Kroiが1月27日に新作「STRUCTURE DECK」をリリースした。
2018年2月に結成されたKroiは、内田怜央(Vo)、長谷部悠生(G)、関将典(B)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)からなる5人組バンド。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華した音楽性を武器としている。音楽ナタリーではメンバー全員にインタビューを行い、新作の内容について詳しく話を聞いた。
取材・文 / 黒田隆太朗 撮影 / 山本華
6曲全部がリード曲
──「STRUCTURE DECK」のタイトル通り、カードゲームをモチーフにしたジャケットになっている本作ですが、制作はどういうイメージから始まっていきましたか?
関将典(B) どんなEPがいいかチーム全体で話し合ったんですけど、いろんな方向性の個性があって、全部がリード曲になるような作品になればいいなっていうのが始まりでした。
──中でもファンキーでオリエンタルな匂いのある「Page」はめちゃくちゃクールな1曲ですね。
関 これは1年半くらい前からあった曲で、千葉がまだメンバーになる前からライブでやってたんです。その頃はリリックも固まってなくておおよその構成だけがある状態で、ライブはフリースタイルだったんですけど、EPを作るタイミングで、みんなでもう1回アレンジを考えてみようって話になって。
内田怜央(Vo) もともとは今と全然違ってゆったりとした曲だったんですけど、アレンジをし直したことでスマートな曲になりましたね。生まれ変わった「Page」を収録できたこと、そしてMVを作れたことが単純にめちゃめちゃうれしいです。
──スマートなアレンジというのは、何か目指すイメージがあったんですか?
内田 いや、ただ前のアレンジに飽きたっていうだけです(笑)。
関 前のアレンジはアース(Earth, Wind & Fire)をサンプリングしたフレーズを入れたりしていて、BPMも遅かったですし、音感も重ためでしたね。今回はBPMを上げて、フレージングもそれぞれシュッとさせたり、16分の細かい譜割を入れることで、縦が細かい感じの仕上がりになったと思います。
──個人的には1980年代前後のマイケル・ジャクソンのニュアンスを感じました。
千葉大樹(Key) 僕もマイケルっぽいなと思います。後半にストリングスが入っていたりするし、シンセの音も今のおしゃれな使い方じゃなくて、わりと雑な使い方をしていて。ちょうど「スリラー」が出た頃のイメージというか、あの頃のシンセって今より大味で、音を細かく使っていないんですよね。
──シンセの音で言うと、この曲に限らず全体的に少しレトロな音かなと思います。
千葉 確かに。あまりハイファイな使い方をしていないですね。今っぽい使い方をしているところもありますけど、基本的には大雑把というか、昔ながらのシンセの使い方をしていますね。
──それが千葉さんの今の気分?
千葉 というよりも、今っぽい音使いだと、あんまりインパクトがないんですよね。どこで違和感を出そうかって考えると、あんまり作り込まないで、プリセットもそのまま選んでパッと使うのがいいのかなって。シンセは曲をカッコよくするために使われていることが多いと思うんですけど、僕にとってはシンセってにぎやかしなんですよ。なので誰も使わないプリセットばかり突っ込んでいるところはあるかもしれないです。
「変わっちゃった」とか言われる前に
──2曲目の「dart」は闇鍋セッションというか、ヒップホップやロック、ファンクといったいろんな要素が混ぜ込まれた曲になっています。
内田 これはEPを作り始めてから必要だなと思って書いた曲ですね。
──足りないピースだと思ったということですか?
内田 うん。狂暴なところですね。そういう部分も、自分たちの表現として見せたいなって思って。リリックでは狂暴性みたいなものがどの曲にも隠れているとは思うんですけど、それをもろに露わにしている曲をちゃんとこのEPにも入れたいと思いました。
──アイデンティティとして外に示す必要があった?
内田 そうですね。
──殺気立っているし、野性味が出ていますね。
内田 普段はみんなおとなしくて、わりと内に秘めるタイプなんですよ。てか、俺がそうなんですけど(笑)。音楽をやっている意味の1つって、そういうところにあると思うんです。
──普段見せない内面の衝動を表現できるということですか?
内田 そう。大爆発みたいな。俺は音楽の中にそういうものを落とし込んで、日常は朗らかに過ごそうっていうところがあります。
関 「dart」に関してはもう1つあって。すべての色を混ぜると黒になるという意味で付けた「Kroi」というバンド名の通り、いろんなジャンルを取り入れた音を示したかった。俺らはファンクやR&Bだけやるわけじゃないよっていうところを、楽曲として見せていきたいんですよね。
内田 リリースごとに音楽性を変えていくと、「変わっちゃった」とか言われるじゃないですか。でも、「俺らは変わるよ?」っていう。だから混沌としたものを一緒に出しちゃえばいいやって。
──作曲のクレジットは「Kroi」になってますが、どういうふうにできていったんですか。
関 まず怜央がワンコーラス分上げてくれたデモがあったんですけど、後半のソロあたりからはわりと頭おかしい作り方をしていて。ユニゾンするセクションは、俺と悠生と千葉でスタジオに入って、お互いに入れたいフレーズを2拍ずつくらい挙げてって、それをただつなげただけっていう(笑)。
長谷部悠生(G) なのでめちゃくちゃムズいんです(笑)。
内田 俺らは曲を作るときのプロセスもかなり重視していて、それが聴く人に伝わらなくてもいいから、自分たちが面白いと思うことをやろうっていう考え方がすごくあるんです。この曲と「marmalade」は一発録りなんですけど、どちらも楽曲の色がそれぞれ違うものになっているのも面白いですね。
──「marmalade」はラウンジミュージックにもなりそうなくらい、穏やかなインストですね。
関 作品性を考えたとき、インタールードを入れることでちゃんとした作品になると思ったので、ジャムセッションをトラックとして入れたいねって話をして。「marmalade」っていうタイトルも、「ジャム」から来ているんですけど。
──なるほど(笑)。
千葉 だから「Strawberry」でも「Lemon」でもなんでもよかったんです。
関 今後、果物の名前が入った曲が出たら、ジャムで作った曲だと思ってください(笑)。
──(笑)。
関 そんな感じでレコーディング前日にみんなで話し合っただけで、あとは千葉が出してくれたコード進行でジャムって生まれた曲です。
千葉 そのコードも僕の手癖みたいなもので、本当にちゃんと考えたものではないんです。でも、僕が出すコードはあんまり怜央からは出ないタイプのものなので、個人的にはこの曲も気に入ってますね。
関 うん、いいよね。
千葉 意気込んで作ると“抜いたもの”って作れないので、アクセントにはなったかなと思います。
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自分が想定しないところにある美しさ