ライブハウスならではのネタが膨大に
──セットリストはどのように決めたのでしょう?
選曲は難しかったです。プロとしての30年間を2時間半の1つのショーにしなきゃいけなかったので。全部の曲を30秒ずつつなげてメドレーにすることはできないし(笑)。まずは100曲くらいまでなんとか絞って、最終的には曲を2種類に分けて選びました。1つはライブハウスのツアーだからこそやりたい、頻繁には披露しないちょっと珍しい曲で、もう1つは「やっぱり、この曲はいつでも聴きたいよな」という曲。その両方を入れ込みました。あと、1つの時代に固まらないほうが今回はふさわしいなと考えて、涙を飲みながら絞っていきましたね。
──「Shake It Paradise」「Funk It Up」とファンキーなナンバーが続いたあと、「誓い」「Forever Yours」「Tomorrow Waltz」といったスローで聴かせる曲が連続して、また「Upside Down」「Free Style」とノリのいい曲に戻るという、かなり緩急がはっきりした曲順ですよね。
これは癖ですね。マイケル・ジャクソンの「Off The Wall」というアルバムが、僕がコンサートやアルバムを作るときの基本で。1、2曲ファンキーでポップな曲が続いたあとスローなナンバーがあって、またファンキーな曲に戻るという。マイケル・ジャクソンだけじゃなく、大衆ソウルミュージックの影響を受けてそういう癖ができました。あと、僕はアマチュアの頃に渋谷の円山町にあるディスコに友達とよく遊びに行ってたんですが、その時代にはチークタイムというものがまだギリギリ残ってたんです。ファンキーに踊ったあとチークタイムが3曲分くらいあって。今もそういった緩急がないと落ち着かないですね。
──ツアーの中でセットリストに変更はなかったんですよね?
そうですね。変えてもいいと思ってたんですけど、このセットリストが悪くなかったし、1つの曲の中でもいろいろと変えられることがあるので、それで十分だなと。例えば僕の歌い出しが変わったり、途中で演奏をドラムだけにしたりという、ライブハウスならではのことをその場その場でやりました。バンドもいい意味で緊張感とフレッシュさとワクワク感を持ってやってくれました。
──「OPENING JAM」でブーツィー・コリンズの楽曲が取り入られていたり、「LA・LA・LA LOVE SONG」のイントロでコーラスがデルフォニックス「La La Means I Love You」を歌ったりしているのも、そういったアドリブの1つなんですか?
ブーツィーは変わらずにやってた部分で、「La La Means I Love You」に関してはリハーサルで1回だけ試して、バンドメンバーには「本番でやるかもよ」と言ってました。「La La Means I Love You」のほかにも違う曲をコーラスに歌わせてからイントロに入るという遊びはたくさんあったし、スティーヴィー・ワンダーの曲を遊びで入れることもありました。もっと大きな会場のライブでも昔の曲をネタで入れるんですけど、今回はそれが膨大で、ライブハウスならではという感じでしたね。
──ブラックミュージック好きの人にとっては、より一層楽しめるライブだったと。
ブラックミュージックが好きな人や、そういった音楽の専門家はニンマリしちゃうでしょうね。でも、そこに酔って満足するのも嫌で。初めて聴くネタであってもキャッチーであったり、聴き覚えがあったり、素人も玄人も両方が楽しめるものにしました。
最終日に解決した衣装問題
──「LA・LA・LA LOVE SONG」では“大阪”や“浪速”というフレーズをコーラス隊と連発していますが、開催地に合わせたアドリブも?
はい、ありました。コーラスの外人2人には、「大阪」は予想が付いても「浪速」はわからなかったでしょうね。でも、1小節前くらいから僕がわかりやすく「浪速!」って言うことで母音が伝われば、2、3回繰り返すうちに発音できるようになるんです。3文字くらいが言いやすいんですけど、土地によっては難しいときもあって、文字数が多い場合はリハーサルのサウンドチェックのときに言い方を決めてました。事前に準備するのを忘れて、本番でうまく言えなかったこともありましたけど。
──ツアーを通してハプニングなど、何か印象的な出来事はありましたか?
アドリブだらけだったから、何かあって当たり前みたいな感じでした。何が起こってくれてもOKというか、そこにどう対処するかが楽しみなんです。大袈裟に言っちゃえばピンチがチャンスになるみたいに、いいことが生まれたりするので。
──例えば、どんなことが?
今回はライブハウスツアーだったので、アリーナショーのときのような計算された、かっちりした衣装は着たくなくて。ラフにファンキーに、でもステージ衣装っぽいものがよかったんです。そのことがスタイリストにうまく伝わらず、衣装が全然決まらなくて、最終的に見つけてきた薄い生地のハーフコートが、めくらないと手が隠れるくらい袖が長くて。僕はめくって腕に留めておきたかったんですけど、ライブ中に袖が落ちてきちゃって、ツアー中にいろいろ試してもダメだったんですよ。結局最終日に解決策が見つかりました。ボタンの穴にゴムを通して縫えばいいんだと。
──全10公演のうち9公演で試行錯誤してたんですね(笑)。
スタイリストが毎回「もう大丈夫だから」と言うんですけど、2人して下手なコント状態で、結果的に大丈夫じゃないライブが9回続きました(笑)。何の衣装にしたらいいか分からないところから始めちゃったんで、スタイリストはかわいそうでしたね。
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とてつもない臨場感を感じられるライブCD
- 久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」
- 2017年9月27日発売 / SME Records
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初回限定盤
[CD+DVD+フォトブック]
3780円 / SECL-2206~7 -
通常盤 [CD]
3240円 / SECL-2208
- CD収録曲
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- OPENING JAM
- Shake It Paradise
- Funk It Up
- 誓い
- Forever Yours(with YURI)
- Tomorrow Waltz
- Upside Down
- Free Style
- LA・LA・LA LOVE SONG
- SOUL BANGIN' ~B.LEAGUE EARLY CUP VERSION~
- Bring me up!
- SHADOWS OF YOUR LOVE
- Go Go Old School Medley(To The Party~Dance If You Want It~Candy Rain~北風と太陽~GIVE YOU MY LOVE~Keep On JAMMIN')
- SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~(with Ty Stephens)
- LOVE RAIN~恋の雨~
- 初回限定盤DVD収録内容
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~THE HOUSE PARTY!~“Eyes from The Back Door”
- ENCORE JAM
- Another Star~You were mine
- Cymbals
- 久保田利伸(クボタトシノブ)
- 静岡出身の男性R&Bシンガー。1985年に作曲家としてデビューを果たし、田原俊彦や鈴木雅之、小泉今日子、高橋真梨子などさまざまなアーティストに楽曲を提供する。1986年にシングル「失意のダウンタウン」でソロシンガーとしてメジャーデビュー。圧倒的な歌唱力とクオリティの高い楽曲、卓越したリズム感が音楽ファンから高く評価される。代表曲は「流星のサドル」「Missing」「You were mine」「GODDESS~新しい女神~」「LA・LA・LA LOVESONG」「AHHHHH!」など。1995年にはアメリカのメジャーレーベルと契約し、海外でもアルバムを発表している。また近年は海外アーティストのみならず、KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHI、AIなど、日本の若手アーティストとのコラボレーションも積極的に行っており、2016年11月にはデビュー30周年を記念したコラボベストアルバム「THE BADDEST~Collaboration~」を発売。2017年9月には初のライブ盤「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」をリリースした。