思って。お陰でスタジオ録音にはない魅力がアルバムに出てますね。

──収録されているテイクは、どのような基準で選んだんですか?

日によって歌の出来が違うので、うまく歌えてるもの、聴きやすいものを最初は選びました。やっぱりうまくできた日の歌を聴かせたいじゃないですか。でもそれを4、5曲並べたら「うまいものだけだと、スタジオ録音に近過ぎないか」と思えてきて。ちょっとした余計な間違いが入ってるのもライブならではのワイルド感だなと考えて、途中から基準を変えました。二度と起こりそうもない歌の温度感とか、逆にうまいと思えるような情緒感とかを考慮しながらテイクを選びましたね。

自分のままでいればいい

──改めて、久保田さんにとってライブとは?

取り返しが効かないものがライブですね。レコーディングと違って歌い直しができないからこそ出る声もあるし、乗ってしまう魂もあって。あと、ライブでお客さんからもらう熱は、僕にとってかけがえがないものです。僕が出すものに対して、お客さんがさらに上回った熱量でリアクションを返してくれるという。これが数時間の中で繰り返されることは、僕らみたいな人間にとってすごくありがたい経験になってます。

──30年間活動されてきて、ご自身の中のライブ観に何か変化はありましたか?

久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」の様子。

知らぬ間に経験の中で変わっていることはあると思いますけど、逆に変わらないのは僕を初めて観る人たちの前でやってるという気持ちです。アマチュア時代やデビューしてすぐの頃は初めて僕を観るお客さんの前でライブをやり続けるわけですが、お客さんが増えてくると何度も観に来てて慣れてる人しかできないリアクションができあがって、初見の人が置いてかれちゃうことがあるじゃないですか。それは嫌なので、一見さんが楽しめるライブにすることを大事にしてます。今回のツアーの会場は狭いところだったので初めて観に来た人は少なかったかもしれないですが、そういった人たちも疎外感なく楽しめることを心がけました。

──コラボレーションアルバムやアナログ盤のボックスセットの発売など、30周年という節目でさまざまな活動を行われてきましたが、今回のライブ盤がその締めくくりになるのでしょうか?

そうですね。去年が30周年で、そこから1年経ちきっちゃいましたし。今回のツアーでせっかく素に戻ったので、いい意味で“エピソード2”という気持ちを持ってやっていきたいですね。

──大きな区切りを迎えた感覚はあります?

ここまでいろいろやっちゃうとありますね。本当は30という数字よりもワンクォーターの25のほうが切りがいい気がするんですが、レコード会社にほだされた感じがあります(笑)。でも、やっぱり30周年は大きな区切りですね。そのお陰でいろんなことを考えられます。

──30周年イヤーという大きな節目を駆け抜けたことで、何か見えたことはありましたか?

俺は俺、ということですね。自分の音楽スタイルはどうやっても自分の匂いがするものなんですよ。だから、無理や工夫はしなくていいと考えていて。「あの人みたいになりたい」と思って無理をすると小さくまとまっちゃうし。もし「あの人みたいになりたい」なら、自分を見失わず、自分のままでいればいいんです。

久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」
2017年9月27日発売 / SME Records
久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」初回限定盤

初回限定盤
[CD+DVD+フォトブック]
3780円 / SECL-2206~7

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久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / SECL-2208

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CD収録曲
  1. OPENING JAM
  2. Shake It Paradise
  3. Funk It Up
  4. 誓い
  5. Forever Yours(with YURI)
  6. Tomorrow Waltz
  7. Upside Down
  8. Free Style
  9. LA・LA・LA LOVE SONG
  10. SOUL BANGIN' ~B.LEAGUE EARLY CUP VERSION~
  11. Bring me up!
  12. SHADOWS OF YOUR LOVE
  13. Go Go Old School Medley(To The Party~Dance If You Want It~Candy Rain~北風と太陽~GIVE YOU MY LOVE~Keep On JAMMIN')
  14. SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~(with Ty Stephens)
  15. LOVE RAIN~恋の雨~
初回限定盤DVD収録内容

~THE HOUSE PARTY!~“Eyes from The Back Door”

  • ENCORE JAM
  • Another Star~You were mine
  • Cymbals
久保田利伸(クボタトシノブ)
静岡出身の男性R&Bシンガー。1985年に作曲家としてデビューを果たし、田原俊彦や鈴木雅之、小泉今日子、高橋真梨子などさまざまなアーティストに楽曲を提供する。1986年にシングル「失意のダウンタウン」でソロシンガーとしてメジャーデビュー。圧倒的な歌唱力とクオリティの高い楽曲、卓越したリズム感が音楽ファンから高く評価される。代表曲は「流星のサドル」「Missing」「You were mine」「GODDESS~新しい女神~」「LA・LA・LA LOVESONG」「AHHHHH!」など。1995年にはアメリカのメジャーレーベルと契約し、海外でもアルバムを発表している。また近年は海外アーティストのみならず、KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHI、AIなど、日本の若手アーティストとのコラボレーションも積極的に行っており、2016年11月にはデビュー30周年を記念したコラボベストアルバム「THE BADDEST~Collaboration~」を発売。2017年9月には初のライブ盤「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」をリリースした。