KREVA|自由にヒップホップに向き合った初ミックステープ

決意表明みたいな「無煙狼煙」

──6曲目に収録されている「人生」についてはいかがでしょうか? 過去のことを歌っていますね。

「パーティーはIZUKO?」でも歌っているけど、昔は毎週パーティをやっていたし、無茶苦茶でしたね。いつも100枚くらいレコード持っていって。自信満々で、ひたすらチャイナブルーを飲むという間違った流行りを体現したり。もし「あの頃に戻れ」と言われても絶対に嫌だ(笑)。岡さんが亡くなったことも、少なからず影響してこういう歌詞になったのかもしれないです。で、次の「Don't Stop Y'all, Rock Rock Y'all」は、せっかくのミックステープだし、テンポや曲調がガラッと変わる感じも入れておきたかったんです。「人生、止まんなよ」みたいな。

KREVA

──「もしかしない」のトラックは、どのように組み立てましたか?

サビのループから思い付いて。ここでもストリーミングシンセを使っています。音がズバッと抜けて声とドラムだけになるという、俺の中でフレッシュな感じをやってみたんだと思います。最初に思い付いたフレーズは英語だったんだけど、なんだか叙情的になりそうで嫌だったんですよ。そうしたら、そのフレーズと韻を踏んでいる日本語の「もしかしない」という言葉が浮かんで。「目が覚めたら全部問題が片付いてないかなー? ……ないよなー」という歌ですね(笑)。

──「無煙狼煙」は6月の武道館公演で初披露して、終演直後にリリースされた曲でした。

できた時点からトラックがヤバくて気に入っていました。リリックをどうしようかと思ったとき、「無煙」という言葉にたどり着いて、そこから「あ、狼煙って狼の煙って書くのか」と気付いたんです。冒頭から聞こえる弦の音もストリーミングシンセです。確か、どこかの民族音楽の音だったかな?

──この曲はラップもリリックも激しいですね。

最近の流行とは逆の、激しくスピットする、昔ながらのハードコアなスタイルです。このトラックには、出だしから無茶苦茶声を張ってラップしている形しかあり得ないと思ったので。ヒップホップのことを歌うつもりもまったくなかったんだけど、結果的に決意表明みたいな歌になりましたね。

自由に作ったので自由に楽しんで

──「それとこれとは話がべつ! feat. 宇多丸, 小林賢太郎」には、宇多丸(RHYMESTER)さん、小林賢太郎さんが参加されています。

「俺の中の2大文系最強頭脳を同時に連れて来たらヤバくない?」という発想で。宇多丸さんには1年半以上前から歌詞を頼んでいたんだけど、全然音沙汰がなくて(笑)。動向が気になり過ぎて、宇多丸さんが出演する「アフター6ジャンクション」を細かくチェックしていたら、これはしょうがない、という感じでした。

──KREVAさんにとって、お二人の存在とは?

宇多丸さんは、俺が今まで会った中で間違いなくズバ抜けて弁が立つ人。そして、最初に俺を見つけてくれた人です。よく考えずに何か言うと「今のどういうこと?」って顔色が変わるから、決して不用意な言葉の矢は打てない(笑)。LITTLEも言ってたけど、共演すると絶対に食われちゃうから、あまり一緒にはやりたくない人でもあります(笑)。賢太郎さんは、もともと俺がファンで、雑誌の「TV Bros.」でKICK THE CAN CREWが連載を持っていた頃、ラーメンズも連載を持っていた縁で知り合いました。自分が唯一、定点観測のように舞台を観続けている人です。直近の賢太郎さんの舞台を観たとき、ほんの小さな考えやひらめきを作品の形まで持っていくのはすごいことだなと感じて。その感動はこの「AFTERMIXTAPE」に影響しています。

──ラストを飾るのは「君の愛 Bring Me To Life」です。

これもストリーミングシンセ上で見付けた「Bring Me To Life」という言葉の意味が気になったことがきっかけでできました。曲の冒頭は、そのときの脳内の再現ですね。A Tribe Called Questみたいにしたかったのかな? ちょっと「The Love Movement」(1998年リリースのアルバム)っぽいですね。

──確かにそうですね。

思えば、あのアルバムも終盤に「The Love」という歌が入っているし。深層心理でそうしたかったのかな。

──本作を完成させて改めて思うことは?

俺も自由に作ったので、皆さんにも自由に楽しんでもらえたらうれしいです。「完全1人ツアー」を観ていなかった人のために改めて言うと、音楽って仮にピアノが弾けなくても、MPCのパットを叩くようなアプローチからでも、自分が思うような“場所”まで行ける。それを体現した作品だと思います。アルバムを作ろうと思っていたらできないけど、ミックステープだったからできた表現もあるし、勉強だと思うとあまり気が乗らないけど、違う視点から入れば作れるというか。誰かにとっての“気付き”になれば、それもうれしいです。

──9月26日には「908 FESTIVAL 2019」を神奈川・横浜アリーナで開催します。最後に、毎年「908 FESTIVAL」を開催するモチベーションについて聞かせてください。

特に大げさなものはなくて、単に楽しくて勉強になるからですね。ほかの人の曲をアレンジすることで勉強させてもらえることもあるし。ときどき人から「あの構成、全部自分で考えてるの? 誰か作家が入ってるんでしょ?」とか言われますけど、マジで全部俺なんで(笑)。そこはちゃんと言っておこうかと。

KREVA

ライブ情報

908 FESTIVAL 2019
  • 2019年9月26日(木)神奈川県 横浜アリーナ <出演者> KREVA / 三浦大知 / s**t kingz / DEAN FUJIOKA / BONNIE PINK
KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」
  • 2019年12月13日(金)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 2019年12月16日(月)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2019年12月17日(火)大阪府 なんばHatch
  • 2019年12月19日(木)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2019年12月23日(月)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
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