寿美菜子の宣言を書いた「Piece of emotion」
──先ほどタイトルトラックとおっしゃっていた「Piece of emotion」には、どういった気持ちが込められているんでしょうか?
「Piece of emotion」は私の“宣言”であり、先ほども言ったように最も自分の色が強い曲ですね。「Ambitious map」では自分を客観的に見ようとしていたんですけど、「Piece of emotion」ではそれは置いといて、今思うことを真っすぐに書きました。例えば今回こうやって作詞をさせてもらって、まだ自分の中から湧き出てくるものがあるかもしれないという気持ちが「終わらない」や「溢れ出す」といったワードに表れていますね。
──「Piece of emotion」は地に足のついた、ミディアムテンポのロックナンバーですね。
シンプルな曲なんですけど、Dメロだけちょっと味付けが変わってるんですよ。そこが個人的には胸キュンポイントなんです。私はダイビングをするんですけど、深く潜ったときに見える砂紋とか地層とか、海底の景色を重ねてDメロの「奥底に沈めた想い 救わなくていいの ? 」という歌詞が生まれて。そこからそのあとの「灰になって飛ばされて」や「声枯れても叫ぼう」といった言葉につながっていきましたね。
──この曲は寿さんのアンセムになりそうですね。
なってほしいですね。皆さんにとっても。たぶん、聴く人によって重ねるものが変わってくるはずなので。
──寿さんの歌詞は基本的に前向きではあるものの、100%ポジティブではなく常になんらかの困難を想定していますよね。それはなぜなんでしょう?
あははは(笑)。たぶん10歳から仕事をしてきて、充足感なり達成感なりを得るためには何かを乗り越えれなければならないというのが染み付いているんじゃないですかね。だから仕事とはちょっと違うんですけど、文化祭とかも大好きなんですよ。準備が大変だった分だけ本番も楽しくなるし、むしろ本番を想像しながら準備するのが楽しくて。
──ハードルがあるから前向きになれる。
そういう、大げさに言えば人生観みたいなところが反映されているのかもしれないですね。
溜まっていたエモーションをすべて出し切れた
──まだお話をお伺いしていない曲が1曲残っているんですが。「feel in my heart」の寿さん、ものすごく弱ってませんか?
そうなんです(笑)。でも安心してください。書いてたときはめっちゃ元気でしたから。「Piece of emotion」で自分の宣言を書き切ったあと、先ほど「LOVE JOY FUN」のところで言ったように、それまでと違うパターンの歌詞も書きたいなと自然と思ったんです。だから「feel in my heart」の主人公は、前を向けないまま終わるという。
──なるほど。
実はラストのサビの歌詞は、もっとポジティブなバージョンも書いていたんです。でもあえてネガティブな歌詞を書いたという自分の選択も尊重したいし、ここまでネガに振れたんだったらそれを生かしたいという思いもあって。
──「枯れそうになる心に 誰か一筋の光を 溶けそうなほどの光を…」という歌詞ですね。
「自分でなんとかしないんかーい!」って、心の中で突っ込みつつ(笑)。だから自分の色は薄めですね。私は誰かに頼らずに自分でどうにかしちゃうことが多いんですけど、「feel in my heart」みたいな歌詞のほうが共感するという人もいると思うんです。どちらがいいとか悪いとかではなく、いろんな感じ方があるから面白いですよね。落ち込んでるときに元気な曲を聴くのもいいけど、とことん落ちたくなるときもありますし。だから夜に聴くと危険かもしれないんですけど(笑)。でも「feel in my heart」もまったく救いがないわけじゃないし、曲自体もみんなで歌えるようになっているので、共感する人はぜひライブで一緒に発散してもらいたいです。
──「feel in my heart」はバラードでありながら、分厚いコーラスも含めてシンガロング向きの楽曲ですね。
今回バラードは「タイムカプセル」(「Candy Color Pop」カップリング曲)という既存曲があったので、それとはちょっと趣向を変えたんです。私自身「ウルトラジャパン2017」をずっとLINE LIVEで見てたような人なんですけど、ああいう場だとバラード調の曲でもお客さんがガンガン歌ったりするじゃないですか。私のバラードは座って静かに聴く感じの曲が多かったので、みんなで手を掲げながら体を揺らして体感できるような曲になったらいいなと思います。
──「emotion」には3年4カ月分の欲が詰まっているとおっしゃっていましたが、やりたいことをやれたアルバムと言えそうですね。
「やれてよかった!」という思いがすごく強いです。一番新しいシングルの「ミリオンリトマス」から数えても1年ぶりのリリースになるので、自分の中で溜まっていたエモーションをすべて出し切れた1枚ですね。と同時に、私にとっては初めてのチャレンジも含めていろんな偶然がうまいこと重なってできた、奇跡的な1枚でもあります。そうやってすべてを出し切ったからこそ、感情がどこかに行ってしまったような寂しさも若干ありつつ、それがみなさんにどうやって届くのかとても楽しみです。
- 寿美菜子「emotion」
- 2018年1月17日発売 / ミュージックレイン
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3600円 / SMCL-524~5 -
通常盤 [CD]
3100円 / SMCL-526
- CD収録曲
-
- Ambitious map
- ミリオンリトマス
- Bye Bye Blue
- LOVE JOY FUN
- アンブレラ・アンブレラ
- I wanted to do
- Candy Color Pop
- Sun Shower
- black hole
- “YES”
- タイムカプセル
- feel in my heart
- Another Wonderland
- Piece of emotion
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- 「Ambitious map」 Music Video
ライブ情報
- 「LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2018“emotion”」
-
- 2018年5月13日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2018年5月20日(日)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年5月26日(土)大阪府 Zepp Namba
- 2018年6月3日(日)東京都 Zepp Tokyo
- 寿美菜子(コトブキミナコ)
- 1991年9月17日、兵庫県生まれの声優 / アーティスト。2009年にテレビアニメ「けいおん!」で主要キャラクターの1人、琴吹紬を演じ注目を集め、2010年に同じミュージックレインに所属する豊崎愛生、高垣彩陽、戸松遥と共にユニット・スフィアを結成した。同年9月にシングル「Shiny+」でソロデビュー。2012年には1stアルバム「My stride」を携え、初のソロツアー「First Live Tour 2012 “Our stride”」を行った。その後もソロ、そしてスフィアとして幅広く音楽活動を行い、2018年1月に作詞に初挑戦した3thアルバム「emotion」をリリース。5月にライブハウスツアー「LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2018“emotion”」をスタートさせる。