音楽ナタリー PowerPush - KREVA
47都道府県ツアーで閉塞感を打破 緊急リリース「Under The Moon」
新しい機材で作ったドラムパターン
──それにしても「Under The Moon」は不思議な曲ですね。展開がユニークでつかみどころがない印象を受けました。
トラックがコロコロ変わるからかな? 最初に作ったときからこの構成だったんですけど。
──どうするとこういう曲が出てくるんですか?
まあ新しい機材ですね。機材っていうか新しいソフトで遊んでるうちに出てきた。普通だったら打たないようなドラムパターンが作れたんで。
──新しい機材から刺激を受けた?
ほら、音楽って“プレイする”って言うじゃないですか。この曲はまさにプレイした、遊んだっていう感じですね。ただ瞬発力で作ってるから説明はしにくいんですよ。ほら、子供が遊んでるのとか見ててもルールわかんないじゃないですか。やりたいことをバンバンやってたらこうなった。だからポップじゃないですよね。
──いわゆるシングルっぽい曲ではないかもしれません。
でもシングルっぽくないやつ、今までもけっこう出してきてますからね。
──確かに(笑)。
「ストロングスタイル」にしても「基準」にしても、それでPV作るの?みたいな曲だし。それをやっていくのが俺だと思うんですよ。こういうラップを待ってる人は少なからずいると思うんで、そこに向けてっていう感じですね。
「暗い夜でも月は出るよね」
──「必ず また Under The Moon」という歌詞に込めた気持ちを聞かせてください。
まずこのご時世に「大丈夫、また必ず日が昇るから」とか言われてもあんまり響かない。それすらも信じられないほどエグい世の中じゃないですか。今そういう例えで何か言いたいんだったら「まあ暗い夜でも月は出るよね」ってぐらいがちょうどいい。そのぐらいの明るさがいいかなと思ったんです。
──いつ頃書いたんですか?
最近ですよ。でも感情としてはもう「OASYS」(2010年9月リリース)からずっと変わらないですね。閉塞感。フラストレーション。
──その閉塞感を突き破りたいという気持ちがあるわけですよね。
そうですね。でもそんな簡単に壊れないなっていうのもわかってるし。「借金2兆円あります。でも大丈夫。また日は昇るから」って言ってもバカじゃないの?って感じじゃないですか。
──はい(笑)。
だから「まあ真っ暗だけど月は出てるよ」「もしかしたら1000円ぐらい拾うかもしれないし」っていう話で。だからって1000円拾うのを狙って生きてくのはバカらしいから、ちゃんと働いてがんばっていこうっていうことですよね。それしか道はないから。
──「ちゃんと働こう」という真っ当なメッセージはかえって新鮮でした。
やっぱりそれは大事だと思うから。あと「UNDER THE MOON」ツアーは平日が多いし、来る人も基本働いてると思うんですよ。なんなら作業着で来る人もいるかもしれない。
──スーツの人もいるでしょうね。
うん、自動車で何か売って回る仕事とかしてる人は会場前に停めて来るかもしれない。
──そうですね。
でもその帰り道にも月は出てるだろうし、そういう人にも響いてほしいっていう気持ちがあるんです。仕事してて、例えば「今日ライブだしもう仕事とか放り出して会場行こう」みたいな気持ちになっても、全部投げ出すほどバカじゃない。わかってる、やらなきゃいけない。だったらそこまではきっちり働こうじゃないか。やるべきことはいろいろあるし、それをやったから楽しめるんだっていう、まあそういう歌です。
近くで直に語りかけたい
──そして2月27日から始まる「UNDER THE MOON」ツアーは47都道府県を回るわけですが、これはどういう経緯で?
最初のリリースの話と同じなんですけど「何かまだやってないことないかな」って考えてたら、47都道府県に行くのがいいんじゃないかってことになって。
──でも大都市の大きな会場だけでライブをやっているほうが効率もいいしお金もかけられますよね。今のKREVAさんが全国を隅々まで回る意味というのは?
いや、でもフェスとかで地方行くたびにまだまだ足りないなって思うんですよ。もっとがんばんなきゃいけないなと。
──そうなんですか?
どこに行ってもアウェイ感があるし。だからもっと応援したいって思ってもらえるような人になるには、みんなの近くに出向いて直に語りかけるのがいいんじゃないかと思って。もし俺がどこに行っても無敵みたいな存在だったらやらないんじゃないかな。
──KREVAさん自身、どこに行っても無敵っていう意識はないんですね。
まったくないですね(笑)。
──会場の規模も小さいところが多いですけど。
そのくらいがちょうどいいと思うんです。初めての土地だし、ライブハウスからやって徐々に大きくしていくつもりです。
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収録曲
- Under The Moon
- これでよければいくらでも
- 47都道府県ラップ
- Under The Moon(Inst.)
- これでよければいくらでも(Inst.)
- 47都道府県ラップ(Inst.)
- ライブDVD / Blu-ray「『908 FESTIVAL』2014.9.07 & 9.08at 日本武道館」 / 2015年3月18日発売 / ポニーキャニオン
- Blu-ray Disc2枚組 12960円 / PCXP-52908
- DVD2枚組 10800円 / PCBP-58908
KREVA(クレバ)
1976年、東京都江戸川区育ち。BY PHAR THE DOPEST、KICK THE CAN CREWでの活動を経て2004年にソロデビュー。2006年2月リリースの2ndアルバム「愛・自分博」はヒップホップソロアーティストとしては初のオリコンアルバム週間ランキング初登場1位を記録。同アルバムのリリースツアー最終日では初の東京・日本武道館公演も開催した。2011年にはヒップホップ音楽劇「最高はひとつじゃない」の音楽監督も担当。2014年6月に10周年記念ベストアルバム「KX」をリリースした。その確かな実力でアンダーグラウンドシーンからのリスペクトを集める一方、久保田利伸、草野マサムネ、布袋寅泰、古内東子、三浦大知、坂本美雨らメジャーアーティストとのコラボも多数。ラッパーとしてのみならずビートメーカー、リミキサー、プロデューサーとしても内外から高い評価を受けている。