メロディメーカーとしての自負がある

──ここで空中分解の歴史をちょっと振り返っていただきたいのですが。キャリアは結構長いんですよね？

POCO　アマチュアから数えると長いですね。専門学校時代のクラスメイト3人でまず空中分解と名乗り出して、その頃はポストスーパーカーみたいなことをやってました。その後、メンバーが1人抜けたことをきっかけに、当時流行り出してたエレクトロをやり始めるようになって。元々がロック畑の人間なんで「80KIDZ、カッコいい！」みたいな（笑）。

──2人組の空中分解として2008年にミニアルバム「COCOLO COLOR」をリリースしていますね。

POCO　はい。そのときはイケイケだったんですけど、そのすぐあとにもう1人のメンバーが抜けてかなり不安になるっていう（笑）。僕は元々メロディメーカーだっていう自負があるんですけど、それがソロとしてどこまで評価してもらえるかが全くわからなかったので。で、そのころから女性ボーカルを迎えることを考え始め、その流れの中で初音ミクをフィーチャーした曲を発表しました。

──そこにはのちに生身の女性ボーカルをフィーチャーするためのテストのような気持ちもありました？

POCO　そうですね。「HIGH TOUCH ME」という曲なんかはまさにミクで試した感じだったと思います。時期で言うと2010年から2011年、震災の前ぐらいまでは本当に四苦八苦しながらいろんなことを試してましたね。正直、ソロになってからはかなりしんどかったです。でもファンの子は長い目で見てくれてるというか、次の動きをすごく楽しみにしてくれてたんですよ。そういう子たちにちゃんと恩返ししなくちゃなっていう気持ちがあったからなんとかクサらずここまでやってこれたというか。

──今回のメジャーデビューが最後のチャンスだと思う、といった内容をPOCOさんはブログに書かれていましたよね。ソロとして試行錯誤してきた今のお話を訊くと、その覚悟にも納得できる気がします。

POCO　これほど大きいチャンスはないと思うんですよ。僕が願ってた女性ボーカル作品で、しかもコロムビアっていう大きいメーカーさんからデビューできるわけですからね。ここでベストを尽くしてダメだったなら正直、空中分解はダメだろうなって思うんです。逆にここでしっかりと評価してもらえたならば、それはしっかりと先につなげていきたいっていう気持ちもあります。それくらいこのチャンスに託してる感じがあるので、浮足立ってはいられないというか。

声の質感がキャッチー

──そんな覚悟のメジャーデビューにボーカルとして参加したアンテナガールさんはどんな気持ちですか？

アンテナガール　もちろん空中分解の今までの流れは知っていたので、このアルバムを機にPOCOの人気がより高まればいいなって思ってます。大好きな空中分解の曲に、なんとか花を添えられればなっていう感覚ですね。自分の声を気に入ってもらえてメジャーデビューのお話をいただけたっていうのもすごくうれしいことですし。

──空中分解の楽曲を世に広める上で、アンテナガールさんの歌声は強力な武器になっていると思いますよ。ものすごく魅力的な声だと思います。

POCO　正直、仮歌を頼んだときにはそんなに魅力的な声だとは思ってなかったんですよ（笑）。近くにいて聞きすぎてた声だったので。

アンテナガール　生まれたときから一緒にいますからね（笑）。

──ああ、確かにそういうものかもしれないですね。

POCO　でも今回改めて作品としてレコーディングしたものを聴いたときに、声の質感がものすごくキャッチーだなって思ったんです。うまいヘタは練習することで直るかもしれないけど、質感は持って生まれたものだから変えられるもんじゃないんですよね。そういう意味ではすごく良かったなって思います。兄妹っていうことで声質が僕と似ているので、歌のディレクションをしやすかった部分もありましたし。

──歌の経験はあったんですか？

アンテナガール　歌うことは好きだったのでバンドでボーカルをやったりっていうことはあったんですけど、本格的な音楽活動は全くやってなかったです。レコーディング自体、今回が初めてだったのでとにかく難しかったですね。いろいろ言われました（笑）。

POCO　「もっとかわいく！」とかね（笑）。

アンテナガール　で、言われたことに対して自分なりに試行錯誤してみるというか。すごく勉強になりました。

POCO　アンテナガールというボーカリストが持っている伸び代を僕自身感じることができたので、今回のアルバムではそこに期待を抱く感じで聴いてもらえたらいいかなって思いますね。