「いいね」がインフレを起こしてしまっている
──ニガミ17才の皆さんは曲を作る際、意識していることはありますか?
岩下 メンバーに対してサプライズを用意するところかな。
内田 それ、めっちゃあります。俺はデモを出すときが一番勝負なんですよ。なんもハマんなかったらどうしようって。
──その勝負の勝率はどんなものなんですか?
関 僕らとしては、「どのデモもめちゃくちゃいい!」って評価になります。
長谷部 うん。勝率で言うと、常に僕らが負かされている感じですね。毎回デモをもらうたびに「こう来るか」と驚かされるので。
関 ただ、1回だけ作品のリード曲を最後にレコーディングすることがあって、そのときに怜央が出してくれたデモ5曲が、みんなが思っていたリードのキャラクターとは少し違って。そのときだけはみんなの反応が鈍かったよね(笑)。
内田 そのあと5日間くらいでもう5曲作り直して。
岩下 修正したんだ(笑)。
──岩下さんはそういう経験はありますか?
岩下 いや。むしろ気を遣われてるな、と思うときはあります。
イザキ ははは(笑)。
岩下 基本的に「よくない」と言われたことがないから、「いいね」の価値が下がってるんですよ。僕の中で「いいね」がインフレを起こしてしまっている。なので普段はLINEで音源を聴かせることが多いんですけど、「いいね」のあとに付くビックリマークの数で曲の出来を判断しています。
平沢 そうなの?(笑)
──そのあと制作はどういう風に進んでいくんですか?
岩下 曲は僕が作ったり、タツルボーイが持ってきたものを2人でこねくり回しながら進めていきます。そこにあくびも立ち会って、僕らが何をカッコいいとするのかわからなくなったときに彼女の意見をもらう感じですね。
──そうしたとき、平沢さんはどんなところを大事にしています?
平沢 私はけっこうイケイケなロックが好きなので、2パターン来たらなるべくしっとりしてないほうを選んでます。私だけ歳が離れているせいか、もっとバーン!っとなる曲を欲しがるんですけど、「そういうのはいっぱいやってきたからいいよ」って言われることもあって(笑)。ただ突き返されるかもしれないけど、思ったことは全部言おうと思っています。「もっと激しいやつをくれよ!」みたいな。
──(笑)。
岩下 でも、あくびのそういう意見は僕らも大事にしています。自分がダサいと思っていることでも、それがニガミ17才のオリジナリティにつながることってあると思うんですよね。
潜在的なニーズに応えたい
──Kroiはミックスまで自分たちでやってますけど、ニガミ17才はどうですか?
岩下 ミックスは僕らとエンジニアさんでやってるんですけど、初めて聴く人を大事にしているかもしれないです。
──それは大衆性を意識しているとも言えますか?
岩下 うーん、難しいですね……僕らの場合は“信用している人への大衆性”かな。例えば松本人志さんに面白いと思われたいけど、そうでもない人には別に面白いと思われなくてもいいみたいな。
長谷部 (笑)。
岩下 制作はそこのディフェンスラインの上げ下げの作業がある気がします。
内田 そのボーダーラインはわりと自分たちも持っている気がして。あと、よく思っていることで、僕らは潜在的なニーズに応えるバンドになりたいんですよね。お客さんがまだ欲しいと思っていないけど欲しいものを、我々がいかに出せるか。聴いたときに「自分はこれが好きだったんだ!」と思ってもらえるような曲を作っていきたいです。
岩下 僕らもよく話すんですけど、3歩先を行かないと、お客さんには面白いと思ってもらえない。それが5歩先に行っちゃうと「何それ?」みたいな感じになるので、そこは意識しています。
平沢 でも、岩さんはたまに15歩くらい先を行くからね。本当にわかんない!ってなるときがある。
イザキ それでサプライズ疲れしちゃうもんね。
関 (笑)。
平沢 「自分らが驚かされてることに気付かないサプライズはどう?」みたいなことを言うから(笑)。そういうところはコントロールしてるかも。
20時間考えた大喜利の答えって面白くない
岩下 ちなみに、Kroiは歌を最後に乗せてます?
内田 完全に最後ですね。楽器のレコーディングが終わってからも、歌は直します(笑)。
平沢 一緒です(笑)。
岩下 「せっかくやってもらったけど、ボーカル直したいからやっぱ変えて」みたいな。でも、最近は頼むのも悪いと思うから、カットアップしてめちゃくちゃにしてますね。
イザキ あとから変えられないし、弾けないじゃんってことはありますね(笑)。
長谷部 ははは(笑)。
岩下 なんでもありなんですよね。
──それは遊び感覚でやったほうがいいものできるって感覚ですか?
岩下 たぶんそうですね。20時間考えた大喜利の答えって面白くないじゃないですか。
内田 間違いないです。
岩下 楽しんでやるほうがいいものできるんですよね。
予想できない大阪公演
──今後この2組でやってみたいことはありますか?
- Kroi Live Tour 2021-2022 "Dig the Deep" 大阪公演
-
- 2021年12月18日(土) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO <出演者> Kroi / ニガミ17才
平沢 めっちゃおしゃれな集合写真を撮りたい。
内田 最高。
平沢 アベンジャーズみたいな。
岩下 あとからそのTシャツ売ってもらおう。
関 レーベルに言っておきます(笑)。
──ちなみにニガミ17才の皆さんは、最近どんなアーティストと対バンされました?
岩下 Zeppで打首(打首獄門同好会)とやったのと、一番最近だとサンリオピューロランドでライブしました(笑)。
関 それSNSで見ました(笑)。僕らもサンリオとコラボしたことがあって、ポムポムプリンに曲を書いたんですよ。
平沢 すごい!
関 ポムポムプリンが歌って踊る曲を怜央が作ったんですけど、ニガミさんがサンリオピューロランドでライブやられているのを知って、よくわからないところで共通点ができたなと思いました(笑)。
──2組の対バンはエンタテインメント性の高いものになるんじゃないかと期待しています。
関 自分たちも予測できないので、楽しみです。
岩下 お互いの個性がぶつかり合えば、お客さんも楽しんでもらえるでしょうしね。もしくは、サプライズを気にし過すぎてお互い裏行っちゃったりね(笑)。
──狙いすぎて1周回っちゃうっていう。
岩下 お互いアコギだけみたいな(笑)。それはそれでオモロいし、お客さんも何が起こるかわからないって気持ちで来てもらえたら楽しいんじゃないかな。
- ニガミ17才(ニガミジュウナナサイ)
- 岩下優介(Vo / ex. 嘘つきバービー)、平沢あくび(Syn)、イザキタツル(B)からなる“クリエイティブバンド”。2016年に「おしゃれ且つ変態な楽曲の表現。」を活動テーマに掲げて結成し、2017年2月には1stミニアルバム「ニガミ17才a」をリリースした。トリッキーなサウンドとパフォーマンス、強烈なキャラクターが話題となり、神聖かまってちゃんや打首獄門同好会などのツアーにゲストバンドとして出演。2020年11月に3rdミニアルバム「ニガミ17才o」を発表した。最新曲は2021年9月リリースの「HEELS」。