Kroiが2022年第1弾作品となるシングル「Small World」を配信リリースした。
昨年6月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsからメジャー1stアルバム「LENS」をリリースし、11月から今年1月にかけて開催した対バンツアー「Kroi Live Tour 2021-2022 "Dig the Deep"」を成功させるなど、着実に活動の規模を広げているKroi。最新作「Small World」は、R&B、ファンク、ロック、ヒップホップ、フュージョンをベースに持つ彼らの最新のモードが詰め込まれた1曲となっている。
音楽ナタリーでは、メンバーの内田怜央(Vo)、長谷部悠生(G)、関将典(B)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)にインタビュー。バンドにとって飛躍の年となった2021年を振り返ってもらいつつ、「Small World」の制作秘話について聞いた。
取材・文 / 黒田隆太朗撮影 / 斎藤大嗣
インフラ整備の年になった2021年
──Kroiは全日本CDショップ店員組合の企画による音楽アワード「第14回CDショップ大賞2022」で関東ブロック賞を受賞したり、日本テレビ系「バズリズム02」の企画「今年コレがバズるぞベスト10」で3位にランクインしたりと話題に事欠かないですね。
長谷部悠生(G) この前、電車を待っているときに、風がバッと吹いてきて帽子が飛んでいっちゃったんですよ。そしたら近くにいた男性が拾ってくれて、帽子を受け取るときに「Kroiの長谷部さんですよね?」と話しかけてくれたんです。街で声をかけられるのは初めてだったからうれしかったですね。
益田英知(Dr) それでその日は遅刻してきたんですよ。
──(笑)。2021年は振り返ってみてどんな1年でした?
長谷部 一番はライブが多かったことですかね。去年の2月に1年ぶりくらいにライブをやって、それから3回ツアーを回ったのは大きかったです。
千葉大樹(Key) インディーズの頃はツアーで地方に行くときに、前乗りすることがあまりなかったんですが、去年は多かったし。あと益田さんは飛行機がめちゃくちゃ好きで、離陸のたびにはしゃいでました。
関将典(B) 毎回聞いてもないのに飛行機に乗れる喜びを説明してくるっていう(笑)。
益田 まあ、さすがに最後のほうは飽きちゃいましたけどね(笑)。
──去年はEP2枚と、フルアルバム1枚を出していて、楽曲制作にも意欲的でしたよね。
益田 とにかくコンスタントに作り続けた1年でした。その中で自分たちのルーツをリスナーにしっかりと示せたし、楽曲ごとに挑戦や新しい要素をブチ込めたのでよかったなと思います。
関 コロナ禍で活動が難しくなっている中でも、柔軟にいろいろなことができたので、自分たちがやるべきことはやれたという充実感があります。
内田怜央(Vo) あと、制作のフローができあがった1年でもありましたね。レコーディングでいつも使うスタジオがあるんですけど、そこにめちゃめちゃ愛着が湧いていて。今は家みたいな感じで、だいたい朝まで帰らないです。
関 活動環境が整ったよね。
──バンドにとってインフラ整備の年になったと。
内田 そういうことですね。昔のような行き当たりばったりの泥臭い活動もめちゃめちゃ楽しかったんですけど、今は突き詰められる楽しさみたいなものがあって。最近はそれで遊んでいる感じです。
対バンツアー「Dig the Deep」を終えて
──昨年11月から今年の1月にかけては、初の対バンツアー「Kroi Live Tour 2021-2022 "Dig the Deep"」が行われました。音楽ナタリーでは各公演のゲストとの対談をセッティングしてツアーへの意気込みなどを語ってもらいましたが(参照:Kroi 対バンツアー開催記念インタビュー第1弾|どんぐりず&韻シスト迎えたインタビュー2本立て / Kroi 対バンツアー開催記念インタビュー第2弾|CHAI、ニガミ17才、マハラージャンとのインタビュー3本立て)、全公演を終えてみていかがでしたか?
千葉 めちゃくちゃ楽しかったです。コロナ禍になってあまり人のライブを観ることもなかったので、気兼ねなくライブを楽しめたのもよかったですし、いろんなアーティストとお話をする機会にもなりました。
長谷部 インディーズの頃からやっている企画なので、そのイベントを全国に紹介できたのもうれしかったですね。
千葉 「Dig the Deep」では既存曲をアレンジして演奏したので、音楽的なノウハウを得られたのも収穫でした。
関 うん。普段からよくライブに来てくれるお客さんにも、そういった面で意外性を見せられたかな。
千葉 あと、1発目がどんぐりずだったので、世代が近い人たちとラフに始められたのもよかった。
益田 どんぐりずのツーマンはほかの公演と比べても、ホームパーティのような雰囲気で、仲のいいやつらと一緒に遊んでいるようなライブになりました。
千葉 どんぐりず、ライブ後の打ち上げに僕らが全然知らない人を呼んできたんですよ(笑)。
──2本目の韻シストとの対バンはいかがでした?
関 めちゃくちゃよかった。
千葉 うん、名古屋は本当に全部ひっくるめていいライブになりました。
内田 今回のツアーの中で一番ピースな1日でした。好きな音楽の方向性が似ているし、バンドの中にMCがいる数少ないバンド同士だし。自分はそういうバンドをやるうえで韻シストさんをリファレンスにしていた部分があったので、一緒にライブができて光栄でした。
──CHAIとのツーマンはどうでした?
関 パフォーマンスが圧巻。
千葉 CHAIはヤバいね。
長谷部 楽曲をただ演奏するだけではなく、MCや振り付けにお客さんを楽しませる工夫があって改めてすごいなと思いました。
内田 俺らもショー的なライブをしたい気持ちがあるので、そういうところにシンパシーを感じましたね。
関 それで僕らもオープニングのときに黒のローブを被って登場して、最後はクラッカーを鳴らして終わるっていうことをやって。苦しまぎれでCHAIのエンタメに対抗してました(笑)。
内田 2021年の最後のゲストはニガミ17才さんだったんですけど、演奏がめちゃめちゃバキバキで(笑)。バンドとしての基礎体力がすごくあるうえでの表現というか、自分たちのやりたいことをしっかりお客さんに伝えようとする姿勢を感じました。
関 あと(イザキ)タツルさんが僕らの「Page」という曲のフレーズをサンプリングしてベースソロを弾いてくださって。あれは同じベーシストとしてうれしかったですね。
──今年1月に行われた渋谷CLUB QUATTROでの2DAYS公演はいかがでした?
関 初日のマハラージャンさんは、バンドメンバーの皆さんの演奏がまずうまいですし、楽曲もポップで楽しかったですね。マハラージャンさん自身が「Dig the Deep」を楽しみにしてくれていて、MCもアットホームな感じに持っていってくれました。
──最終公演のゲスト・在日ファンクとは面識があったんですか?
関 いえ、一方的に僕らが好きだったというだけで面識はなかったです。
長谷部 でも在日ファンクでエンジニアをやっていた方に僕らもレコーディングをお願いしていて、そういう共通点はあるんですよ。
千葉 Kroiが今のレーベルとやっていくことが決まったときに、「国内のバンドをいい音で録っている人、例えば在日ファンクとかのエンジニアはどうだろう?」と思って。それで在日ファンクの作品のクレジットを見て、エンジニアの柳田亮二さんという方にお願いすることになったんです。そういう音の憧れがあったバンドと対バンできてうれしかったですね。
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