久保田利伸が初のライブ盤「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」をリリースした。本作には、今年6月13日の東京・チームスマイル・豊洲PITから9月1日の愛知・Zepp Nagoyaまで全10公演が行われた“ライブハウス・ショー”「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」より抜粋した音源を収録。昨年デビュー30周年を迎え、原点に回帰した久保田による臨場感あふれる歌声を聴くことができる。
音源ナタリーでは久保田へのインタビューを実施。ライブ盤やツアー中のエピソード、30周年イヤーを経た現在の心境などを聞いた。
取材・文 / 近藤隼人
ミュージシャン魂に火を点けられた
──これまでの30年間でライブ盤を発表してこなかった久保田さんが、今回「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」をリリースすることになったきっかけはなんだったんでしょう?
僕は最初ライブCDを出すつもりはなかったんですよ。レコード会社の人が提案してきて、「ライブDVDを出そう」と言われるかなとは思ってたんですけど、ライブCDのことは全然予想してなくて。ライブツアーをやるたびに会場に20台くらいのカメラがあって、「毎回収録しなくてもいいんじゃないかな」と言ってたんで、レコード会社の人も変化球で来たんでしょうね。カメラもなくて音を勝手に録るだけだから、「ライブに集中していればいいな」「あんまり考え込んで用意しなくていいな」と思って「いいですね。やりましょう」と答えました。あと「これまでライブCDを出してないのか」と自分でも改めて気付いて、「音だけがあるのが音楽の本来の姿だよな」とミュージシャン魂に火を点けられました。
──と言うことは、これまで何か頑なな理由があってライブ盤をリリースしてこなかったわけではないんですね。
そうです。もともと僕の中でライブは会場で観て楽しむものというイメージしかなかったこともあって、自分からライブCDを出してほしいとリクエストしてこなかっただけで。
──普段、ほかのアーティストのライブ盤を聴くことはありますか?
今はみんなライブCDをあまり出さないので、新しいものに関しては聴く機会はないですね。アマチュアのときはいろいろ聴いてましたけど、録音されたものに聴き慣れてライブ音源を聴くとがっかりすることもあるんですよ。「思ってたアレンジじゃないなあ」とか「歌はそこでそうなっちゃうか」とか。なので、僕が好んでライブ音源を聴いたり映像を観たりするアーティストはライブがよい人に限りますね。脂の乗った歌を歌ってたり、演奏がすごくファンキーだったり、いい意味で特殊なアレンジが施されたり。逆に一生懸命CDを再現してると「ライブじゃなくていいじゃん」ってなりますね。
ワイルドな素の感じでやれるチャンスだった
──今回、ツアーファイナルを迎えてからライブ盤が出るまで1カ月弱という、かなり短いスパンでのリリースですね。
何に関しても早く出したいんですよ。今回の場合だと観た人が熱い気持ちのまま聴けるし、ライブに来れなかった人のほうが多いので、その人たちのためにも同じ季節のうちに出したくて。映像がなくて音だけだったこともあり、すぐにリリースできました。
──ライブCDを出すことありきのツアーだったんですか?
まずツアーをやることが先に決まってて、始まる1カ月くらい前にライブCDを出そうというさっきの話になりました。
──なるほど。「3周まわって素でLive!」と銘打たれ、全5都市のライブハウスで全10公演が行われた今回のツアーですが、どういったツアーにしようと思ってスタートさせたものなのか、改めて聞かせてください。
30周年イヤーが終わるタイミングで始まったツアーなので、30年間のいろんな時代の自分を切り取るべきという考えがありました。それと同時にアマチュア時代や、右も左もわからないデビュー直後のようなライブをライブハウスでやろうという思いもあって。プロになっていろんな経験をして「この位置でこういう感じで歌うと照明さんはやりやすいんだ」とか、「こんなふうに盛り上げると、お客さんからはこういう反応が来るんだ」ということがわかるようになったんですけど、今回はそういったことがわからなかったときのようなワイルドな素の感じでやろうと。って言うかやれるチャンスだと。やる曲だけ決めて練習して、あとはステージに乗っかっちゃえばいいっていうそこらのライブハウスのノリがありますよね。僕はそういうノリでライブをやるのが本来一番好きなので、今回は決めごとを設けないで始めようと思いました。
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ライブハウスならではのネタが膨大に
- 久保田利伸「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」
- 2017年9月27日発売 / SME Records
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初回限定盤
[CD+DVD+フォトブック]
3780円 / SECL-2206~7 -
通常盤 [CD]
3240円 / SECL-2208
- CD収録曲
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- OPENING JAM
- Shake It Paradise
- Funk It Up
- 誓い
- Forever Yours(with YURI)
- Tomorrow Waltz
- Upside Down
- Free Style
- LA・LA・LA LOVE SONG
- SOUL BANGIN' ~B.LEAGUE EARLY CUP VERSION~
- Bring me up!
- SHADOWS OF YOUR LOVE
- Go Go Old School Medley(To The Party~Dance If You Want It~Candy Rain~北風と太陽~GIVE YOU MY LOVE~Keep On JAMMIN')
- SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~(with Ty Stephens)
- LOVE RAIN~恋の雨~
- 初回限定盤DVD収録内容
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~THE HOUSE PARTY!~“Eyes from The Back Door”
- ENCORE JAM
- Another Star~You were mine
- Cymbals
- 久保田利伸(クボタトシノブ)
- 静岡出身の男性R&Bシンガー。1985年に作曲家としてデビューを果たし、田原俊彦や鈴木雅之、小泉今日子、高橋真梨子などさまざまなアーティストに楽曲を提供する。1986年にシングル「失意のダウンタウン」でソロシンガーとしてメジャーデビュー。圧倒的な歌唱力とクオリティの高い楽曲、卓越したリズム感が音楽ファンから高く評価される。代表曲は「流星のサドル」「Missing」「You were mine」「GODDESS~新しい女神~」「LA・LA・LA LOVESONG」「AHHHHH!」など。1995年にはアメリカのメジャーレーベルと契約し、海外でもアルバムを発表している。また近年は海外アーティストのみならず、KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHI、AIなど、日本の若手アーティストとのコラボレーションも積極的に行っており、2016年11月にはデビュー30周年を記念したコラボベストアルバム「THE BADDEST~Collaboration~」を発売。2017年9月には初のライブ盤「3周まわって素でLive! ~THE HOUSE PARTY!~」をリリースした。